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朝倉未来を挑発し続ける平本蓮は、元RIZINフェザー級王者・斎藤裕に勝てるのか?

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
昨年大晦日、ボクシングマッチで梅野源治を倒した平本蓮(写真:RIZIN FF)

「5つのサプライズ」

昨年の大晦日、さいたまスーパーアリーナで開催された『RIZIN.40』には、2つの見どころがあった。

ひとつは『RIZIN vs.Bellator(ベラトール)5対5全面対抗戦』だ。

結果は、RIZIN勢が0勝5敗で完敗を喫したが、すべての試合が白熱のフルラウンド攻防。RIZIN勢は負けはしたが、結果ほどに実力差があるとは感じられなかった。

中堅戦の堀口恭司(ATT/Bellator)vs.扇久保博正(パラエストラ松戸/RIZIN)以外4試合の内容は僅差。次鋒戦・フアン・アーチュレッタ(米国/Bellator)vs.キム・スーチョル(韓国/RIZIN)、大将戦・AJ・マッキー(米国/Bellator)vs.ホベルト・サトシ・ソウザ(ボンサイ柔術/RIZIN)は勝敗が逆でも不思議はないように思えた。

2つ目は、RIZIN榊原信行CEOが事前に予告していた「5つのサプライズ」。

それは、次のようなものだった。

1.当日まで伏せられていた平本蓮(ルーファスポーツ)の対戦相手「X」は梅野源治(PHOENIX)。

2.平本蓮vs.斎藤裕(パラエストラ小岩)決定(今春)。

3.朝倉未来(トライフォース赤坂)vs.牛久絢太郎(K-Clann)決定(今春)。

4.元K-1ファイター芦澤竜誠(DRAGON FISH)が参戦し皇冶(TEAM ONE )と対戦。

5.プロボクシング6階級制覇世界王者、マニー・パッキャオ(フィリピン)が夏以降に参戦。

この中で、私が特に興味を抱いたのは、<2.平本蓮vs.斎藤裕>と<3.朝倉未来vs.牛久絢太郎>である。

斎藤の「実績」と平本の「自信」

大晦日『RIZIN.40』の第6試合(ほぼボクシングルール)で平本は梅野を強打でぶっ倒した(公式記録は勝敗なし)。その直後、平本の次の対戦相手が、初代RIZINフェザー級王者・斎藤裕に決まったことが発表された。

リングに上がった斎藤は言った。

「24歳の若者に闘いを通して伝えられることがあると思う。平本選手のことは認めているので全力でつぶしに行きます!」

続いてマイクを持った平本は、朝倉未来を挑発。

「会場に朝倉未来が来ていると思うんですけど、今日もバファリン(鎮痛剤)を忘れずに飲んでください」

これは、朝倉が大晦日『RIZIN.40』不出場を表明した際、その理由の一つとして「メイウェザー戦以降、頭痛が続いている」話したことに対する揶揄だ。

そして試合後のインタビュースペースで、さらに追撃する。

「2ラウンド(終了時)ピッタリで倒したのは、朝倉未来vs.(フロイド・)メイウェザーのオマージュ。君もこんな感じだったぞって。気づいたかな」

そう言って笑った後、斎藤戦についても話した。

「斎藤選手との話が来たので『やります!』と即答しました。

元チャンピオンの斎藤選手は、(打撃、組み、寝技の)トータルで試合を作る能力が高く相手の弱みを見つけてしっかりと突いてくる。勝ちに持っていくペースを摑むのも巧い印象。でも、絶対に勝つ。負けるイメージが湧いてこない」

『RIZIN.40』第6試合終了後のリング上で、平本蓮(右)と斎藤裕の対戦決定が発表された(写真:RIZIN FF)
『RIZIN.40』第6試合終了後のリング上で、平本蓮(右)と斎藤裕の対戦決定が発表された(写真:RIZIN FF)

試合後、インタビュースペースでも朝倉未来を挑発する平本蓮。「(RIZINフェザー級)チャンピオンになって(朝倉に)『挑戦させてください』と言わせる」とも口にした(写真:藤村ノゾミ)
試合後、インタビュースペースでも朝倉未来を挑発する平本蓮。「(RIZINフェザー級)チャンピオンになって(朝倉に)『挑戦させてください』と言わせる」とも口にした(写真:藤村ノゾミ)

面白い試合になると感じる。

フェイバリットは斎藤だろう。総合力で長ける上、MMA(総合格闘技)でのキャリアが違う。アマチュアから始め修斗のチャンピオンになり、RIZINのリングでも無敗の進撃を続けていた朝倉未来にストップもかけた。MMA戦績2勝2敗の平本とは比較のしようがない。

それでも「面白い試合になる」と思うのは、平本が急成長しているからだ。

昨年11月・名古屋での弥益ドミネーター聡志(teamSOS)戦で勝利し新たな闘い方を確立した。おそらく彼は斎藤戦もサウスポーに構え、同じスタイルで挑むだろう。グラウンドでの攻防を拒否し、得意のパンチを活かせるスタンドでの闘いに固執する。

このやり方を貫けたなら、打撃の破壊力で上回る平本が斎藤を倒す可能性もあるように思える。

「牛くん、過去最強の状態でやろう」

朝倉と牛久も、大晦日のリングに上がりマイクを手にした。

「帰ってきます。楽しみにしてください。牛くん、お互い過去最強の状態でやろう」(朝倉)

「僕も2年前くらいから楽しみにしていました。未来選手と試合ができることを光栄に思います。66キロ、フェザー級で最高の試合をしましょう」(牛久)

リング上で健闘を誓い合った朝倉未来(右)と牛久絢太郎(写真:RIZIN FF)
リング上で健闘を誓い合った朝倉未来(右)と牛久絢太郎(写真:RIZIN FF)

この対決は、どちらが優位でもなく互角だ。

知名度では朝倉が上回るが、実力に差はない。朝倉が一度敗れている斎藤に牛久は2度勝っており、ともにクレベルには敗れている。

おそらく両者が戦略に神経を使う闘いとなろう。

朝倉は、相手のウィークポイントを見抜くのが得意。だが牛久にも参謀・横田一則(K-Clann代表)がいる。いずれの策がはまるかが勝敗を分けるように思う。

そして、この2試合の勝者同士が、RIZINフェザー級王座への挑戦権をかけて闘うことになるのではないか。ここで待望のカード、朝倉vs.平本が実現するかもしれない。なお、平本vs.斎藤、朝倉vs.牛久は別々にイベントで行われ、日時と場所は今月中に開かれる記者会見で発表される模様。

2023年、RIZINフェザー級戦線はさらに熱さを増す。その先に「打倒!ベラトール」を見据えて─。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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