「2点ともいいパスがきて、ファーストタッチがうまく決まったので流し込めました。通算100ゴールは素直に嬉しいです。自分一人でゴールは取れないし、みんなのアシストがあってこそなので、一緒にプレーした全てのチームメイトに感謝します」

 10月7日のサガン鳥栖戦で『J1リーグ通算100ゴール』を達成する2ゴールを決めた渡邉千真は、そんな風にこの日のゴールを振り返った。足掛け12年、4クラブを渡り歩く中で叩き出したJリーグ史上15人目の偉業にも、いつものように真摯に、静かに。

「試合中もチームメイトが…特にハル(藤春廣輝)は『すごいじゃ〜ん!』って僕以上に喜んでくれて (笑)、それは嬉しかったんですけど、前半で2-0というスコアは決して安心できないので僕自身はそんなに喜べなかったです。試合が終わってからも…ま、いつも通り。史上15人目と聞いて思ったより少ないんだなとは感じたし、歴史の一部に名前が刻まれたのは嬉しいし、誇らしいけど、上には上がいる。100ゴールといっても自分にとっては通過点。取れてよかったというより、もっともっと取りたい、という欲が更に出てきました」

 早稲田大学時代に2年続けて『関東大学サッカーリーグ得点王』になるなど、点取り屋として名を馳せた渡邉千真は、数あるJクラブからのオファーの中から横浜Fマリノスを選び、09年にプロキャリアをスタートさせた。

「1年目は順調すぎた」

 デビューは華々しく、J1リーグ開幕戦で初先発、初ゴールを挙げると、その後も得点を重ね、チーム最多の13得点を叩き出す。ルーキーの最多得点記録を更新する『二桁』で、同年末には日本代表にも初選出された。

 その横浜F・マリノスを皮切りに、12年にFC東京、15年にヴィッセル神戸とチームを変えながら点取り屋としての存在感を示してきた。といっても、いい時間ばかりを過ごしてきたわけではない。チームが変われば、監督やチームメイトからの信頼を掴むこともまた1からとなり、それが刺激になることもあれば難しさに変わることもあった。

「試合に出たい。勝ちたい。ゴールを取りたい」

 それでも、全てはその思いで自分を奮い立たせて『ゴール』を目指してきた。「FWである以上、数字を残さなければいけない」。チームが変わっても考えがブレることはなかった。

 印象的だったのは、ヴィッセル神戸時代だ。ネルシーニョ監督(現柏レイソル監督)の意向で左サイドハーフでプレーすることが増えたが、献身的にチームプレーに徹し15、16年とプロキャリアでは初めて2年続けて『二桁』を実現する。そこに、ストライカーとしてのプライドを見た。

「左サイドハーフとして守備も求められながらも、そこからどうすれば点を取れるのか、どんな工夫をしたらゴールに近づけるのか、そのことばかり考えていました。どのポジションをやろうとプロは結果を残してナンボ。FWである以上、やっぱり数字が注目される。だからこそ、左サイドでも得点で自分の存在価値を示さなければいけないと思っていた」

 点を取ることへの意欲は今も変わっていない。18年夏にガンバ大阪に移籍して今年で3シーズン目。ハイレベルな競争が繰り広げられるFW陣にあって、出場時間では宇佐美貴史、アデミウソン、パトリックに続き4番目だが、得点数はチーム最多の6を数える。今シーズンは連戦ということもあり、途中から試合に出る選手ほどコンディション調整が難しくなっているはずだが、それをものともしない『結果』はある意味、キャリアで培ったプロフェッショナルイズムを示すもの。彼がゴールを決めた試合は4勝1分と「チームを勝たせるゴール」を決められてきたのも決して偶然ではない。

「先発メンバーは監督が決めることですが、先発で出場したいという思いは常に持っているし、それが叶わなければ悔しさもある。途中からでも、先発でもゴールはゴールなので取れれば嬉しいけど、かといって、スーパーサブ的に見られるのは正直、悔しさしかない。だからこそ、久しぶりに先発で出場した鳥栖戦で2ゴールを挙げられて良かったです。といっても直近のFC東京戦またサブで…当然、悔しかったけど、そこに悔しさを感じなくなったら終わりだと思うので、その悔しさは自分の中で大事にしながら、でもガンバにはいいFWがたくさんいることもしっかり受け止めて、また彼らと切磋琢磨してゴールを目指したい」

 実はJ1リーグ100ゴールを達成した鳥栖との試合前、愛娘に「今日は2ゴールを取るよ」と約束していたそうだ。過去の鳥栖戦で14試合11ゴールという相性の良さを示してきたこともあったはずだが、何より5試合ぶりの『先発出場』に期する思いがあったのだろう。そこで有言実行のゴールを決められるあたりに彼に流れるストライカーとしての血を再確認する。

「アウェイ戦だったから試合後すぐに娘から『おめでとう動画』が届いて…家族みんなが喜んでくれたのもすごく嬉しかった。最近は娘もいろんなことがわかるようになってきて…ゴールを決めるとすごく喜んでくれるのも自分の力になっている。娘のためにも、家族のためにも、応援してくれる人たちのためにも、もっともっと、点を取りたい。ただし、サッカーはチームで戦うもの。自分が点を取ればOKでは決してない。周りを助けて、周りに助けてもらいながらチームが勝つために仕事をしたいし、ゴールも取りたい」

幼少の頃から圧巻の得点力を示してきた一方で、ずっと大切にしてきた『周りへの感謝』を胸に、渡邉千真は次のゴールを目指す。