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井上尚弥の年内「2階級4団体世界王座統一」に現実味──来春に亀田和毅戦の可能性も!

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
7・25有明で世界スーパーバンタム級王座に挑む井上尚弥(写真:ヤノモリ/アフロ)

フルトンに勝てば年末にタパレス戦!?

スーパーバンタム級転向2戦目で井上尚弥(大橋/30歳)が「2階級4団体世界王座統一」の快挙を遂げる可能性が高まっている。

7月25日、東京・有明アリーナで井上は、WBC&WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(米国/28歳)に挑戦するが、ここで勝利すれば年内にスーパーバンタム級「4団体世界王座統一戦」が組まれる流れができつつあるのだ。

WBA&IBF世界同級王座を保持しているのは、フィリピンのマーロン・タパレス(31歳)。今年4月、米国サンアントニオでムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン/28歳)を1-2の僅差判定で破り新王者となった彼は言う。

「私は逃げも隠れもしない。”モンスター”と呼ばれている無敗のイノウエと闘いたい。もちろんフルトンでもいい。どちらが相手でも闘う準備はできている」

また7月25日、有明アリーナでの試合をリングサイドから視察することも決めており、タパレスは井上と闘うことに前向きだ。

フルトンを破って2本のベルトを奪うことが前提ではあるが、「2階級4団体世界王座統一」への道は、すでに拓かれている。年末にも実現か─。

バンタム級での「4団体世界王座統一」には、1つ目のベルト獲得から数えて4年7カ月の時間を要した。井上が強すぎるあまりにマッチメイクが難航、そこにコロナ禍が重なった。それに比すれば、スーパーバンタム級での闘いはすんなりと進む気配が漂う。2人の王者が、すでに2団体を統一していることも幸いしている。

7月25日、有明アリーナで井上尚弥の挑戦を受けるWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者、スティーブン・フルトン(REX/アフロ)
7月25日、有明アリーナで井上尚弥の挑戦を受けるWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者、スティーブン・フルトン(REX/アフロ)

日本人同士の「4団体世界王座統一戦」

まずは7・25有明でのフルトン戦。

大方の予想は「井上優位」だが、海外では「フルトンが勝つ」と予想している識者も少なからずいる。

その根拠は、次のようなものだ。

「井上とフルトンではフレーム(骨格)が違う。試合で井上はスーパーバンタム級の壁にぶち当たるのではないか。バンタム級の闘いではなかった圧力を井上は相手から感じることになる」

「井上は自分の距離を見出し、それを保てた時はパワフルだ。でもフルトンのテクニックは秀逸で試合運びも巧い。井上に距離とペースを摑ませぬままラウンドを進めフルトンが判定で勝つのではないか」

果たして、どうだろう。

フルトンのプロ戦績は21戦全勝(8KO)。アマチュアでも75勝15敗と豊富なキャリアを誇るオーソドックスなテクニシャン。強打のイメージは薄いが、スタミナはあり粘り強く闘うタイプである。

だが、総合力で井上に勝っているとは私には思えない。

WBO王座を獲得した一昨年1月のアンジェロ・レオ(米国)戦、IBF王座を勝ち取ったブランドン・フィゲロア(米国)戦、2団体王座初防衛を果たしたダニエル・ローマン(米国)戦…直近の3試合を何度も繰り返し見たが、井上のスピードとパワーに対抗できる選手ではない。

2019年5月、英国グラスゴーで2ラウンドKO勝ちを収めたエマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦と同じような展開に井上が持ち込むのではないかと予想している。

最後に、井上をつけ狙う元世界王者の日本人選手にも触れておこう。

現在、WBA世界スーパーバンタム級1位で40勝(22KO)3敗の戦績を誇る亀田和毅(TMK GYM)についてだ。

「井上尚弥選手と試合をしたい。その資格はあると思う。勝つ自信もある」

そう話していた彼は今年2月にルイス・カスティージョ(メキシコ)を5ラウンドTKOで破り4連勝。次にWBA&IBFスーパーバンタム級王者タパレスへの挑戦を目論んだが、マッチメイクは思うように進まなかった。

WBAはタパレスと「井上vs.フルトン」の勝者の対峙を優先すると表明。トップランカーの亀田に対しては、前王者アフマダリエフとの対戦を求めた。この試合の勝者に王座挑戦の権利が与えられるとの意も含まれている。

亀田は、いばらの道を征き勝ち抜くしかない。

井上が7月にフルトン、12月にタパレスを破りスーパーバンタム級でも「4団体世界王座統一」を果たしたならば、すぐにフェザー級転向とはならないだろう。幾度か防衛戦を行うと見る。その最初の相手が亀田となる可能性も。

実現するなら来春か─。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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