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「ロシアのウクライナ侵攻はNATOが加盟国として受け入れなかった結果」ウクライナの政治学者が指摘

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
ウィーンのホーフブルク王宮前では25日、ロシアのウクライナ侵攻に対するデモが発生(写真:ロイター/アフロ)

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が今も続いている。いったい何がロシアのウクライナ侵攻を招いたのか。キエフ在住のウクライナの政治学者兼政治アナリスト、ジャーナリストでもあるビクター・カスプルク氏(66)に聞いた。

 ――いま、ウクライナでは何が起きているのか。

 事態は重大だが、危機的ではない。ロシアとウクライナの兵力は対等ではないが、ウクライナは保ち続けている。現在起きていることは、NATO(北大西洋条約機構)とEU(欧州連合)がウクライナをメンバーとして受け入れなかったことの全ての結果だ。そして、西側諸国は今回のロシアとウクライナのハイブリッド戦争を「ウクライナ危機」と名付けた。

 ロシアとの8年にわたる戦争は、ウクライナがテロリスト国家と対峙してきたことを意味する。2月24日、このテロリスト国家は公然とウクライナを攻撃した。

 ロシアのウクライナ占領を防ぐためには、制裁だけではだめだ。ウクライナは最新兵器はじめ、西側諸国の軍事的な支援が必要だ。私たちはソ連にも攻撃された。私たちは独立国家として主権を守るために闘っている。

 ――何がここまで問題を悪化させたのか。

 モスクワはソ連を蘇らせたいと願っている。それがプーチンの固定観念だ。それを実現するには、独立国家としてのウクライナが邪魔になっている。彼らはウクライナを破壊したいと思っている。全て単純なことだ。

 ロシアの独裁者はウクライナ人が先祖の土地を守るということを理解していない。ここは私たちの領土であり、敵は踏み入れることはできない。

 プーチンは核兵器で世界を脅かし、状況を悪化させてきた。ウクライナを支援する人々を脅してきた。そして、一部の国々を束縛してきた。

ウクライナの政治学者兼政治アナリスト、ジャーナリストであるビクター・カスプルク氏(66)(本人提供)
ウクライナの政治学者兼政治アナリスト、ジャーナリストであるビクター・カスプルク氏(66)(本人提供)

 ――プーチン大統領は当初からウクライナ侵攻を計画していたと思うか。

 プーチンが2000年以来、ウクライナ侵攻の計画を立てていたことは今や明らかだ。大統領に就任し、さらに国境の見境がつかなくなった。気が狂っているとしか言いようがない。

 ウクライナがロシアと戦争を続けるのは難しい。もし私たちの同盟国が兵隊を送る準備ができていないのであれば、世界各地のボランティアたちに私たちを支援していただけるようお願いしたい。武器の供与が望まれている。

 ウクライナは今や自国を守るためではなく、欧州全体と世界の民主主義システムを守っている。もしウクライナがロシア侵攻を止められないのであれば、次はヨーロッパの国々がターゲットになるだろう。

 ――ウクライナのゼレンスキー政権をどのように評価しているか。

 現在のような状況は、誰がウクライナ大統領であっても大変なはずだ。ウクライナはとても厳しい試練に直面している。ゼレンスキー大統領はウクライナの独立を守るため、歴史的な使命を果たしている。

パリにあるフランス外務省内でも25日午後、ロシアのウクライナ攻撃を伝えるフランスの国際ニュース専門チャンネル「France 24」の映像が流れていた(高橋浩祐撮影)
パリにあるフランス外務省内でも25日午後、ロシアのウクライナ攻撃を伝えるフランスの国際ニュース専門チャンネル「France 24」の映像が流れていた(高橋浩祐撮影)

 ――アメリカのバイデン政権についてはどのように評価しているか。ロシアに対して弱腰だと思うか。

 そのように思っている。ソフトな軍隊になっている。とはいえ、バイデンは経験豊かな政治家だ。彼と彼のチームは、民主主義文明の行方がウクライナで決定されようとしていることを理解している。

 それゆえに、アメリカ政権はウクライナが敗北しないよう行動を取るだろう。その一方で、プーチンが敗北に追い込まれれば核兵器を使用しかねないということもバイデン大統領は理解しているだろう。

 ――日本政府に期待することは何か。

 ウクライナにとって日本の支援はとても重要だ。日本にはアメリカ、EUをはじめとする国々と共に、ユニバーサルな民主主義の価値を守るため、ウクライナを支援していただきたい。

 ロシアに対する全面的な制裁に参加すること。ウクライナへの不当な武力侵攻に関連し、ロシア連邦に可能な限りのあらゆる種類の圧力をかけること。さらには、ウクライナに軍事技術、経済、金融といった面で支援することを期待している。

 日本は現在起きているようなロシアの不当な武力侵攻を経験している。結局のところ、ロシアは今もなお日本領土の一部を占領しているのだから。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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