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<ガンバ大阪>勝ちへの執念を示した『大阪ダービー』で、8試合ぶりの白星。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

試合前からスタジアムに集結した35861人の観衆が、圧巻の雰囲気を作り出した『大阪ダービー』。ガンバ大阪は前節から大きくメンバーを入れ替え、システムも3−5−2で臨む中、個々が立ち上がりから球際や走力の部分をしっかりと示し、良いリズムで試合を進める。スコアレスで迎えた勝負の後半。待望の先制点はMF倉田秋。今季のJ1リーグ戦には初先発のDF高尾瑠からのボールを受けたMF高江麗央が速いボールで倉田につなぎ、豪快にゴール右上を仕留める。その後はやや守勢に回る展開の中、相手にボールを持たれる時間も長くなったが、最後まで全員が気迫のこもった守備を見せ、1−0で勝利。8試合ぶりの白星にスタジアム全体が歓喜に湧き上がった。試合後のガンバ大阪監督、選手のコメントをお届けする。

●宮本恒靖監督

ー率直に一勝の重みをどう感じていらっしゃいますか。

我々の現状を考えた時に、勝点3は本当に大切で、本当に意味のあるものだと思いますが、まだリーグが続く中でこれを継続して行くことに、今は頭が切り替わっています。

ー今日の3バック、3−1−4−2はU-23で監督をされていた時の形に近いように感じましたが、決断の理由と狙いを聞かせてください。

左サイドの攻撃が少し課題というところで、それを改善するためにどうするかを考えていた時に、このシステムでやるというふうに考え始めたのは鳥栖戦が終わった後の、オフの日くらいです。少し流れを変えるために若手を起用した中で、誰を配置し、どういう戦いができるかを想像した中で、このメンバーにしました。実際に左サイドもしっかり攻撃もできていたと思いますし、高尾瑠についても初出場でしたが最近の練習のパフォーマンスや、ルヴァンカップを見て起用しましたが、想像以上にしっかり落ち着いてやってくれたと思っています。

ーチームを率いる上で、何かを変える時というのは難しさもあると思います。試合前は選手の皆さんにどういう声かけをして送り出したのでしょうか。

選手にはずっと、今週に関してはやるしかない、と。我々のポジション、状況を考えた時にやるしかない、という話をしてきて、みんな勝ちたいという気持ちは重々、わかっている中でそれをピッチで表現して欲しいということも話しましたし、試合に出る、出ないという意味では選手は出たい言うのが当然ですけど、、チームが勝つ可能性を一番求めてメンバーを構成するのが監督の仕事だと思いますし、そういう中で若い選手は積極的に持ち味を発揮して欲しいし、ッピッチにいようがいまいが、経験のある選手はそういう選手をしっかりサポートするような形をとって欲しいというような話はしました。

●MF倉田秋

(素晴らしいゴールでした)マジでよかったです。一番いいところにボールを止めれたのであとは打つだけでした。(ニアの上を狙った)ファーストタッチがちょっと思ったより右側にいったので、ファーに流すよりはあそこに思い切り蹴ったら入るかなと思って、蹴りました。と言っても僕もまだ2点目で全然足りないので、これから連続で決めていけるようにしたいです。(システムも変わり、人も変わり、若い選手も多い中で、どのあたりを強調してプレーしたのでしょうか)フォーメーショも今週はみっちりできたので、それもありつつ、あとは1:1とか、気持ちを出してそこは絶対に負けないようにしようとみんなで言っていて、それを全員ができた結果だと思う。(ダービーでかなりアドレナリンも出た?)そりゃ出ますよね。これだけすごい雰囲気を作ってくれたら出ないほうがおかしいと思うので。(勝ててない中でダービーを迎えて、これだけの雰囲気を作ってもらって、メンバーも変わり、若い選手も出て、と「やらなきゃいけない」と思う要素も多かったと思いますが、それがプレーに出せたという印象ですか?)全て出せたわけじゃないけど今まで溜まっていたものが今日の勝利で少し発散できたというか、勝ってロッカールームでもみんな喜びを爆発させていたので、そういうのはなかなかやれていなかったのでいいことだと思うし、これからどんどんチームをよくしていってみんなで喜べるようにしたい。(気持ちを1つにする上で選手でもミーティングをした。強調したことは?)選手同士、ミーティングもしたりして、一番出たのはもっと思い切りやろうと。アグレッシブにやってミスをしても全員で取り返せばいい、と。あまり考えすぎずに思い切りやろうと言っていてそれが今日は出たと思います。(若手にも思い切りやれと?)今日出た若手は勝手にできるくらいのメンタルなので。だから全然心配はしていなかったです。

●DF三浦弦太

これだけフォーメーションもいじって、メンバーも変えての『大阪ダービー』だったので、最初は選手も変わったことに対する戸惑いも少なからずあったと思いますが、全員がそういう中でもいい練習ができたからこそ今日の試合につながった。けど今日1試合勝ったからOKではないし、チームとしてもっと上にあがっていかないといけないし、でも非常に大事な、今シーズンにおいてターニングポイントになるような試合になったと思うので、ここから続けて行かなきゃ意味がないということを頭に置いてやっていきたい。(内容にも手応えを感じる結果だったのではないですか?)そうですね。ゼロで終えられたことが僕らからすると何よりよかったなと思うところでしたけど、ただ今日はもっと決めきるチャンスもあったし、そこで決めきれないと勝ちきれない試合も出てきてしまうので、細かい部分にこだわってやっていきたい。(矢島選手の前に倉田選手、高江選手というのも利いていましたが機能した点というのは?)チームとしてはめられる自信もあったし、運動量の部分で…もともとはウイングバックを押し出して、後ろがスライドするという形でしたが、なかなかずれない中で、秋くん(倉田)や麗央(高江)のところでプレッシャーをかけられて、練習してきた形とは多少かわったところはありましたけど、アグレッシブな守備ができたし、彼らの運動量にも助けられました。

●MF福田湧矢

(ダービーで今季リーグ戦初先発というのはどういう気持ちでしたか?)最初は少しびっくりしましたけどやれる自信があったので。去年出た時は「なんで?」って戸惑いもありながらプレーしていて、でも今年は自信があった中でのスタメンだったので、あとは監督に言われた通りのことを、それ以上のことをやろうと思って臨みました。(左のウイングは初めてですか?)初めてです。(最初は戸惑いも?)いや、練習で言われた通りのことを思い切ってやろうと思っていました。(言われた通りとは?)相手のサイドバックとサイドハーフの中間でまずボールを受けること、それは前半やってうまいことまわってきたので、それもあって相手も後半は下げてきたので、あの時点で勝負があったなって思いました。相手が自分たちのサッカーにあわせてくれたので。あとやられる気もしなかったし、今日は1:1も一度も今日は負けなかったのでよかったです。(それにしても最後まで運動量も落とさなかった)そうですね。ガンバU-23の一次キャンプがすごいきつくて。今までの人生で一番きつかったので。メンタル的にも運動量も…だって2部練習して試合ってないですよね(笑)? 後半60分くらいで体力が落ちると「ここからが勝負や!」って仁志さん(森下U-23監督)に言われて…その言葉がきつい状況になった時に、今日も出てきました(笑)。(最後のシュートシーン。ファン選手とアデミウソン選手も入ってきてましたけど自分で打つと決めていたようにみえました?)決めていました。最初から(笑)。あれパスしてミスって後悔するより自分で打ってミスった方がいいから。よく…ミスって、「ああ、自分で打っておけば!」ってなるのがいやなので。僕は何も失うものがないので思い切って打ちました。

●MF矢島慎也

(システム、人も変わって、効果的に底のポジションでチームを攻守に操縦して居ましたね)中盤で僕と麗央(高江)と秋くん(倉田)のところでスライドをするところを、僕がコントロールするというのは守備のところでも意識してやっていました。僕が麗央と秋くんを相手のサイドバックの位置に出すのか、それとも、ワイドをそのまま縦にずらしてはめにいくのか、っていう判断と、あと2トップの立ち位置のところは意識してやりました。(今週この形でやってきて、なかなか最初はうまくいかないということも多かったのでしょうか)そうですね。不安もありましたが、ただ、やるしかないと思っていました。若い選手も出ていたし、運動量もあって、勢いはこっちがあったのかなと思います。ただ、細かいところは修正しないといけないので、それをやらないといけないし、個人のところでもチームのところでもこれを続けていくことが大事だと思っています。ここで終わったら意味がないので。(守備のところの役割だけじゃなく、攻撃でもウィジョ選手に縦に入れたボールとか、狙いを持って前も動かしているなというふうに見えました)後半は先制点を良い形でとれたので、相手が攻めてくるのはわかっていたし、ウィジョは常に一発で裏を狙っているのもわかっていたし、あとはアデが降りてきてくれて受けてくれるっていう関係性も2トップがちゃんとできていたので、欲を言えば2点目を取れればよかったと思います。(大阪ダービーの空気の中で勝てない状況を止められた)そうですね。今日勝てたのは本当によかったけど、また明日から違う試合に向けた準備が始まりますし、去年もダービーは勝ったけどそのあと結局すぐにはうまくいかなかったので、それを繰り返してはいけないなと思います。

●MF高江麗央

(自分としても自信を持てるパフォーマンスだったのでは?)いや、足がつるのが早すぎたので、そこは不甲斐ないですね(笑)。(システムが変わった中での役割は?)システムが違うからこそ、みんな…ダービーというのもあるけど…集中して、一人一人の役割をちゃんとわかってやれていたので、チームとしてもうまく戦えたんだと思います。(アシストのシーンは会心のガッツポーツでした)秋くん(倉田)がわかりやすいアクションを起こしてくれて、足元に速いボールを出そうという余裕もあったので、そこに出せて、秋くんのファーストタッチで決まったなって思いました。(あの場面だけじゃなくて持ち味であるダイナミックさが攻守両面で出た)そこはツネさん(宮本恒靖監督)から一番求められているところだったし、自分は正直、前半で出し切るくらいの意識で走ってやろうと思っていました。(ガンバU-23で一緒にやってきた選手もたくさん出て、あのゴールも高尾選手から出された。分かり合えているメンバーが近くにいたやりやすさもあった?)瑠くん(高尾)があそこを狙っているのは前半からわかっていたし、それをうまく受けれたのは大きかったです。練習の時もああいうのがあって、自分のコントロールを一度ミスした時に、ツネさんからも「あそこでスピードを出し切るよりコントロールするときの余裕を持て」っていうことを言われて、そこがしっかりうまく出せたかなって思いました。(大阪ダービーはU-23でも戦っていますが)J1デビュー戦も大阪ダービーで…ただメンバーも違うしそこまで良い印象を持って入ったわけではなかったですけど、自分なりに良いイメージをして臨めてうまく試合に入ることができました。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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