「何がなんでもゴールをこじ開けてやる」

 言葉に変えるなら、あのシュートにはそんな思いが込められていたのではないだろうか。

 J1リーグ第15節・FC東京戦の前半、アディショナルタイム。開始早々に失点を許し、ビハインドを強いられる展開の中、塚元大はハーフウェーライン近くでボールを受けると、ピッチを縦に切り裂くようにグイグイとドリブルで仕掛け、右足を振り抜いた。残念ながらシュートは相手GKに弾かれたものの、今シーズン初めて先発出場のチャンスを掴んだ中で『結果』で応えたいという思いも強かったのだろう。複数の相手ディフェンダーに囲まれているのも厭わず前へ、前へ。その姿に、今シーズン、2試合目の途中出場となった第14節・浦和レッズ戦後の塚元の言葉が重なった。

「ガンバにはすごい選手がたくさんいる中で今、僕の立場はチームの中でも下の方。今日みたいな試合で結果を出して、どんどん序列をあげていかなきゃいけないと思っていました。(相手選手の)間で受けるプレーとか、ドリブルでの仕掛けといった特徴を出していけたらチャンスにつながるという自信もあったし、それを思い切ってピッチで出そうと思ってやれたのは良かったです。ただ結果にはつながらなかったし、チームとしてもボールを持っている選手に対してサポートが遅れてしまったり、周りの選手が止まってしまっている感じもあった。FWとの関係性のところも、クロスをあげて終わり、みたいな攻撃が多かった。もっと僕自身も間で受けることを意識できれば得点が近づいてくると感じたし、そういった自分の役割をしっかり理解してやらなければいけないと思いました」

 浦和戦を迎えるにあたり、彼が改めて思い返していたのは昨年、ガンバ大阪U-23で言われていた言葉だったと言う。宮本恒靖前監督が解任された直後の試合に初心に返ってピッチに立った。

「プレーするのは選手ですが、勝てない責任は監督に回ってくる。そうした状況の中でツネさん(宮本恒靖前監督)が前節のサンフレッチェ広島戦後に解任されてしまって…僕もその試合に使ってもらっていただけに、そこで得点を決めることができていたら監督を続けていたかもしれないという思いもあった。とはいえ、自分にできることは、好きなサッカーをして生活できていることに感謝してピッチに立つことで…去年、森下さん(仁志/現ユースチーム監督)に言われていたことをもう一度頭に入れて試合に臨みました」

 昨年のJ3リーグで、森下U-23監督が繰り返し選手に投げかけていた『サッカーができることの幸せ』だ。

「コロナ禍でオリンピックが延期になったり、インターハイや高校野球の甲子園をはじめとするいろんなスポーツが中止になっている中で自分たちはプロといえども試合を開催できている。いろんな方がJリーグ再開のためにたくさんの会議をして、たくさんの準備をしてくださって僕たちの試合が成立している。いろんな人のおかげで好きなサッカーをさせてもらって、生活ができている。命をかけて新型コロナウイルスに立ち向かってくださっている医療従事者に比べたら…僕たちは何不自由なく食事もでき、寝ることもできて、自分たちがただ好きで始めたサッカーを思う存分、プレーすることができ、その姿を、たくさんの方に応援していただいている。だからこそ、いろんな難しい局面があっても、サッカーができることに感謝の気持ちを持って、最後まで諦めずに戦い続けよう(森下)」

 その言葉が胸にあったからだろう。チームとして連敗が続く苦しい状況下でのFC東京戦での先発メンバーへの抜擢はある意味、若い塚元には大きなプレッシャーを伴うものであったはずだが、それを自ら吹き飛ばすように前へ、前へ。そこには確かに、昨年のJ3リーグで育んだ「やり続ける先にしか、理想とする自分も結果も得られない」という彼の原点があった。

 そんな塚元は自分のことを「僕はいつも下から這い上がっていくタイプ」だと話す。思えば、プロ1年目となった昨シーズンも、アカデミーから昇格した同期の川崎修平や唐山翔自(愛媛FCに期限付き移籍)が開幕戦でゴールを決めたのに対し、塚元のシーズン初ゴールは第10節のY.S.C.C.横浜戦と遅れをとった。もちろん与えられたポジション、役割を考えれば、一概に数字を残しているか否かが評価の全てではないはずだが、彼がゴールへの欲を秘めて戦い続けていたことに嘘はなく、それは横浜戦後のコメントからも見てとれた。

「今日も先に修平と翔自が点を取っていて…よう取るなぁ、と思いながら、自分にも絶対にチャンスがあると狙い続けていました」

 チャンスがないのなら、掴めるようにアピールを続ける。ゴールが取れないのなら、取れるまで狙い続ける。つまりは、結果までの『過程』をどう過ごせるかが大事だという思いが「下から這い上がっていくタイプ」という言葉につながっているのだろう。そんな塚元だからこそ、冒頭に書いたようなシュートシーンをこの先も1度ではなく2度、3度、1試合ではなく2試合、3試合と、自身に求め続けるに違いない。