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「朝倉海がアーチュレッタに勝つ!」3年ぶり王座奪回を予想する根拠──大晦日決戦『RIZIN.45』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
大晦日に対戦するフアン・アーチュレッタ(左)と朝倉海(写真:RIZIN FF )

「どんな内容でも勝ちたい」

「心の底から悔しかったです。兄貴が負けるのは、ほかの誰が負けるよりも悔しい。いままで一緒に走り続けお互いに支え合ってきたので、兄貴が上手くいかない時は僕が頑張る番。気合いが入っています!」

『FIGHT CLUB(11月19日、東京都内/場所非公開)』OFG(オープンフィンガーグローブ)キックボクシングマッチで朝倉未来(JTT)がYA-MAN(TARGET SHIBUYA)にKOで負けたことについて、弟の朝倉海(JTT)はそう話した。

12月20日、所属ジムで練習をメデイアに公開した直後のことである。

兄の敗北はショックだったろうが、朝倉海に落ち込んでいる時間はない。目前に迫った『RIZIN.45』で、バンタム級王座奪回を目指し王者フアン・アーチュレッタ(米国)に挑むのだから。すでに気持ちは切り替えられている。

今年を振り返り、彼は言った。

「(5月に)1年半ぶりの復帰戦をしっかり勝てて、実力的にも伸びていると実感できた。このまま王者になれると思ったら、また怪我をしてしまった。人生なかなか上手くいかないなって。

でもそんな中で、いろいろなコーチやトレーニングパートナーと出会え、周囲の支えもあり、さらに成長し強くなることができました。怪我も治って体調的にも問題ない。そんなタイミングでの大晦日のタイトル戦。いい流れができている。勝てると思います」

アーチュレッタ対策も万全のようだ。

「コーチたちと一緒にアーチュレッタ対策をし、それに沿った練習をずっとやってきた。彼の動きに対して、すべて対応できる」

そして続ける。

「スピード、パワー、ストライキングで自分が優っている。KOを狙うが、結果として判定になるかもしれない。僕の中で『これで倒せる』というパターンが何個かあり、当たれば相手は倒れるし、それを防がれたら判定になるかもしれない。

魅せることにも拘りたいが、僕自身が大晦日に勝てていないので、泥臭い試合でも僅差の判定でもいいから何が何でも勝ち切りたい」

明るい表情でメディアからの質問に答える朝倉海。コンデション調整は順調のようだ(写真:RIZIN FF)
明るい表情でメディアからの質問に答える朝倉海。コンデション調整は順調のようだ(写真:RIZIN FF)

今年の大晦日こそ…

さて展開予想だが、この一戦、両者の戦略は明白だ。

朝倉はスタンド状態を保ち、打撃を繰り出してKOにつなげたい。対してアーチュレッタは、組みついて倒し削り合いに持ち込もうとする。自らの思惑通りに試合を作れた方が勝者となろう。「互角の勝負」と見る向きが多い。

だが私は、9-1で「朝倉海優位」と予想する。

その根拠は「アーチュレッタの打撃に対する反応がよくない」と感じるからだ。

本来、朝倉とアーチュレッタは7月30日『超RIZIN.2』でバンタム級王座をかけて対峙するはずだったが、朝倉が怪我(左膝内側側副靱帯損傷)で欠場。そのため代役として扇久保博正(パラエストラ松戸)が急遽リングに上がりアーチュレッタと闘った。結果、アーチュレッタが3-0の判定で勝利を収め腰にベルトを巻いたのである。

ただ、あの試合のアーチュレッタの動きは決してよくなかった。打撃に対する反応は以前よりも鈍くなっているように見えた。自らの持ち味を活かし総力戦で勝ちはしたが、絶対的な強さを感じることはできなかった。

試合後の共同インタビューで「もっと準備期間があったらアーチュレッタに勝てたと思うか?」と問われた扇久保は、キッパリとこう答えている。

「勝てたと思います」

おそらく闘う中で「アーチュレッタの打撃に対する反応は、思っていたほどよくない」と感じたのだろう。

序盤からプレッシャーをかけ前へ出る朝倉と、隙を見出し組みつこうとするアーチュレッタ。そんな攻防が続く中で朝倉のミドルキック、パンチが意外なほどアッサリとヒットするのではないか。

朝倉の打撃は一発で相手に多大なダメージを与える威力を有している。左ミドルキック、もしくはヒザ蹴りを糸口に朝倉がKOで勝ち、3年ぶりにバンタム級王座を奪回すると私は見ている。

過去4年、朝倉海は大晦日のリングで負け続けている。2019年にマネル・ケイプ(    アンゴラ)、2020年には堀口恭司(ATT)にともにリベンジを許す形で敗れた。2021年は「バンタム級トーナメント決勝」でも扇久保に判定負けを喫している。今年こそ、美酒に酔いながら除夜の鐘を聞くことができるか─。

<『RIZIN.45』主要対戦カード>

上記カードを含め全17試合が行われる(提供:RIZIN FF)
上記カードを含め全17試合が行われる(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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