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心身両面での準備と自信。これが欠けてしまうと出場時間に恵まれない選手は機会を得ても活躍できない!

青木崇Basketball Writer
故障者続出によって出場時間が増えた橋本晃佑はシーホース三河との2連戦で大活躍(写真:田村翔/アフロスポーツ)

 Bリーグの試合に出場できる登録メンバーは最大で12人。だが、ローテーションに入って一定の出場時間を得られる選手は、8〜10人に限定される。10番目以降の大半はローテーション外になり、出場時間0分という試合が連続することが当たり前になってしまう。実績のある年上選手がいるため、なかなかチャンスに恵まれない場合も多々ある。

 Bリーグに限ったことではなく、どのリーグでも試合に出て活躍しなければプロ選手として生き残れない。チャンスがなかなか巡ってこない状況に直面しても、何とか打開しようと努力し続けることは重要だ。想定外のファウルトラブル、故障者の代役、主力の疲労蓄積を回避するといったことが発生した場合、出場時間の少ない選手にとっては絶好のチャンス。いつでも試合に出られるという心身両面での準備と自信を持っていれば、活躍してチームに貢献できることを次に挙げる3人が最近証明している。

橋本晃佑(宇都宮ブレックス)

 竹内公輔とジェフ・ギブスが故障、シャブリック・ランドルフが家庭の事情で緊急帰国で欠場する中、橋本はシーホース三河戦で先発出場の機会を得た。フィジカルで不利な外国籍選手とのマッチアップで奮闘しただけでなく、1戦目最初のオフェンスで躊躇することなくシュートを打ち、しっかりと決めたことで自信をつかんだ。「最初のシュートが決まったことで、僕も乗ってきたと思うので、決まってよかったです」と語ったように、得意の3Pシュートは2試合で計6本成功。特に2戦目の4Q終盤には、81対81の均衡を破るビッグショットを決め、勝利に大きく貢献した。

菅澤紀行(富山グラウジーズ)

 インサイドの得点源であるジョシュア・スミスの長期離脱が決まった直後の川崎ブレイブサンダース戦、開幕から3試合連続で3分未満のプレーに終わっていた菅澤にチャンスが巡ってきた。「一選手として結果を残さないとプロとしてやっている意味がない」という言葉通り、秋田ノーザンハピネッツでB1を経験しているベテランは、4Q残り1分8秒に躊躇することなくシュートを打ち、勝利に大きく前進する3Pを成功。19分43秒間で10点、3アシストというスタッツ以上に、準備の積み重ねと自信がチームに大きな力をもたらしたと言えるパフォーマンスだった。

青木保憲(川崎ブレイブサンダース)

 10月20日の千葉ジェッツ戦、川崎ブレイブサンダースの3番手ポイントガードである青木は、2Qに3分7秒間プレーしてFG1本ミスしての無得点、1ターンオーバーに終わっていた。しかし、「コートに出るのが一番楽しいですし、少しでもチームのプラスになってやると思っています」と振り返ったように、3Q残り2分40秒から登場すると13秒後にジャンプショットを決め、次のオフェンスではジョーダン・ヒースの3Pシュートをアシスト。残り1分41秒にはドライブからバスケットカウントとなるレイアップを入れ、最大で23点あった点差を1ケタに縮め、逆転勝利への道筋を作った。

自信のなさが消極性につながる

 出場機会の少ない控え選手が、試合に出て早々にシュートを立て続けに打つことは難しいかもしれない。しかし、プロ選手がそんなメンタリティでいいのだろうか? ディフェンスする側からすれば、“こいつは打たない”と感じ取ることができた時点で、得点源に対してのダブルチームといったよりアグレッシブな対応をしやすくなる。チームのことを優先するあまり打てる局面でシュートを打たないのは、正に自信のなさから来る消極性であり、チームにとってマイナスでしかない。

 宮地陽子氏の記事で出てきた伊藤拓磨前アルバルク東京ヘッドコーチの「日本人って、シュートを狙わない」という言葉は、今季序盤のB1を見ているうちに事実だと確信できた。某選手は出場機会なしがすでにあるローテーション外の状況から、とある試合で10分以上の出場機会を得る。ところが、チームプレーに徹するのは理解できるものの、オフェンスでまったく攻める気がない。ボールをもらってもすぐにパスを回す、スクリーンをかけ直す、スペースを作るために動くことの繰り返しで、シュートを1本も打つことがないまま、無得点で試合を終えていた。

出場機会は自分で得るもの

 チーム内に役割があるのは重々承知している。しかし、バスケットボールというゲームは、相手よりも多く得点しなければ勝てない。厳しい競争を生き残ってきたプロだからこそ、自分の存在感をコート上でアピールすることが大事。ミスを恐れるようなプレーなどファンは見たくないし、シュートを決めれば自身がいい気分になれるだけでなく、チームに活気を与えることにもなる。逆に、ハードワークでせっかくのチャンスを得たのに、存在感を示すことでチームに貢献できなければ、再びベンチを温めるだけの日々に戻ってしまう。出場機会とは、「与えられるものではなく、自分で得るもの」なのだ。

 ドラフト指名外の選手からトロント・ラプターズのNBA制覇に大きく貢献するポイントガードへと飛躍したフレッド・バンブリートは、出場機会に恵まれていない選手にとって最高の見本。NBA Japanのインタビュー記事で次のように語っている。

「選手ごとで置かれた状況は違う。僕は『選手としてレベルアップするために、とにかく努力し続けろ』と常に言っている。もし十分な実力があれば、チャンスはやってくるから、期待を持ってしっかり準備し続けることだ。その機会は決して多くないけれど、少なくとも一度はあると思っている。その時が来たら準備万端な状態で臨み、自分が持っているものを最大限出すしかない」

 橋本、菅澤、青木の3人はバンブリートの言葉を体現したと同時に、バスケットボールをやっている子どもたちに対し、努力は報われるというメッセージになったはずだ。また、「日本のバスケットボール競技力の底上げ・競技人口の裾野の拡大を図ります」というBリーグのミッションでも、彼らのような選手が増えることは大きな意味がある。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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