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三遠が補強した新戦力は4シーズン連続平均10点以上の実績を持つ本物の元NBA

青木崇Basketball Writer
11月23日の富山戦でデビューしたチルドレス(写真提供/三遠ネオフェニックス)

日本を代表するNBAライターであり、筆者もすごくリスペクトしている宮地陽子氏が、ロッタリーピックでドラフトされた選手がBリーグの某チームと契約間近とツイートした。これを見たとき、一体だれなんだろうと頭をよぎらせた。正直なところ、センターかパワーフォワードの選手を想定していたが、ジョシュ・チルドレスが三遠ネオフェニックスに入りするとは、まったく予想していなかった。

スタンフォード大でパック10(現パック12)の年間最優秀選手、オールアメリカン・ファーストチーム選出という大活躍をした後の2004年、チルドレスはアトランタ・ホークスからドラフト1巡目6位で指名される。身体能力の高いスイングマンとして1年目から活躍し、80試合(44試合先発)で平均10.1点、6リバウンドの数字を残すと、オールルーキー・セカンドチームに選ばれた。ホークスに在籍した4年間の大半をバックアップで過ごしたといえ、どのシーズンも10点以上のアベレージを残し、06-07の13点、6.2リバウンド、2.3アシストがいずれも自己最高だった。

2008年夏に契約交渉が折り合わず、ユーロリーグ制覇の実績もあるギリシャの強豪オリンピアコスで2年プレイし、その後フェニックス・サンズと5年契約を結ぶも、ホークス時代のような活躍はできなかった。それでも、通算391試合出場で平均9.1点、4.7リバウンドというNBAのスタッツからすれば、日本のリーグでプレイした外国人選手たちの中でトップクラスの実績と言っていい。

チームに合流して2週間弱、日本のことについては友人のドリュー・ヴァイニー(富山グラウジーズ)とローレンス・ヒル(京都ハンナリーズ)が唯一の情報源だったというチルドレス。先週末の横浜ビー・コルセアーズと対戦した際には、チームとBリーグへの順応に時間が必要という点と、攻防両面で勝利の原動力になれるという両面が出る結果となった。11月26日の試合では横浜のテンポで進んだことに加え、個人で局面を打開しようとしても裏目に出て、5本のターンオーバーを犯した。「我々にとって今シーズン最悪の試合と、(藤田弘輝)コーチが言っていた。オフェンスもディフェンスもきちんと遂行できなかったし、自分自身も苦戦を強いられた。明日勝つために、立ち直らなければならない」と語ったように、翌日のチルドレスは19点、10リバウンド、3アシスト、2スティールと攻防両面で勝利に貢献。大学時代からの持ち味であるドライブで得点機会をクリエイトする一方で、アウトサイドのシュートが着実に決まるようだと、20分前後と限られた出場時間でも20点以上が期待できることを示した。

ディフェンスに目を向けると、「私はスリーマン(スモールフォワード)だから、大きくて強い相手とのマッチアップにも慣れなければ」と話したように、身長と体重で上回るパワーフォワードへの対応が多くなる。とはいえ、今週末はフェニックス・サンズとユタ・ジャズに在籍していたガード、ディアンテ・ギャレットのいるアルバルク東京戦がある。スモールフォワードのチルドレスとコンボガードのギャレットが実際にマッチアップするかは、両チームのヘッドコーチが作るゲームプラン次第になるが、実現すれば絶対に目が離せない。チルドレスが身長と腕の長さを生かしながらのディフェンスで、平均20点が3位タイ、ここ7試合中6試合で22点以上と好調なギャレットをスローダウンできるか否かが、三遠が東京を倒すために欠かせない要素だ。

「個人的にはもっと得点し、よりいいディフェンスをし、多くのリバウンドを奪い、チームメイトにチャンスをクリエイトすること。勝利のために貢献できればいいんだ」

この言葉どおりの仕事をチルドレスができるか否かという点で、アルバルク戦はいい指標になるだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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