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なぜ朝倉未来はYA-MANと闘うのか?何を求め、何処へ向かうのか?11・19『FIGHT CLUB』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
YA-MANとOFGマッチで対戦する朝倉未来(写真:日刊スポーツ/アフロ)

熱が感じられぬコメント

「トライフォース赤坂にはもう行かないと思う。朝倉未来が負けたまま、そのまま終わるようなダサい男だとは思っていなかった。そんな人から教わることはもうない」

10月初旬にYA-MAN(TARGET SHIBUYA)が突然、X(旧Twitter)にそう綴った。

何の脈絡もなく他人を挑発するタイプではないYA-MANが、そこまで言うのだから余程のことがあったのか。当然、朝倉未来(トライフォース赤坂/現JAPAN TOP TEAM)が仕切る『BREAKING DOWN』からも撤退するのだろうと思いきや、そうではないらしい。

(これは何かあるのかな)

そう感じていたら、今月に入ってから『FIGHT CLUB(11月19日、東京都内/場所非公開)』の記者会見が開かれ、キックボクシングOFG(オープンフィンガーグローブ)マッチで朝倉とYA-MANが対戦すると発表された。

YA-MANのX発信は、ここに向けての伏線だったのである。

さて、なぜ朝倉はYA-MANと闘うのか?

会見で彼は言った。

「格闘技を15年やってきて、キックボクシングの試合はやったことがない。YA‐MANは(キックボクサーとして)強いじゃないですか。そのYA‐MANと俺がオープンフィンガー立ち技ルールで試合したらシンプルに面白いから、経験としてやっておきたいと思った。興味本位ですね」

RIZINでの試合の前とは異なり、熱が感じられぬコメントだった。

OFGマッチ無敗で「RISE OFG -65キロ級王者」であるYA-MAN。今年5月にはMMAデビューも果たしている(写真:日刊スポーツ/アフロ)
OFGマッチ無敗で「RISE OFG -65キロ級王者」であるYA-MAN。今年5月にはMMAデビューも果たしている(写真:日刊スポーツ/アフロ)

エンタメ枠への移行なのか

朝倉は7月30日、さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.2』でヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)に完敗を喫した。

このままでは終われないはずだ。ならば、ケラモフと一昨年に敗れているクレベル・コイケ(ブラジル/ボンサイ柔術)にリベンジするためにも、朝倉は大晦日『RIZIN.45』で再起戦…と思っていたがそうではなかった。

先日、アゼルバイジャン開催の『RIZIN LANDMARK 7』で鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)がケラモフにKO勝利しフェザー級の新チャンピオンとなった。9月にはクレベルを金原正徳(リバーサルジム立川ALPHA)が破っている。

混沌としているRIZINフェザー級戦線は、ここからが面白い。

なのに朝倉には、このヒリヒリするような刺激の強い闘いに加わるつもりはないのだろうか。彼が、これまでの皇治(TEAM ONE)のようなエンタメ枠への移行を考えているなら、それは寂しい限りだ。

YA-MAN戦後の朝倉のアクションを待ちたい。

最後に、試合予想─。

意外なことに、朝倉が勝つと見る向きが多いようだ。

MMA(総合格闘技)で闘うのであれば、YA-MANは朝倉の敵ではない、実力差があり過ぎる。しかし今回はOFGキックボクシングルールでの対峙である。RISE OFGマッチ-65キロ級王者であるYA-MANが、キックボクシング初ファイトの朝倉に負けるわけにはいかないだろう。優位なのはYA-MANだ。

しかし、3分×3ラウンドで行われるこの試合、両者が9分間を闘い抜けば判定はなく引き分けとなる設定らしい。

ならば、ドロー決着濃厚か─。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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