「チームとしてブレのない一貫した戦い方ができた結果」。サンロッカーズ渋谷が2度目の天皇杯制覇!

選手層の厚さを武器に天皇杯の頂点に立ったサンロッカーズ渋谷(写真:田村翔/アフロスポーツ)

指揮官の目指すバスケットを3試合120分間遂行

 さいたまスーパーアリーナで行われた天皇杯ファイナルラウンド、2度目の頂点に立ったサンロッカーズ渋谷は決勝までの3試合120分間、ディフェンスで厳しいプレシャーをかけ続け、数多くの選手が起用されるというレギュラーシーズンとまったく変わらない戦い方をしていた。決勝戦が終わった後、伊佐コーチはこのように振り返る。

「自信を持って同じようなバスケットをし、結果的に勝てたのが大きいです。積み上げてきたものがしっかり通用して、チャンピオン(シップ)を獲れたのは僕の自信にもなりました」

 一方、渋谷に競り負けて準優勝に終わった川崎ブレイブサンダースは、篠山竜青とマティアス・カルファニが故障、鎌田裕也と藤井祐眞がインフルエンザで離脱し、攻防両面で普段と違う戦い方を強いられた。それでも、アルバルク東京と宇都宮ブレックスというB1東地区の強豪を撃破。決勝ではニック・ファジーカスとジョーダン・ヒースが40分間フル出場し、シューティングガードが本職の辻直人もポイントガードの役割をこなすなど、試合に出られる選手が限られた中で、川崎は土壇場まで勝敗の行方がわからない試合に持ち込んでいた。

「耐えて耐えて、つないでつないで、最後あと1本で勝てるというところまで粘ってきましたが、今日の試合はこれが限界でした」という川崎の佐藤賢次コーチの言葉が象徴するように、1点を追って迎えた残り1分13秒に長谷川技、47秒にファジーカスが打ったオープンの3Pシュートは、いずれもリングを弾いてしまう。残り2秒に決まれば同点となる辻の3Pは、ライアン・ケリーのタフなディフェンスもあってリングに当たらなかった。

 川崎のタフな戦いぶりは称賛に値する。しかし、渋谷が天皇杯を制することができたのは、自分たちのスタイルで最後まで戦い抜けたことと、出場した12人中11人が得点し、10人が8分以上プレーしていたという選手層の厚さが大きな理由と言っていい。

厳しいディフェンスの遂行に必要だったタイムシェア

 昨季途中で暫定指揮官となり、今季から正式にヘッドコーチとなった伊佐は、バックコートから激しくプレッシャーをかけるディフェンスのできるチームの構築を進めた。それを遂行するために必要な戦力として、オフの間に石井講祐、関野剛平、渡辺竜之佑、田渡修人を補強することに成功し、昨年末に盛實海翔が加入。ベンドラメ礼生、杉浦佑成、山内盛久という昨季から主力となっていたメンバーとうまくミックスさせる選手起用を確立していることは、B1レギュラーシーズンにおける各選手の平均出場時間を見れば一目瞭然だ。

関野    18.0分

ベンドラメ 22.1分

杉浦    16.3分

渡辺    15.6分

広瀬    13.6分

石井    16.2分

山内    17.4分

盛實    19.0分

田渡    18.5分

 天皇杯ファイナルラウンド3試合も、レバンガ北海道との準々決勝で山内が23分50秒、川崎との決勝でベンドラメが23分46秒プレーした以外、ガードとスモールフォワードの選手はいずれも5分以上19分未満の出場時間で収まっている。ハードなディフェンスを継続するために、伊佐コーチはこまめに選手交代を行う。このような出場時間をシェアすることによって、試合終盤に疲労で脚力が著しく落ちる事態を回避できるのである。川崎との決勝では、4Qだけで14回の選手交代を行われていた。伊佐コーチはこう語る。

「毎試合組み合わせを変えているので、そこはいつものように変えながら…。ちょっと波長の合わないときもありましたけど、そのときにはもうちょっといつもなら粘るんですけど、1ポゼッション1ポゼッションで変わってくるトーナメントゲームなので、一旦ダメだったら早めに見切ったというのが今日はありました」

外国籍選手の間にある競争もプラスに働いている

 戦い方の一貫性ということでは、3人の外国籍選手をローテーションで起用している点も忘れてはならない。軸となるのは昨季から加わった元NBA選手のライアン・ケリーで、天皇杯ファイナルラウンドは3試合とも出場。セバスチャン・サイズは準決勝と決勝、チャールズ・ジャクソンは準々決勝のみだった。

「ニック(ファジーカス)も(ジョーダン)ヒースも外が打てるので、ライアンがいたほうが機能するのではないかと。コーチ陣と話をして、そこは3人と一緒だったのライアンだと。セバスチャンも昨日試合をしてバックトゥバック(2日連続)でやるのか、ちょっとタイプの違うCJ(ジャクソン)で行くのかというところで迷いました。幸いセバスチャンが昨日23分で収まったので、彼のアクティブなところを選びました」と言う伊佐コーチは、決勝の朝までだれを起用するかで悩んでいた。

 しかし、サイズを起用する決断は大当たりだった。フィジカルの強さとエナジーを攻防両面でもたらしただけでなく、4Q残り2分15秒にピック&ポップからジャンプシュートを決めるなど、13本中11本のフィールドゴール成功という高確率で22点を記録する。武器であるリバウンドでも11本を奪ったことからも、決勝戦のプレーヤー・オブ・ザ・ゲームは間違いなくサイズ。ケリーのフィールドゴールが12本中1本成功に終わっていたことからすれば、「自分がいいプレーをしなければならなかった。準備はしっかりできていた。いいプレーをして勝利に貢献できたことがすごくうれしい」と振り返ったサイズが、得点面でチームを引っ張ったことは渋谷にとって大きな意味があった。

「日本人選手はもちろんポジション争いがありますけど、うちは外国籍選手、CJ、セバスチャン、ライアンのだれが出るかわからない。そこで切磋琢磨しているところで、北海道戦のCJはものすごくよかった。“気を抜いていたらオレのポジションは取られるぞ”という争いというところで、セバスチャンは最近自分の思うようなプレーができていなかったと思うので、気合が入っていたと思います」と話した広瀬が、残り0.8秒で1本目のフリースローを決めた後、勝利を確信した伊佐コーチはジャクソンのところに駆け寄っている。山内にまだ試合が終わっていないと諭されたが、それはビッグゲームに出られない悔しさを噛み締めているジャクソンの思いを察した指揮官の行動だった。

 

 激しいプレッシャー・ディフェンスを継続するための必要な厚い選手層、外国籍選手が常に競争し合う環境の構築が正しかったことは、天皇杯制覇という結果によって証明された。しかし、東地区3位という現状からすれば、チーム力をさらに高めなければB1のタイトル争いに食い込むことはできない。1月15日の宇都宮ブレックス戦は、サンロッカーズ渋谷が天皇杯制覇で手にした大きな自信と、メンタルの強さが本物かを試されるゲームになるだろう。