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マツダNDロードスターのオーナーに朗報! 手軽に加速力と燃費を向上させるアイテムが登場

高根英幸自動車ジャーナリスト
マツダNDロードスターに追加されたインテークチャンバー。筆者撮影

マツダの新型NDロードスターの洗練ぶりは素晴らしい。ステアリングは軽くなっただけでなくシャープで中立がより明確になって、運転がさらに楽しくなった(新型の試乗記はこちら)。

けれども、従来のNDロードスターから買い換えるほど違うクルマか? というのも事実。これまでのNDロードスターだって、十分に魅力的なクルマだ。

人間の感覚として相対評価(乗り比べする)では明確に違いを体感できるが、日にちを空けての試乗や、1つの個体だけを乗り続けていれば、すぐに身体が馴染んで、速さや快適性などの違いはそれほど気にならなくなる。

先ごろ大幅改良されたマツダ・ロードスター。筆者撮影
先ごろ大幅改良されたマツダ・ロードスター。筆者撮影

したがってステアリングのフィールも新型の方が素晴らしいけれど、従来のNDロードスターだって乗っていて不満はないハズなのだ(新型NDロードスターの試乗記はこちら)。

エンジンも新型は日本国内のハイオクガソリンに最適な制御とすることで最高出力を4ps(3kW)向上させているが、買い換えるほど違うかと言えばそれほどではない。走行距離が多く、そろそろエンジンをオーバーホールした方がいいか考えているなら買い替えもアリだが、現在所有しているNDロードスターに愛着を感じているオーナーも多いことだろう。

また手頃になってきたNDロードスターの中古車を手に入れようとしている人にとっても、新型の良さは気になる情報だろう。

新型購入の費用でカスタムを楽しむという手も

しかし新型を購入する費用があれば、従来型タイヤや足回りのセッティングを煮詰めて、自分好みの乗り味に仕立てることもできる。

エンジンに関しては新型と同等以上の性能を追求することだって不可能ではないのだ。例えばコンピュータチューン。純正ECUの一部領域を書き換えるだけで15ps出力アップを謳うチューニングも存在する。

そこまでの効果はないにせよ、新型NDと同等以上の動力性能や燃費を引き出すチューニングもある。それが、ここで紹介するインテークセルキットだ。

これはNDロードスターに関してはノウハウ豊富なガレージベリー(と言っても本業はエアロパーツ製造だ)が開発したもので、第一作目となるGR86/BRZおよびトヨタ86/BRZ(つまり先代)用のインテークセルキットが効果絶大と好評を受けて、新たに設定したのである。

その仕組みはエアクリーナーとスロットルボディの間にチャンバー(膨張室)を設け、加速時にはチャンバー内の空気も吸い込むことでエアクリーナーを通過する抵抗を軽減してポンピングロスを減らし、充填効率を高めることによりトルクアップを実現するというもの。

製品にするまでには何度もテストを繰り返して、最適な容量を追求している。これまでの実績から、排気量によってある程度効果の高い容量が分かってきたそうだ。それでも実際にいくつも試作品を製作して、パワーチェックなどを実施して開発されたのである。

ガレージベリーのインテークセルキット。価格は3万5200円。筆者撮影
ガレージベリーのインテークセルキット。価格は3万5200円。筆者撮影

このインテークセルキットで重要なのは、チャンバーの容積と共に、エアクリーナーボックス内に組み込む整流板だ。これにより流速を高め、チャンバーへの空気の充填も早める。

86/BRZはノーマルでもインテークチャンバーが組み込まれており、それを大容量のものに交換することで装着が可能だが、マツダ・ロードスターの場合はノーマルでは装着されていないので、工夫が必要だ。

吸気系のチューニングにはエアクリーナーとスロットルボディを連結するインテークパイプをサクションパイプに交換するという手もあるが、ガレージベリーはノーマルのインテークパイプにあるブローバイガスの取り込み口を利用して、インテークチャンバーを増設するというユニークな方法で実現している。

ちなみにブローバイガスとは燃焼室からの吹き抜けや、エンジンオイルの気化によりエンジン内部に発生するガスのことで、再び燃焼室に取り込むために吸気系にバルブやホースで導いている。NDロードスターでは丁度スロットルボディの直前にあるので、インテークチャンバーの接続に利用するにもってこいなのだ。

取り外したブローバイガスのホースは、長くしてエアクリーナーへと導くことで対策している。

エンジンルームに装着されたインテークセル。違和感はまったくない。筆者撮影
エンジンルームに装着されたインテークセル。違和感はまったくない。筆者撮影

製品となったインテークセルはパワーチェックした結果、装着しただけで5psのパワーアップを実現している。しかも、このインテークセルの効果はピークパワーの増大よりも、日常的な走行時の加速性能や燃費アップに貢献することだ。

試乗して、加速力アップを実感!

試乗してみると、確かにトルクが太くなっていることが体感できた。SKYACTIV-Gとはいえ1.5Lは決してトルクフルとは言えないから、驚くほど力強くなっている、というほどではない。

しかし、シフトアップ時の加速感は明らかに力強くなっている。2速で4000rpmまで引っ張って3速にシフトしてアクセル全開、そしてまた4000rpmになったら4速へシフト。この走り方で加速Gを計測してみると、装着前と比べて2割Gが高まっている。

シフトアップの度に力強さを感じさせるから、ますますドライビングが楽しくなる。しかも加速時間を短くできるので、運転を工夫すれば燃費向上も期待できるのである。

またシフトアップのタイムラグがMTよりも少ないAT車でもトルクアップの効果は体感できるようだ。1速から2速へのシフトアップ時に(装着前には無かった)トラクションコントロールが作動した、という報告例もある。

しかもこのインテークセル、効果は確実であるだけでなくノーマルに戻すことも簡単だ。初期のNDロードスターに乗っているオーナーがインテークセルを装着して走りを楽しみ、数年後に新しい年式のNDロードスターに乗り換えるとしたら、インテークセルキットは使い回すことが可能なのである。

もちろんこのインテークセルキットは新型NDロードスターのエンジンにも装着可能だ。果たしてどれくらい効果があるのか。気になるオーナー諸氏には、是非とも試してほしいと思う。

より詳しいレポートはこちら

自動車ジャーナリスト

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。芝浦工業大学機械工学部卒。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、様々なクルマの試乗、レース参戦を経験。現在は自動車情報サイトEFFECT(https://www.effectcars.com)を主宰するほか、ベストカー、クラシックミニマガジンのほか、ベストカーWeb、ITmediaビジネスオンラインなどに寄稿中。最新著作は「きちんと知りたい!電気自動車用パワーユニットの必須知識」。

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