イスラーム過激派の食卓(「イスラーム国」のラマダーン)

「普通の人々」のラマダーンの料理。本文中の料理と比べてほしい。(写真:ロイター/アフロ)

 西暦で2021年4月13日ごろに始まった今期の断食月(ラマダーン)、世界中のイスラーム教徒(ムスリム)にとっては、中国発の新型コロナウイルスの蔓延や経済危機下の制約を受けつつ暮らす月となっている。ラマダーンをどのように過ごすかは、紛争の前線にいるイスラーム過激派の構成員たちにとっても重要な関心事であり、今期も「イスラーム国」がラマダーンを過ごす戦闘員たちの画像の発信を始めた。本稿で題材とするのは、2021年5月3日付で出回った「イスラーム国 シャーム州ホムス」名義の画像群であるが、実は昨期のラマダーンのほぼ同じ時期にも同様な名義で同じ趣旨の画像群が発信されている。つまり、一連の画像群を比較・分析することにより、「イスラーム国 シャーム州ホムス」を名乗る集団の活動状況がどのように変化しているのかを把握することができる。シリアの砂漠地帯においては、依然として「イスラーム国」の残党が活動するどころか、「イスラーム国」が「復活」しつつあるなどとの説もある。「イスラーム国」による戦果発表や、何か「大人の事情」で「イスラーム国」に活動し続けて欲しい人たちの著述と比べ、「イスラーム国」の者たちがどのようなものをどのように食べているのかを示す画像群は、同派の実態の一側面を何よりも正直に示すだろう。

 注意すべき点は、これらの画像群はラマダーン月に供されるごちそうを盛大に調理・飲食している様を誇るプロパガンダの一端であり、前線の戦闘員たちが厳しい環境で粗食に堪えながらもジハードに邁進しているというお説教やお涙ちょうだいではないということだ。要するに、本稿で紹介する調理や食事の場面は、「イスラーム国 シャーム州ホムス」が現在用意できる精いっぱいのごちそうだということだ。写真1、写真2は、それぞれひき肉などを餡にした揚げ物らしき料理と、お菓子らしきものの仕込みの模様に見える。

写真1。2021年5月2日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」
写真1。2021年5月2日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」

写真2。2021年5月2日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」
写真2。2021年5月2日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」

 気になるのは、写真2の片隅に携帯型のガスコンロと、簡易式のコンロかかまどのようなものが映り込んでいる点だ。これに対し、2020年5月に出回った「イスラーム国 シャーム州ホムス」の調理風景である、別稿のトップの写真、および写真1では、焚火で直に調理する模様が映し出されている。この点を比べれば、今期の方がより進んだ機材を用いて調理しているようにも見えるが、その一方で今期は昨期に見られた肉の串焼きの姿を見かけないので、食材はより貧弱になったともいえる。また、写真3は昨期にひき肉を包んだパンのようなものを仕込む場面であるが、画像中に現れる「イスラーム国」の者たちの人数も、彼らが調理する料理の量も、今期に発信された画像よりもずいぶん多く見える。

写真3。2020年5月13日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」
写真3。2020年5月13日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」

となると、「イスラーム国 シャーム州ホムス」は、昨期に比べて今期はごちそうを準備するために割くことができる人員の数、或いはごちそうを提供する対象となる人数が減少しているのかもしれない。本稿で検討した画像群を見る限り、シリアの砂漠地帯で「イスラーム国」が「復活」しているにしても、構成員の数がどんどん増えている、というわけではなさそうだ。

 そして、肝心の食事風景が写真4であるが、こちらは昨期の食事風景である別稿の写真2とほとんど代わり映えのしない風景に見える。いずれも炊き込みご飯風(でも具材はほとんど見えない!)の料理を、副菜や野菜・果物なしで食べているようだ。これが仮にラマダーン中の日没後の食事(イフタール)だとすると、スープや煮物、焼き物、サラダ類がついていてほしい所であり、品数の不足は否定できない。

写真4。2021年5月2日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」
写真4。2021年5月2日付「イスラーム国 シャーム州ホムス」

 結局のところ、「イスラーム国 シャーム州ホムス」は昨期も今期も「なんだかろくなもん食ってない」感じであり、しかもその程度のものを供する対象となる人数も減っている可能性もある、という状態だと思われる。今後、「イスラーム国」の別の地域の別の集団による食事の画像や、「イスラーム国」以外の諸派の食事風景の画像などが発信される可能性が高いが、それらは「最近のイスラーム過激派って、どうなの?」との問いへの答えをある意味他の何よりも如実に示してくれることだろう。