Yahoo!ニュース

Bリーグの超人ギブス! ディフェンスの万能さはB1屈指

青木崇Basketball Writer
長い腕はギブスにとって身長差をカバーできる大きな武器(写真:田村翔/アフロスポーツ)

 Bリーグのベストディフェンダー賞は、一昨季が遠藤祐亮(栃木ブレックス)、昨季が橋本竜馬(シーホース三河→琉球ゴールデンキングス)といずれも日本人のガードが選ばれている。彼らが素晴らしいディフェンダーであることと、所属チームの好成績に大きく貢献していることはまちがいない。しかし、3年目を迎えた今季は、外国籍や帰化選手のディフェンスにもっと目を向けてもいいという気がしている。

 それでは、今季のベストディフェンダー賞に相応しい選手はだれなのか? 元NBA選手の数も増えているB1だが、筆者はジェフ・ギブスの名前をあげたい。トヨタ(現アルバルク東京)時代からサイズの不利をカバーする術を持った選手という印象を持っていたが、栃木で3年目を迎えた今季は平均2.44スティール(第10節終了時点)が2位にランクされるなど、多才と表現したくなるようなディフェンスでチームの15勝2敗という好スタートに貢献している。

 特に10月12日の富山グラウジーズ戦で見せたプレーはその象徴と言えるもの。レオ・ライオンズとの1対1で右足は後ろに伸びた状態になり、前に出た左足も完全に膝が曲がる低い姿勢を強いられながらも、左腕を伸ばしてクロスオーバードリブルをスティール。すぐに体勢を立て直してボールを確保してから速攻でダンクしたのは、38歳の大ベテランと思えない超人的なプレーと言っていいだろう(動画では2:00〜のシーン)。

「タイラー・ストーンが千葉にいた時にもやったんだ(一昨季のクォーターファイナル第2戦、4点リードで迎えた4Q残り2分19秒に田臥のレイアップへつながったスティール)。自分の前でボールをクロスオーバーさせれば、自分はスティールすることができる。多くのガードが実感していないかもしれないし、彼らは簡単に抜けると思っているかもしれないけど、自分は長い腕を使って対応し、ボールを弾き出すこともできる」

 こう語るギブスの身長は188cm。フロントラインの選手としては小さいが、両手を広げたウイングスパンが213cmという腕の長さとフィジカルの強さを武器に、攻防両面でいい仕事をしている。タフなディフェンスを続けられる理由を探ってみると、高校生の時にアメリカン・フットボールをやっていた経験が生きているという。

「タフでフィジカルなディフェンスは、フットボールのメンタリティから来ている。簡単にポストアップで押されないように、身体を当てることを心がけているんだ。多くの選手に比べたら小さいかもしれないが、フィジカルの部分で自分のほうが強いから、姿勢を低くしながらペイントの外側に押し出すようにしている。(高校で)最初の3年間はタイトエンドをやっていたけど、最後の1年はボールがもらえるポジション、キックオフリターナー、ワイドレシーバー、タイトエンド、スロットレシーバーなどだ。細かなステップや横へのスライドで足を動かすこと、実は高校時代にテニスも1年間やっていたのも、フットワークに役立っている。いい選手になれなかったから1年間しかやらなかったけどね…」

 ライオンズからスティールしてのダンクは、ギブスのフットワークのよさと長い腕、低い姿勢を維持できる脚の強さがあるから生まれたプレー。たとえピック&ロールのディフェンスでスウィッチを強いられても、ガードが軽率なクロスオーバードリブルをすればスティールできるし、ドライブで抜こうと仕掛けても背後からブロックショットできる。また、ポストアップした選手に対するパスを弾くなど、ディフレクションで相手のオフェンスのリズムを狂わせることも非常に多い。さらに、相手のプレーを逆手にとってのフェイクから、ちょっとしたミスを誘うこともできるのも強みだ。

 ディフレクション同様、スタッツに出ないディフェンスでの貢献度が高いもう一つの理由は、オフェンスからディフェンスに切り替える際の対応。マッチアップしている相手がリバウンドを奪った直後、「ビッグマンに対して少しでも身体を寄せることで、速攻につながるガードへのアウトレットパスができなくなる。それは速攻をさせたくないというゲーム感覚からくるものだ。いつからか覚えていないけど、ずっとやっているね。オフェンス・リバウンドが取れなかったら、速攻ができないようにボールを止めるようにしている」と語るように、ギブスはボールへのプレッシャーをかけることで速攻の機会を防ぎ、チームメイトがディフェンスに戻る時間を作り出す。こういったことの積み重ねによって、栃木は今季、速攻からの失点を5以下に抑えた試合がすでに7回という結果につながっている。

 コート上でのハードワークを献身的に継続できるギブスは、ディフェンス重視の安齋竜三コーチからすればすごく頼りにできる選手だ。一昨季のB1チャピオンシップでアキレス腱断裂の大ケガに見舞われながらも、わずか7か月でゲームに復帰。「昨年のアキレス腱を除けば、大きなケガに見舞われたかったことは本当に恵まれていると思う。まだ高いレベルでプレーできることはとてもハッピーだ」と語るギブスは、38歳になった今もチームへの貢献度が非常に高い。今季はまだ4分の1を終えたにすぎないが、このレベルのパフォーマンスを今後も維持するようであれば、Bリーグはギブスをベストディフェンダー賞の候補として認知すべきだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

青木崇の最近の記事