バスケットボールというスポーツの大きな魅力は、クロックが“0.00”になるまで何が起こるかわからないというところ。最大得点差が9ということが示すように、40分間の大半が一進一退の攻防となったゲーム2は、最後の最後ですごいシーンを目にすることとなる。

 4Q残り11.2秒に島根スサノオマジックのペリン・ビュフォードがドライブからフィニッシュし、70対70の同点となったところで琉球ゴールデンキングスはタイムアウトをコールする。「どう持たせて、どうシュートを打つか。オフェンス・リバウンドでファウルをするなということも確認しました」と語った桶谷大コーチは、岸本隆一にラストショットを託した。

 アレン・ダーラムとのピック&ロールから岸本は3Pショットを放ったものの、ボールがリングを弾いてしまう。しかし、そのリバウンドをドウェイン・エバンスが奪うと、高いアーチで放たれたショットはブザービーターとなってネットを通過。72対70で琉球が劇的な決着でファイナル進出を決めた瞬間、8309人の観客で埋まった沖縄アリーナは興奮のるつぼと化していた。正にスローガンである“団結の力”によってもたらされた大きな成果と言っていい。

 Bリーグが誕生してから6シーズン、琉球は4度セミファイナルの壁に阻まれ続けてきた。2018−19シーズンがアルバルク東京、昨季が千葉ジェッツ相手にホームでのゲーム3に敗れるという苦い思いを経験しただけに、琉球にとってこの勝利は一つの壁を越えた点で大きな意味があった。

「総合力、沖縄の力だと思いました。僕たちチームだけでなく、沖縄の人たち、キングスのファンの人たち、(地元)メディアも含めて、皆さんのキングスに勝ってほしい、ファイナルに進みたいという気持ちが、最後あのプットバックにつながったかなと思います。本当に総合力で勝ち取ったファイナルの切符かなと思います」とは、試合後の桶谷コーチ。琉球一筋で10年目のキャリアを過ごしている岸本は、心境を次のように話してくれた。

「過去4シーズンここを突破できなくて悔しい思いをした分、今日勝てたことはすごくうれしいです。ただ、同じくらいここを確実に突破しなければいけない責任というか、やらなければいけないことだと思っていたので、その安堵感もあります。最後が最後だったので、いろいろな感情が入り混じった不思議な気持ちかなと思います」

 21点差を逆転したゲーム1とまったく違う試合展開に直面した琉球だが、ゲーム2も最後の最後まで辛抱強く、冷静に戦うことがいかに重要かということをしっかり理解していた。チームのメンバー全員が心身両面でタフであり続けること、何があっても自分たちを信じ、やるべきことをやり通すことができたからこそ、琉球は今季の最高勝率を残せたのである。島根とのセミファイナルでは、“信じる力”のすごさも証明していた。ブザービーターを決めたエバンスは次のような言葉を残している。

「私はシーズンを通してこのチームを信じ続けてきました。我々は選手層の厚いチームであり、数多くの選手がステップアップしてきています。自分がベストゲームじゃなかったとしても、メンバー全員がどんな瞬間でもステップアップできるから、とてもスペシャルなチームだと思えるのです」

 ファイナルの相手は、昨季王者の千葉、天皇杯2連覇を成し遂げた川崎ブレイブサンダースをアウェイで撃破してきた宇都宮ブレックス。琉球同様に心身両面で非常にタフなチームであり、昨季のファイナルで負けた悔しさを晴らしたいという強い思いがある。そんな宇都宮から琉球が初のB1タイトルを獲得するには、島根戦以上に団結の力と信じる力のより強力な融合が欠かせないのではないだろうか…。