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石井慧はK-1で連勝できるのか──12・4大阪で激突するRUIの「秘策」とは?

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
9・20K-1横浜アリーナ大会で愛鷹亮にハイキックを見舞う石井慧(写真:K-1)

「ヒザ蹴りで倒す」(RUI)

「K-1は小さい頃から観ていた特別な舞台。そこで勝てて嬉しいしホッとしています。12月4日には、地元大阪の大会で試合をしたい。相手は誰でもいいです」

9月20日の横浜アリーナ大会でK-1に初参戦し、愛鷹亮(K-1ジム相模原大野KREST)に延長の末、判定勝利を収めた後、石井慧はそう話した。このアピールが受け入れられ、石井は、12・4エディオンアリーナ大阪『K-1 WORLD GP2021 JAPAN』でキックボクシング2戦目に挑むことになった。

(提供:K-1)
(提供:K-1)

対戦相手は、RUI(K-1ジム福岡チームbeginning)。

193センチの長身ファイターで手足も長く懐が深いタイプのファイターだ。スーパー・ウェルター級でキャリアを積み、2017年12月にK-1初参戦して以降は重量級戦線で闘っている。2019年には初代クルーザー級トーナメントに出場し決勝に進出、同じ九州出身の先輩K-Jee(K-1ジム福岡チームBeginning)に2ラウンドKOで敗れるも果敢な闘いぶりは、将来性を感じさせた。

戦績21勝(18KO)11敗、30歳。キックボクシングのキャリアは大きく優るが、石井より4歳年下。ちなみに石井が勝利した愛鷹には、2019年2月に3ラウンドKO勝ちを収めている。

10月28日、都内ホテルで開かれた対戦発表記者会見で必勝を誓ったRUI(写真:K-1)
10月28日、都内ホテルで開かれた対戦発表記者会見で必勝を誓ったRUI(写真:K-1)

公開練習で得意のヒザ蹴りを披露するRUI。作戦通りに石井に見舞うことができるのか?(写真:K-1)
公開練習で得意のヒザ蹴りを披露するRUI。作戦通りに石井に見舞うことができるのか?(写真:K-1)

そんなRUIが先日、公開練習を行った。直後のインタビューで彼は、こう話している。

「(石井選手には)色物感があって、自分が試合することはないだろうと思っていました。だからオファーが来た時には意外な感じでしたね。

愛鷹戦は観ました。何が何でも勝つというか、勝利を手繰り寄せますよね。(気持ちの強さは)柔道でもそうでしたし、人間性でしょう。それに肉体的にもめちゃめちゃ強い、『フィジカルモンスター』ですよ」

石井の強さを認める一方で、RUIは自信も漲らせる。

「今年5月からボクシングの練習を始めています。充実したトレーニングができて、カラダも仕上がってきました。いい状態のRUIが見せられると思います。(現在3連敗中だが)きっかけを掴む試合にしたい」

作戦もすでに立てている。

「フィジカルで勝とうとは思っていません。スピードですか? それも闘いの中で有効に用いたいですね。粘り強く闘って、削って削って最後はヒザ蹴りで倒したい」

京太郎と闘うまでは

RUIは、カラダも闘い方も愛鷹とはタイプが大きく異なる。

その点は、石井もRUIの過去の試合映像を観て研究していることだろう。加えて、クロアチアの地でハードなトレーニングを自らに課し、十分なスタミナを養い打撃力も向上させているはずだ。

石井は言う。

「自分がやってきた打撃の練習が、どこまでのものなのかをK-1の舞台で試してみたい。いくら練習で良くても、それが実戦でできるかどうかが大切ですから。そればかりは試合をしないとわからないんですよ」

そして、こう続ける。

「K-1に出ても、キックボクサーに転向するつもりはありません。打撃に特化した闘いを経験することが、MMA(総合格闘技)での完成形を目指す上で必要だからです。勝ち続けて、京太郎(第2代K-1ヘビー級王者、プロボクシング元東洋太平洋同級王者)選手と闘うことが目標。そこまでできたらいいかなと思います」

9・20K-1横浜アリーナ大会で愛鷹亮に勝利した直後、クロアチア国旗を身に纏いマイクを手にし喜びと今後の目標を口にした石井慧(写真:K-1)
9・20K-1横浜アリーナ大会で愛鷹亮に勝利した直後、クロアチア国旗を身に纏いマイクを手にし喜びと今後の目標を口にした石井慧(写真:K-1)

浪速の舞台での大一番。

果たして勝つのはどっちか?

予想は難しい。

石井がフィジカルの強さとスタミナで押し切るのか、それともキックボクシングのキャリアで上回るRUIが必倒のヒザ蹴りをボディ、あるいは顎に突き刺すのか。序盤に、いずれがペースを握るかが展開を大きく左右するのではないか。

ネームバリューでは、北京五輪・柔道金メダリストの石井慧が明らかに格上。大方は、「石井がキックボクシングでどこまでやれるのか」をテーマに、この一戦を注視する。

そんな中で、RUIがKOで勝ったならば、スランプを脱すると同時に一気に知名度を上げる。逆に石井が勝利すれば念願の「京太郎戦」に向けて前進、来年もK-1のリングで闘うことになろう。

この大会のメインは、スーパー・ウェルター級(王者/木村”フィリップ“ミノルvs.挑戦者/和島大海)とフェザー級(王者/椿原龍矢vs.挑戦者/軍司泰斗)のWタイトルマッチ。木村”フィリップ”ミノルにとっては、これがK-1ラストマッチになる。掉尾を飾るに相応しい凄絶なファイトで魅せてくれることだろう。

そして一方に、K-1に新たな風を吹かせている石井慧の存在。ヘビー級サバイバルマッチは見逃せない。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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