Yahoo!ニュース

FIBAワールドカップ予選4連敗の日本。得点源として奮闘している比江島には助けが必要!

青木崇Basketball Writer
比江島の得点力はアジアでもトップクラス Photo by FIBA.com

 試合後の取材を受けている時、フィリピンのゲイブ・ノーウッドが「Great job.」と一声かけて、握手をした。声をかけたその相手は、得点源として奮闘した比江島慎である。

 マニラのモール・オブ・アジア・アリーナに乗り込んでのフィリピン戦に挑んだ日本は、ワールドカップ予選の過去3試合と大きく違い、20-4という最高のスタートを切り、主導権を握りかけた。しかし、フィリピンがよりフィジカルなディフェンス対応をし始めると、日本はあっさりとリズムを失い、1Q中盤から2Q中盤にかけて29-4という猛攻でリードを奪われる。過去3戦に比べるとゴールにアタックする姿勢が何度も見られたこともあり、土壇場で2点差に詰め寄るも、追いつくことはできずに84対89で惜敗。1次予選はついに4連敗となった。

「さすがにこれだけ負けるとちょっとショックもデカいですし、自信もなくなってくるんですけど、まあ切り替えるしかないと思っています。オフェンスに関しては、自分の役割ができたと思うんですけど、ディフェンスでもうちょいできたかなと。相手の8番(カルビン・アブエバ)とかに簡単にペネトレーションされましたし、体をしっかり張って、フィジカルにディフェンスすればよかったかなと思っています」

 試合をこう振り返った比江島は、チーム最多の29分2秒間プレーし、3P3本を含む11本中8本のシュート成功という高確率で23点を奪った。流れが悪い時に打開ができることと、オープンショットの決定力ということでは、今の代表だと彼が文句なしのエース。それは、予選4試合を通じて14点以上を奪い、フィリピンとの2試合は平均21.5点をマークしたことでも明らかだ。

 しかし、比江島をコンスタントにサポートできるNo.2の選手が、今の日本代表にはいない。帰化選手のアイラ・ブラウンは、193cmのパワーフォワードというサイズが不利な中でも全試合2ケタ得点、リバウンドでもすべて8本以上と奮闘している。しかし、フィリピン戦で10本中2本しか決められないなど、4試合のフリースロー成功率が35%ではNo.2と呼べない。辻直人は22日のチャイニーズ・タイペイ戦で3P8本と大当たりしたものの、25日のフィリピン戦が11分26秒で8点と、一貫した出場時間を得られていないのが現状。田中大貴はディフェンスでの奮闘が見られるものの、チャイニーズ・タイペイ戦で6本中1本のFG成功に終わるなど、国際試合になるとジャンプシュートに安定感がない。

「僕が出ていない時間帯でも、ディフェンスでしっかり耐えてはいたので、自分が出たらオフェンスでしっかり打開しようとは思っていました。みんなを信頼しています」と語った比江島だが、この4試合他の選手が得点面でなかなか続かない状況を打開するには何が必要? と質問すると、正直な心境を口にする。

「みんなも全然やれる実力を持っていますし、僕はもうある程度経験してきたつもりなので、自信を持って本当にプレーしています。経験と自信を持ってくれれば、全然やれないことはないと思います。もっともっとペリメター陣が、しっかり得点を取る意識を持ってくれればいいかなとは思うんですけど…」

 大学時代、そしてBリーグでもライバル視されている田中は、アルバルク東京と代表におけるプレーの違いにまだまだアジャストしきれていないと感じている。とはいえ、自分がレベルアップしなければならないことを認識し、比江島に続く得点源にならなければいけないという意欲は決して失っていない。

「彼も40分間ずっと一人でオフェンスを組み立ててというのはきついと思うので、やはり休んでいる間とかは“だれがやるの?”ってなったら、自分がやらなければいけないと思います。そこで点数が取れなかったりといったところに関しては、素直に力がないということを認めて、早くそこで活躍できるようにならないといけない。チャンスが多くあるわけではないと思うけど、ネガティブなことはあまり言いたくない。まだ終わったわけじゃないですし、だれもが厳しい状況だとわかっています。“どうするの?”ってなったら、そこでしっかりもう1回立ち上がってやるしかないと思います。本当に踏ん張りどころだと思って戦うしかない」

 故障した富樫勇樹に代わって先発ポイントガードを務めた篠山竜青に対しても、比江島をなかなかサポートできない現状について質問すると、次のような答えが返ってきた。

「自分に対してのフラストレーションはあります。ただ、それは別に他の選手に対してというのはないです。代表に選ばれている以上、僕も得点できない選手ではないと自分で思っているけど、それをしっかり代表の試合の中でまだまだアピールしきれていないです。比江島がこれだけアジアの中でかなりスコアラーとして安定してきているので、だからこそ自分がもっと手助けできればなという気持は常にありますね」

 6月下旬から7月上旬にかけて行われるウィンドウ3では、NCAAで活躍中の渡邊雄太と八村塁がメンバー入りするといった希望的観測もある。しかし、彼らを召集できるか否かは現時点ではっきりわからない以上、比江島がオフェンスで孤軍奮闘する状態は早急に改善しなければならない。フリオ・ラマスコーチはフィリピン戦を「オフェンスはよかったけど、ディフェンスがよくなかった」と振り返ったものの、オープンショットの精度といった決定力不足がこの1次予選で露呈。比江島頼りの状況から脱却するための時間は約4か月残っているが、Bリーグの過密日程を考慮すれば、実質数週間しかない。

 たとえ渡邊と八村がメンバー入りできたとしても、比江島に続くガードのスコアラーは絶対に必要だ。この問題の答えを出すことは、ラマスコーチにとって非常に重要な仕事。アルゼンチンの名将と呼ばれる男の真価は、ウィンドウ3で問われることになる。

 

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

青木崇の最近の記事