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『競輪グランプリ2023』はこうなる!「中国ライン」の動向と「単騎・眞杉匠」の位置取りを考察─。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
昨年のグランプリ決勝、9番車・脇本雄太が制した(写真:日刊スポーツ/アフロ)

サプライズなき並び

競輪場に足を運びスタンドに立つと常に「風景が変わったな」と思ってしまう。

F2、F1のみならずG3記念開催であっても観客席がガラーンとしている。予想屋が次々と姿を消し、食べ物を売る店もかなり減った。若者の姿は少なく、穴場(車券売り窓口)も多くが閉じられスタンドの熱気はなくなっている。

いまはファンの多くがインターネットで車券を購入しているからだろう。競輪自体の人気が低下したわけではない、観戦方法の移行。それが、レース場独特の高揚感を消してしまった。時代の流れと言われればそれまでだが、「本場(現場)主義」の私にとっては寂しい限りだ。

だけど、この日だけは違う。

12月30日、『競輪グランプリ』─。今年は”聖地”立川競輪場での開催。

第4コーナー付近にあったビッグスタンドはすでに取り壊され、競輪場自体がこぢんまりした感は拭えないが、それでも満員の観衆が詰めかけ熱気に包まれる。

今年の最強選手を一発勝負で決めるグランプリの優勝賞金額は1億3700万円(副賞を含む)。ファンも熱き思いを抱きレースを見守る。

19日、都内ホテルで開かれた『前夜祭』に出場9選手が集結した。その場で車番が発表されている。

1.古性優作(大阪・100期/『全日本選抜』『高松宮記念杯』『寛仁親王牌』優勝、3年連続3度目)

2.佐藤慎太郎(福島・78期/賞金ランキング4位、5年連続9度目)

3.松浦悠士(広島・98期/賞金ランキング5位、5年連続5度目)

4.眞杉匠(栃木・113期/『オールスター』『競輪祭』優勝)

5.深谷知広(静岡・96期/賞金ランキング6位、6年ぶり6度目)

6.山口拳矢(岐阜・117期/『日本選手権』優勝、初出場)

7.清水裕友(山口・105期/賞金ランキング7位、2年ぶり5度目)

8.新山響平(青森・107期/賞金ランキング9位、2年ぶり2度目)

9.脇本雄太(福井・94期/賞金ランキング8位2年連続5度目)

そして、決まった並びは次の通りだ。

脇本─古性<近畿ライン>

新山─佐藤<東北ライン>

清水─松浦<中国ライン>

眞杉<単騎>

深谷<単騎>

山口<単騎>

脇本と古性の並びが逆になる、深谷と山口がラインを組むといったサプライズはなく、オーソドックスなものとなったが、静けさがシビアさを醸し出す。

『KEIRINグランプリ2023』に出場する9選手。右から古性優作、佐藤慎太郎、松浦悠士、眞杉匠、深谷知広、山口拳矢、清水裕友、新山響平、脇本雄太(写真:日刊スポーツ/アフロ)
『KEIRINグランプリ2023』に出場する9選手。右から古性優作、佐藤慎太郎、松浦悠士、眞杉匠、深谷知広、山口拳矢、清水裕友、新山響平、脇本雄太(写真:日刊スポーツ/アフロ)

清水の松浦に対する想い

さて予想だが、各ラインが短くなったことで展開は目まぐるしくなりそうだ。

3つのラインの中で注目したいのは、清水─松浦の中国ライン。セオリー通りなら新山、もしくは脇本の先行だが果たしてそうだろうか?

ここは新山、脇本が駆ける前に、清水がタイミングよくかますと私は見ている。

清水と松浦が『競輪グランプリ』でラインを組むのは今回が4度目だが、これまでに芳しい結果を残せていない。

<2019年>清水5着、松浦7着。

<2020年>清水6着、松浦8着。

<2021年>松浦5着、清水8着。

思い切った動きができず、見せ場も作れないまま惨敗を続けてきた。

(このままではいけない)との思いが二人には強くあるだろう。そろそろ中国地区は存在感をアピールする必要がある。何しろ中国地区からグランプリ王者は、いまだ誕生していないのだ。今年は清水が積極的に動いて魅せるはず─。

伏線もある。

今年11月、地元の「G3防府記念(今年は防府競輪場が改修工事のため玉野競輪場で開催)」で清水は6連覇を果たした。記念競輪6連覇は史上初の快挙である。この時の決勝レースには松浦も勝ち上がっていたが、彼は格上であるにもかかわらず地元勢を気遣いラインの4番手を固めて走り清水をアシストした。

さらに昨年、清水が5連覇を果たした際には準決勝で前をまわり引っ張った。番手から捲った清水は1着、松浦は4着に沈んでいる。

ならば清水は、松浦のためにも積極的なレースをするだろう。グランプリは一発勝負とはいえ、そこに至る過程を考慮せねばならない。競輪は「点」ではなく「線」、最終回なき人情ドラマなのだ。

東北4車で並んだ昨年とは新山の気持ちは異なる、脇本も連覇を意識しよう。両者に早駆けはなく、清水も動きやすい。単騎3車のうち2車が中国ラインに続くなら脇本、新山が後方から襲いかかってきたとしても、それに合わせて松浦が踏み込める。

清水‐松浦がかませば、その後ろにいるのは眞杉だろう。単騎3車の中で、もっとも俊敏に動け位置取りに厳しいからだ。加えて直近のG1「競輪祭」を制すなど勢いがあり勝負勘にも長けている。

立川の長い直線を、足を溜めて目イチで踏む松浦と眞杉のマッチレースと見た。

買い目は次の通り。

<2車単>

3-4、4-3

<3連単>

3-4-1、3-4-2、3-4-5、3-4-6

4-3-1、4-3-2、4-3-5、4-3-6

3連複で3-4から全通り(7点)で勝負するのも面白い。

30日の東京の予報は晴れ、最高気温14度。競輪日和だ。立川に足を運び熱狂を肌で感じたい。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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