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バスケットボール日本代表:4連敗からの6連勝でチーム全体に確固たる自信が浸透

青木崇Basketball Writer
ワールドカップ出場に一歩前進した日本代表 (C)FIBA.com

 バスケットボールに限ったことではなく、何事もやれるという自信を持って取り組まなければ、望んでいるような結果が出ない。

 今から約9か月前、日本はチャイニーズ・タイペイとフィリピンに競り負け、FIBAワールドカップのアジア地区1次予選4連敗。得点源として日本を牽引しながらも、孤軍奮闘状態でサポートが得られなかった比江島慎が「さすがにこれだけ負けるとちょっとショックもデカいですし、自信もなくなってくるんですけど、まあ切り替えるしかないと思っています」と語ったとき、チームは自信喪失状態だった。

 しかし、6月29日のオーストラリア戦を前にニック・ファジーカスの帰化が認められたことに加え、ゴンザガ大の中心選手へと成長した八村塁も合流。2人の大活躍で手にしたオーストラリア戦の大金星は、日本が自信を取り戻すきっかけになった。キャプテンの篠山竜青はこう語る。「やはり、負けが続いている時に特効薬は何もないし、コツコツ積み上げていくだけという思考になりますけど、一番は勝つことだなと同時に感じていて、そういう意味でオーストラリアに勝てたというのは、日本にとって大きな出来事だったのかなと思います」

 アウェイでのチャイニーズ・タイペイ戦における40点差の大勝は、取り戻した自信をより高めていくことへのプロローグ。カザフスタンとのアウェイ戦に勝った後に迎えた9月17日、イランとのホームゲームでは日本人2人目のNBA選手となった渡邊雄太が攻防両面で強烈な存在感を示した。竹内譲次が「一番の要因としては素晴らしい選手の加入が間違いなくあると思う」と語ったように、ファジーカス、八村、渡邊が日本の自信を高める要因になったのはまちがいない。と同時に、4連敗を経験してきた選手たちも、勝ち星を積み重ねる中で何らかの貢献をすることで、よりアグレッシブにプレーするシーンが増えていった。

 11月30日のカタール戦に続き、12月3日のカザフスタン戦も前半で苦戦を強いられたものの、2月のチャイニーズ・タイペイ戦で見せたようなメンタル面のミスはなく、厳しいディフェンスを継続できていた。オフェンスに目を向ければ、ファジーカスにボールを集めながらも、竹内ら他の選手たちもゴールをアタックするというシーンが何度も見られたことは、4連敗のころとまったく違う自信の表れ。比江島の「みんなが自信を持ってプレーしているのが伝わってきますし、全員で守って、全員でリバウンドを取って、全員で走るという意識が本当に強くなってきたなと思っています」というコメントは、勝つことによって得た自信とチームとしての成長を示すものだった。

アグレッシブにアタックする姿勢を見せ続けた馬場 (C)FIBA.com
アグレッシブにアタックする姿勢を見せ続けた馬場 (C)FIBA.com

 自信のレベルが上がった選手のNo.1としてあげられるのが、地元富山ですばらしいパフォーマンスを見せた馬場雄大。カタール戦は後半で日本が試合を支配した要因となるプレーを攻防両面で発揮し、カザフスタン戦でも55対55の局面でドライブから豪快なワンハンドダンクを叩き込むなど、試合の流れを変えるといった“違いをもたらす男”へと変貌した。「この2試合では雄太さんや塁がいない中で、ウィング陣の得点というのがカギになるとラマスコーチから言われていて、積極的にアタックしていけましたし、その中でも見えるところも出てきましたというところで、今まではパスだけのところもあったんですけど、そういった部分で、オフェンスもディフェンスも収穫はありましたし、この感覚を忘れずに次のウィンドウにつなげていきたいなと思います」と振り返った馬場は、代表選手としての自信と手応えを得たと言っていい。

ペイント内で着実にフィニッシュして41点を稼いだファジーカス (C)FIBA.com
ペイント内で着実にフィニッシュして41点を稼いだファジーカス (C)FIBA.com

 もちろん、日本代表の自信の象徴はファジーカスである。3Q終盤に張本天傑が3Pを決めるまで、カザフスタン戦の日本はアウトサイドのジャンプシュートが1本も入っていなかった。しかし、ファジーカスはサイズで優位に立てるインサイドで主導権を握り、フットワークとフェイクを駆使してのシュートが29本中17本成功、フリースローも7本すべて成功させての41点。「自分の役割はチームを牽引することであり、今日はそれを実践しようとした。それがすごく重要だと感じているし、状況が少し悪くなった時に私を信頼してボールを供給してくれた」と語ったファジーカスが、勝利の原動力となったことに疑いの余地はない。

「今、日本代表はいい変化の中にいる。ワールドカップ出場に向けて、この流れを維持したい」というカザフスタン戦後のコメントは、フリオ・ラマスコーチが確固たる自信を持っているチームの現状に手応えを感じている証と言っていい。2次予選最後のウィンドウ6は、イランとカタール相手のアウェイ戦という非常に厳しい環境の中での戦いになる。それでも、メンタル面でのミスを極力減らし、タフなディフェンスを40分間継続できれば、今のチームなら連勝も十分可能。4連敗からの6連勝で手にした大きな自信を過信にせず、危機感を持ってより高いレベルに上げることが、日本のワールドカップ出場権獲得を実現するためのカギになるだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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