北朝鮮は1月11日に極超音速ミサイルの発射実験を行い、連続成功したと発表した。朝鮮労働党機関紙の労働新聞が12日、報じた。労働新聞の第1面に金正恩(キム・ジョンウン)党総書記(国務委員長)がミサイル発射実験の現場を視察した写真が掲載され、特集が組まれた。2020年3月以来のミサイル発射実験への公式視察とみられる。

北朝鮮は2021年9月28日と2022年1月5日に極超音速ミサイルの発射実験を行ったと発表しており、今回は6日ぶりの3度目となる。北朝鮮は、昨年1月の党第8回大会で策定された「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」に基づき、国防力強化を図るため、極超音速ミサイルを完成させての実戦配備を急いでいる。

金正恩総書記は昨年末の5日間にわたる党中央委員会総会で、不安定化する朝鮮半島の軍事的環境と国際情勢が「国家防衛力の強化を少しの遅れもなく力強く推進することを求めている」と述べたと北朝鮮メディアは報じたが、その言葉通り、新年早々からミサイル発射を繰り返して国防力強化に邁進している。

労働新聞掲載の写真には、金正恩氏の実妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長の姿も写っている。

北朝鮮が11日に発射実験を行った新型極超音速ミサイル(労働新聞)
北朝鮮が11日に発射実験を行った新型極超音速ミサイル(労働新聞)

労働新聞は12日、「極超音速ミサイル試験発射で連続成功」と報道。さらに、ミサイル発射後、600キロメートルの地点で「極超音速滑空飛行戦闘部」(=弾頭)が分離されて再び跳躍、滑降しながら240キロにわたって強い旋回機動し、1000キロメートル先の標的に命中したと報じた。そして、「最終試験発射を通じて極超音速滑空飛行戦闘部の優れた機動能力がさらに明らかになった」と強調した。

労働新聞が12日に掲載した写真では、北朝鮮内陸部から日本とロシアに挟まれた日本海の標的目標へと飛翔したミサイルの垂直方向と水平方向の軌道2本が上下にスクリーン画面に写っている(NK News提供)
労働新聞が12日に掲載した写真では、北朝鮮内陸部から日本とロシアに挟まれた日本海の標的目標へと飛翔したミサイルの垂直方向と水平方向の軌道2本が上下にスクリーン画面に写っている(NK News提供)

労働新聞が12日に掲載した写真では、北朝鮮内陸部から日本とロシアに挟まれた日本海の標的目標へと飛翔したミサイルの垂直方向と水平方向の軌道2本が上下にスクリーン画面に写っている(NK News提供)
労働新聞が12日に掲載した写真では、北朝鮮内陸部から日本とロシアに挟まれた日本海の標的目標へと飛翔したミサイルの垂直方向と水平方向の軌道2本が上下にスクリーン画面に写っている(NK News提供)

米カーネギー国際平和基金の上級研究員、アンキット・パンダ氏は12日、筆者の取材に対し、「(労働新聞掲載の)写真の解像度が高くないのだが、ミサイルの形状や機動再突入体(弾頭)の小さな翼からして、5日に発射されたミサイルと11日に発射されたミサイルは同じタイプと思われる」と述べた。

また、写真を見る限り、両方のミサイルのTEL(輸送起立発射機)は同じ6軸12輪の車両となっている。パンダ氏は、このTELがソ連時代のベラルーシで開発された6軸12輪型の大型軍用車両MAZ-547の改良型とみており、ムスダンやノドン、火星12といったミサイルにも使われてきたと述べた。同氏は、正確な数は得られないものの、北朝鮮はこのTELを30~50機保有していると推定した。

一方、この11日に発射された北朝鮮ミサイルについて、韓国軍は同日、最大速度マッハ10前後、最高高度約60キロメートル、飛距離700キロメートル以上と推定していた。

また、前回5日に発射されたミサイルについては、韓国軍は最大速度マッハ6、最高高度50キロメートルで、飛行距離は北朝鮮が主張する700キロメートルに到達できなかったと評価した。日本の防衛省は、このミサイルの飛行距離が「通常の弾道軌道だとすれば約500キロメートル」と推定した。米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、この200キロメートルの差は、おそらくミサイルの最終段階の飛行が日本のレーダー探知範囲よりも下で起き、探知できなかったためと推測している。このため、防衛省も「通常の弾道軌道だとすれば」との条件を設けたとみている。

5日発射の北朝鮮ミサイルについて、韓国軍は記者団に対する背景事情の説明(バックグラウンド・ブリーフィング)で、「北朝鮮の主張通りならば、韓国で開発した射程800キロメートルの地対地弾道ミサイル『玄武(ヒョンム)2C』も最大速度がマッハ9で極超音速ミサイルになるが、『極超音速』とは呼ばない」と北朝鮮側の主張を一蹴した。そして、韓国軍は、北朝鮮が発射実験したミサイルが極超音速ミサイル基準の速度マッハ5を超えたにもかかわらず、ミサイルの形状や軌跡などから、「極超音速ミサイル」ではなく技術的に改良された弾道ミサイルを実験発射したと説明し、依然として迎撃可能との見方を示した。

北朝鮮が1月5日に発射実験を行った「新型極超音速ミサイル」。しかし、韓国軍は円錐形の機動式再突入体(MaRV)を搭載した液体燃料使用の弾道ミサイルとの見方を示した(労働新聞)
北朝鮮が1月5日に発射実験を行った「新型極超音速ミサイル」。しかし、韓国軍は円錐形の機動式再突入体(MaRV)を搭載した液体燃料使用の弾道ミサイルとの見方を示した(労働新聞)

韓国軍が実戦配備した射程距離800キロメートル、最高速度マッハ9の玄武2C弾道ミサイル。韓国は北朝鮮の主張通りなら玄武2シリーズもすべて極超音速ミサイルになるが、そうは呼ばないと説明した(韓国国防部)
韓国軍が実戦配備した射程距離800キロメートル、最高速度マッハ9の玄武2C弾道ミサイル。韓国は北朝鮮の主張通りなら玄武2シリーズもすべて極超音速ミサイルになるが、そうは呼ばないと説明した(韓国国防部)

●朝鮮新報「打撃力を一層強化する国防建設が着々」

北朝鮮は日米韓の事前探知や迎撃をくぐり抜ける新型ミサイルの開発に躍起になっている。2021年に入ってからでも、次のように矢継ぎ早に新型ミサイルの発射実験を繰り返してきた。朝鮮新報平壌支局は同年12月27日、「新たに開発した戦略戦術ミサイルの試射が行われ、敵対勢力による攻撃を朝鮮の領土外で消滅させる打撃力を一層強化する国防建設が着々と進められた」と報じ、1年を振り返っていた。

2021年3月25日    「新型戦術誘導弾」(KN-23)

   9月11、12両日 「新型長距離巡航ミサイル」(LACM)

   9月15日     「鉄道機動ミサイルシステム」(KN-23改良型)

   9月28日     「新たに開発された極超音速ミサイル『火星8』」

   9月30日     「新型地対空ミサイル」

   10月19日     「新型潜水艦発射弾道弾」(KN-23海上発射改良型)

2022年1月5日      「新型極超音速ミサイル」

   1月11日      「新型極超音速ミサイル」

労働新聞は12日、今回の「連続試験成功」によって、金正恩総書記が「朝鮮労働党第8回大会が示した国防力発展5カ年計画の中核5大課題のうち、最も重要な戦略的意義を持つ極超音速兵器開発部門で大成功を収めた」と述べ、「ミサイル研究部門の科学者、技術者、活動家と当該の党組織の実践的成果を高く評価した」とも報じている。

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