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<ガンバ大阪>クラブ記録に並ぶ9連勝。順位を8位にあげる。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

V・ファーレン長崎を迎えてのホーム最終戦。前節で残留を確定したガンバ大阪だが、試合前には選手バスの入場にあわせて大勢のサポーターが集結してエールを送るなど、緊迫した雰囲気を作り出してくれたのもあったのだろう。選手もそれに応えるかのように集中した入りを見せる。そんな中、10分にはMF小野瀬康介のゴールで幸先よく先制点を奪い優位に試合を運ぶも、前半終了間際に失点。1−1で突入した後半も前半のいい流れを継続する中で、52分には3月10日の川崎フロンターレ戦以来の先発となったMF中村敬斗が決勝点を奪い、2−1で勝利した。ガンバはこれで9連勝。97年に達成したクラブ連勝記録に並ぶ数字で、ホーム最終戦を締めくくった。試合後のガンバ大阪監督、選手のコメントをお届けする。

●宮本恒靖監督

ホーム最終戦というところで、しっかりと勝ち点3をみんなでとろうという話をしました。秋(倉田秋)が出場停止だったり、アデミウソンが少しコンディションの部分で整わなかった中で、代わりに入った選手が結果を残して欲しいなと思って見ていましたが、敬斗(中村敬斗)が得点をあげてくれましたし、久しぶりのスタメンだった千真(渡邉千真)にしても、一定以上の働きをしっかりしてくれたと思っています。立ち上がりから非常にアグレッシブな入りができたと思いますし、その点は良かったと思います。ただ追加点を獲るという課題は回収しきれていないところもあるので、もっとホームでたくさん点を取りたいという思いはあります。2−1になった後もしっかり試合を締めるということ、他の選手が入った中でも追加点を狙うという姿勢をみせられたという点ではよかったと思っています。9連勝しましたが、残り1試合、アウェイでしっかり勝ちたいという思いに変わりはないので、引き続き来週もしっかりトレーニングをしたいと思っています。

ー9連勝は監督が現役時代の97年以来ですが。

あまり当時のことは覚えてないですね(苦笑)。それこそエムボマが前にいて、守っていればカウンターで点をとってくれるなという中で試合をしていたな、ということなどは覚えています。

選手もいま自信を持ってやっている部分もありますし、少々攻められてもドンと構えていられる部分もあるので。ただ、そうはいっても点を取れる時には取らないと。今日はウィジョが追加点を獲るチャンスもありましたし、2−0とか3−0にしたい試合ではあったので、そこはしっかりトレーニングしたいと思います。

ー決勝ゴールを決めた中村選手ですが、なかなか出場機会がなかった中で起用されました。7月くらいからの成長ぶりや、先発に送り出す上でどんな思いを込められましたか。

ガンバに入ってきた時からオンのところというか、ボールを持っている、ペナルティエリアの中にいるときには、光るものを持っていたので、トップの試合に絡んだ中で点を取るシーンもありましたし…でもそれ以外の、オフのところの動きを改善しなければ90分は難しいという話は本人にしていました。ヘディングの競合いや、球際の競合いだったり、スライドの速さ、裏への飛び出し、など、いろんな課題を与えた中でそれを少しずつクリアしていった。それをこの1ヶ月半くらいの中で見て取れたので、J3の試合でそういった結果として得点もあげながらやっている姿も見ていたので、今日に関しては点を取るかどうか、点をとれよという話はしましたし、ミーティングでは堂安律(フローニンゲン)が残した高校三年での結果と、敬斗の結果や足りない部分を比べて話をしながら送り込みました。得点以外のところもいいプレーもありましたし、何よりゴールに向かって仕掛けるという良さを何度もみせてくれたのはよかったと思います。ただトータルで、サッカー選手として考えた時にああいうクリアミスが起こったりもしたのは事実なので、そういうところをもっともっと改善していってもらいたいと思います。

ー中村選手についてですが、守備面での課題を抱えていたと思いますが、どんな声をかけられましたか。

映像をみせながらJ3の映像から、彼の映像を切り取って「ここが課題だ」と指摘しながら、練習の中から守備の良いアプローチがあれば、今のは良いプレーだ、今のは足りないっていうのを伝えながら、選手が映像で見たものと実際のプレーをすりあわせるという作業をしてきて、今日も試合のテンションの中でいろいろ良いプレーもあったと思いますし、切り替えの早さも見られたと思います。春先に比べて逞しくはなってきていますが、秋や小野瀬(康介)ら、他の選手とスタメンを争って行くにはもっともっと身につけて欲しいものもあるのでそれを伝えていきたいと思っています。

ー監督がセレモニーでおっしゃった『一体感』を生むために、一番大切にされてきたことはどういうことでしょうか。

難しい質問ですが、それは何かを出すために、これを出すために取り組んだというものではなくて、いろんな選手の特徴、長所をいかしてもらいながらチームが勝利することにつなげていきたいと思って、いろんな組みわせを考えたり、言葉をかけたり、コミュニケーションをとったりしてきました。それぞれの選手が持っているものを、吸収してくれた結果、9連勝というか最初の勢いに乗って行くまでに繋がっていったのかなと思います。あとは明確にこういうプレーをして欲しいということは個別に伝えたりもしてきました。

●MF小野瀬康介

(入りが良かった中でさらにチームを勢いづけるゴールでしたね)ツネさん(宮本恒靖監督)が今日もしっかりいい入りをしようと言っていて、それは意識していましたし、いいチャンスがきたので…こけそうになりましたけど(笑)、決められて良かったです。(受けた時にちょっとボールが足元で詰まりましたよね)そうなんですよ…なんで詰まったのかわからないんですけど。でも詰まりましたけど焦らず最後はしっかり得意のコースに決められて良かったです。(得点が決まりだすとああいうシーンがきたときに気持ち的に少し楽に打てたりするのでしょうか)そうですね。1点目を取ってからは余裕が出るというか…なので(横浜FM戦でアシストをしてくれた)藤春さんに感謝しています(笑)。(相手もハードにきていたし、難しい試合でしたがしっかり勝ち切れましたね)確かに難しい試合だっただけに今日の試合も価値のある1勝だと思うので、来週また勝ってみんなで笑顔で終われるように、締めくくりたいです。(9連勝、どんな感じですか?)毎日がハッピーな感じです(笑)。(途切れさせたくないという思いがまたチームを勢いづけているところもありますか)そうですね。自分のポジションというか、勝たないとすぐに交代させられるポジションだし、他にもいい選手はいっぱいいるので、その中でも負けちゃいけないという気持ちがあるから、勝たなきゃいけない、自分の存在を出さなきゃいけないという意識にもつながっているのかなというのはあると思います。(今日は中村選手が先発して、一緒に先発を飾るのは初めてでしたが、彼のほうが経験値としては少ない中で声をかけたり、存在を意識しながらプレーしたことはありますか?)…って試合前には思っていたんですけど、ふと試合記録をみたら僕の方が出場試合数は少ないと気づいて、特に言うことないなって思って言わずにいました(笑)。でもそうやって選手が変わった中でも結果を出せたのは良かったと思いますし、ああいういい若手選手が他にもたくさんいるので、刺激にはなっています。

●MF中村敬斗

(初ゴールについて)めっちゃ嬉しいです。シュートはダフったんですけど、ダフったおかげで逆に入りました。その前に前半の終わりにゴール前で空振ってしまって…やらかしたって思っていて。それまでは良かったと思うんですけど。前半の終了間際だったので、そのあとのプレーにはあまり影響しなかったんですけど、やっちゃったなっていう感じはありました。ただ後半点を取ったらチャラになるかなと思っていた中で取れたので良かったです。秋くんの代わりは少し荷が重いところもありましたけどやりきったなっていう感じです。日頃の練習、毎日の練習が確実に今日の試合に出たなっていう気がします。(練習のところで意識してやってきたことは?)走力は監督がかわってからずっと上げろって言われていて。ようやくJ1の舞台でフルで出れるくらいの走力がついて、スプリント回数も増えたので、あとはオフザボールの部分は、ツネさん(宮本恒靖監督)になって教えてもらうことが多くなって、ボールをもらう回数、触る回数もかなり増えていたので、それは良かったと思います。(J1の舞台で90分は初めて。最後足はつっていましたがフル出場した中での自分への手応えは?)守備の部分でもだいぶ、走れるようになってきたし、最後、アディショナルタイムくらいで足はつりましたけど、90分間走って、最後相手も疲れた頃にもう1点を取れるくらいの力を身につけたいと思いました。あと後半、点を取ってから、ちょっと落ち着いてしまったところもあり…アディショナルタイムに入る前くらいに疲労がきていたので…残り5分くらいのところなんですが、ああいうところで仕掛けることができたらなっていうのは思いました。(川崎戦以来のスタメンでしたが、あの時は何もできなかったと言っていました。相手は違うとはいえ手応えはあの時より手応えは感じましたか?)あの時に比べると、ボールをもらう場所もよくなったし、ボールをもらう前に今日は周りを意識して見れていたので慌てずにプレーできていたし、失う回数も減ったし、『ハメパス』というか、そういうのもあったし、全然、川崎戦の時とは…相手が違うとはいえ、あの時に、今日の長崎と対戦していても全然通用しなかったと思うので。そういう意味では本当に変われたなって思います。(中村選手が出ていた序盤戦に比べてチームの状況もよくなっている中でのやりやすさもありましたか?)スタートで出るのと途中から、という違いもありますし、チームの状況がいいことによるやりやすさもあったんですけど、個人としての質も変わったというか。得点以外のところでも、入った当初はクルピ前監督に運良く使ってもらって試合に出ていたとはいえ、いろんなプレーがプロのレベルに達していなかったと思うんです。そこまで僕自身、危機感も感じずに出ていて、ズルズルきて、当時は体も全然キレていなかったし。でも最近は体重もかなり変わりましたし、筋肉量、体脂肪も変わったので、動きやすさというのは出たのかなと思います。(こういう雰囲気での初ゴール)観客の皆さんも開幕戦と同じくらい、すごく多くて、その中で決められてしかも決勝ゴールで嬉しいです。(チームも連勝できていて久しぶりにスタメンを預かるプレッシャーというか、連勝を止めちゃいけないという思いもあったのでしょうか)空振りして失点した時は、ハーフタイムはさすがに、このまま1−1で終わったらさすがに戦犯だなって思って…でもそんなには気にしてないというか、プレー自体は悪くなかったので気にしてなかったんですけど…点を取ればいいかなくらいで、あまり気にせずにやっていたらゴールを決められたので、よかったです。正直今日よくないプレーというか…例えば前半で変えられたりとかしていたら今後の人生に響いているくらいのことだと思っていたし、チャンスをもらえた時に掴み取れないと上にはいけないので、今日ここで取れたのは自分にとっても大きかったと思います。

●DF米倉恒貴

(決勝点につながるパスを右から送り込みましたね)そうですね。千真くん(渡邉千真)が決めてくれたらと思ったんですけど、敬斗(中村敬斗)の初ゴールだったし何よりも勝てたので、それが一番かなと思います。(難しさも伴う試合ですが入りもよかったですね)そうですね。ここから難しい試合が続くと思うんですけど、そういう中でも今日は内容も良かったし、ただ入りそうで入らないチャンスがたくさんあったので、そうなると失点をする雰囲気になりがちなので、そこでもう少ししっかり加点していけるようになればと思います。ただ失点しながらも後半巻き返せたのは良かったです。最後までみんな攻めていたし、守りに入っていなかったので。その姿勢は大事だと思うし、それがいま勝っている要因じゃないかなと思います。(中村選手が久しぶりの先発でした)あいつは普段の練習でめちゃめちゃ良くなっていたので。失っちゃいけないところでのミスというのもありましたけど、高校生だと考えれば計り知れないポテンシャルだと思うので。プロのスピードにも慣れてきたし、将来的にも有望だと思います。(失点のところに絡んでミスが出たけど、それをみんなで取り返してやろうという雰囲気もあったのでしょうか)そんなミスありました(笑)? あまり覚えてない…変なところでボールを失った時の方が印象に残っていますけど、ミスはあるし、ミスは1人のせいじゃないと思うので。試合中に誰がミスとか関係ないと思うし、みんなでの失点はみんなで取り返せばいいと思ってやっていたので僕はあまり気にせずにやっていました。でもそれならなおさら点を決められて本人はホッとしてたとは思います(笑)。

●GK東口順昭

(前回0−3で負けている相手にリベンジができました)そうですね。あそこから自分たちがどれだけ成長できたか示せた試合だったと思いますし、ホーム最終戦だったのでしっかり勝ちきれて良かったと思います。(何度か危ないシーンもありましたが、アウェイ戦での対戦に比べたら守備の逞しさを備えられるようになったという感覚もあったのではないですか?)そこが決定的に違っているところだと思います。しっかり寄せられているので、僕もすごくコースを限定しやすいし、すごくいい循環で守備はできているのかなと思います。(メンバーが入れ替わった中で結果が出せたのも収穫ですか)そうですね。いい流れの時は誰が出てもいいサッカーをすると思うし、その中で結果を残していくというのはチームにとって必要なことなので、またこのチームは成長したんじゃないかなと思います。(失点シーンでの中村選手の空振りには何か声をかけましたか?)いや、ああやってああいう経験をしていって、成長していくと思うので、特に声はかけることでもないのかなと思っています。

●MF遠藤保仁

(最終戦いい形で勝てましたが)連勝を続けるのは非常にいいことですし、今日の試合も危ない場面もありましたけど、結果、順位をあげることもできましたし、次、勝てば、さらにあげられる可能性があるので、最終節もしっかりと勝って締めくくって終わりたいと思います。(メンバー入れ替えながらの戦いでしたがチーム力としても手応えを感じましたか?)終盤は累積とか、けがとかも想定される中で若い選手にとってはチャンスなので。特に、いい流れの中でいい形でプレーするのが若い選手にとっては重要なことだと思うし、そういう意味では、いいタイミングで敬斗(中村敬斗)だったり、一美(和成)だったり、ヤン(高宇洋)だったり、いい経験を積めているんじゃないかと思います。またチームとしても、1年間ということを通して考れば全員の力が必要だと思うので、若い選手にはこれに満足せずにさらに上を目指してやっていって欲しいなと思いますし、経験ある選手もしっかりサポートしていけるように、最後の試合もそういう形でやっていけたらいいなと思います。(いろんな種類の、効果的なパスが遠藤さんから出ていましたね)1つ相手を交わせればそんなにプレスはこないので、そこだけだったと思います。ハル(藤春廣輝)とかいいタイミングで上がっていける選手もいるし、うまく使いながら、サイドからできれば崩したいと思っていた中で、今日はいい展開もあったと思いますが、さらにクオリティあげて、ゴールチャンスを増やしていければいいなと思います。(久しぶりの先発を飾った中村選手について)久しぶりに先発で出ましたけど、彼は守らせるより攻めさせた方が良さが出るし、守備い追われる時間が長いと力が半減すると思っていたので、できる限り守備の負担を減らしてあげたいと思っていました。その中で彼も今日はゴールという結果を出せましたが、よりいい形で前を向かせることができばもっとできる選手だと思うので、少しずつ成長して本来のシュートとか、フィニッシュのところで力を発揮できるように僕らがサポートしていければなとは思います。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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