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【NCAAファイナルフォー】180の国や地域でテレビ放映されるビッグイベントで日本は蚊帳の外?

青木崇Basketball Writer
ビラノバ大はここ3年で2度目のNCAAトーナメント制覇(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 渡邊雄太がジョージ・ワシントン大で4年間奮闘し、八村塁もゴンザガ大の主力として活躍したことで、日本におけるNCAAのバスケットボールに対する興味は上がっている。全米チャンピオンを決めるNCAAトーナメントはマーチマッドネスとして全米のスポーツファンから注目され、準決勝と決勝のファイナルフォーは以前、NHKのBS1やJスポーツでも中継されていた。

 今年のNCAAトーナメントは第1シードのチームが第16シードのチームに初めて敗れるなど、波乱が多かった。それでも、1回戦から全米No.1と言われたオフェンス力を武器に強さを発揮し、ミシガン大との決勝も17点差で勝利したビラノバ大が、ここ3年で2度目の優勝でマーチマッドネスは終わりを告げた。

 テキサス州サンアントニオのアラモドームで行われたファイナルフォーには約7万人の観客で埋まり、世界180の国と地域に中継されたビッグイベントだが、日本でのテレビ中継は今年もなし。ESPN Playerという映像配信サイトから「March Madness Pass」を29ドル99セントで購入することが、日本でNCAAトーナメントを見られる唯一の方法。ゴンザガ大対オハイオ州大戦が始まる直前には、取材現場でよく一緒になるテレビ局の方から「試合はどこで見られますか?」という問い合わせもあった。

「NCAAトーナメントのテレビ放映はないのか?」

 このような内容のツイートを何度か見かけたが、日本でのテレビ放映はあまり期待していない。その理由は、放映権があまりにも高いからだ。アメリカで放映権を持つCBSとターナーは、NCAAと2010年に14年間で108億ドル(1ドル=105円換算で約1兆1340億円)を支払う契約を締結し、さらに2032年までの8年間で88億ドル(約9240億円)で延長することに合意している。今年を含めた今後5年間、この2局が払う放映権は以下の通りだ。

2018年:8億5700万ドル(約899億8500万円)

2019年:8億7900万ドル(約922億9500万円)

2020年:9億0200万ドル(約947億1000万円)

2021年:9億0000万ドル(約945億円)

2022年:9億2000万ドル(約966億円)

 テレビ局の関係者によれば、日本でファイナルフォーを中継するための放映権だけでも数億円は軽く超えるという。この金額を払ってでも中継し、ビジネスとして成り立つのか? と問われれば、今の日本では“NO”という答えになっても驚かない。

ゴンザガ大の大黒柱として飛躍のシーズンを過ごすことが期待される八村 (C)Takashi Aoki
ゴンザガ大の大黒柱として飛躍のシーズンを過ごすことが期待される八村 (C)Takashi Aoki

 しかし、来季の放映実現にプラス材料もある。4月8日にゴンザガ大からプレス・リリースが出され、八村は6月のNBAドラフトにアーリー・エントリーせず、3年生のシーズンもプレーすることが発表されたことだ。来季の八村は先発のフォワードとして今季よりも活躍の機会が増えるだけでなく、大黒柱の一人として成長するのを見られる絶好のチャンス。同級生のキリアン・ティリーもチームに残ることが決まり、チームとしてもトップ10にランクされてもおかしくないだけに、これを放っていくのは勿体ない。レギュラーシーズンの試合だけでなく、カンファレンス・トーナメントやNCAAトーナメントを放映するテレビ局があれば、多くのバスケットボール・ファンがNCAAのおもしろさを実感できるからだ。

 たとえビジネスとして成り立たないことを理由に、テレビ局が放映できないと判断しても、インターネットのストリーミングで見る方法はある。ESPN Playerのカレッジ・パスを年間で契約すれば164ドル99セント(約1万7324円)、1か月ごと更新のマンスリーパスで32ドル99セント(約3464円)を支払えば、いろいろなチームの試合をライブやアーカイブで観戦可能。先に紹介したマーチマッドネスパスだけでも、NCAAトーナメントの全試合が見られるのだ。カンファレンスのレギュラーシーズンであれば、無料で観戦できるものもある。八村のゴンザガ大が所属するウエストコースト・カンファレンスは、一部を除いてTHEW.TVで試合をチェックできる。

 大きな画面のテレビで試合を見られたら…と思う人は今も大多数だろう。しかし、スマートフォンやタブレットを使うことによって、外出先でも観戦できるストリーミングの利便性はここ数年で劇的に上がっていることも見逃せない。八村が大活躍したゴンザガ大対オハイオ州大戦など、筆者は外出の合間にiPhoneで試合を観戦していた。

 全米だけでなく、世界的に注目を集めているNCAAファイナルフォーが日本でテレビ中継されないことは、蚊帳の外に追いやられているという印象を持ちたくなるもの。しかし、Bリーグと同じようにお金を払えば、規約の変更がない限り来季もライブストリーミングでNCAAファイナルフォーを観戦できる。「どうやったらファイナルフォーを見られるのか?」という質問が出てしまうのは、やはり情報不足によるところが大きい。来年のマーチマッドネスがやってくる頃、NCAAトーナメントを見られる方法を何らかの形でお知らせできればと思っている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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