フランス、東地中海での軍事プレゼンスを強化――ガス田試掘のトルコを強くけん制

フランス空軍のラファール戦闘機(写真:ロイター/アフロ)

東地中海の海底でガス田開発が進む中、トルコと周辺国との緊張対立が高まっている。

フランスのマクロン大統領は8月12日(日本時間13日)、東地中海での軍事プレゼンスを一時的に強化するとツイッターで明らかにした。トルコをけん制する狙いがある。

マクロン大統領は「東地中海の状況は心配だ。石油探査をめぐるトルコの一方的な決定が緊張を引き起こしている」と指摘し、トルコを強く批判した。

●トルコ、ガス田試掘に軍艦5隻をエスコート

トルコは10日、探査船「オルチ・レイス」と補助艦2隻がギリシャとキプロスの間にある海域で23日まで試掘を行うと発表した。

トルコ国防省はツイッターで、この探査船にトルコ海軍の軍艦5隻がエスコートしている写真を掲載した。

これを受け、ギリシャは監視のために軍艦数隻を派遣した。

また、マクロン大統領は12日、ギリシャのミツォタキス首相と東地中海情勢をめぐって電話会談を実施した。フランス大統領府の説明によると、マクロン大統領は「フランスと欧州連合(EU)による、主権が脅かされているあらゆる加盟国との連帯」を改めて表明。そのうえで、対話を通じた問題解決の重要性と、ギリシャとトルコ両国による幅広い協議の必要性を強調したという。ドイツによる仲介も歓迎している。

マクロン大統領はツイートでも、「近隣諸国と、北大西洋条約機構(NATO)内の同盟国との間の平和的な対話」を求めている。フランスもギリシャもトルコもNATO加盟国だ。

ミツォタキス首相は、EU外務理事会の緊急会合の開催を要請した。

マクロン大統領は、東地中海での軍事プレゼンスの強化が、ギリシャを含むヨーロッパのパートナー国と協力し、一時的なものになるとの方針を示した。

●仏、ラファール戦闘機2機をクレタ島に派遣

フランス国防省は13日、キプロスで10日から12日まで軍事演習に参加していたラファール戦闘機2機を13日付でギリシャのクレタ島のスーダに派遣すると発表した。

フランス海軍のヘリ空母「トネール」も、ベイルートでの爆発を受けたレバノンへの緊急輸送が終わり次第、東地中海での軍事プレゼンス強化のために展開される。ラファイエット級フリゲートも参加する。

フランス国防省は、東地中海での軍事プレゼンスの強化の目的が、状況の独自評価の実施に加え、航行の自由と海上安全の確保を意図したものと説明している。

しかし、トルコの探査船「オルチ・レイス」が軍艦5隻にエスコートされていることに比べれば、フランスの対応は、すでに地中海で展開中の戦闘機2機と軍艦2機だけを振り向けるだけで、多分に象徴的なものとも言える。

●ガス田開発に乗り遅れたトルコ、リビア暫定政権と組む

東地中海のガス田開発をめぐっては、イスラエルが先鞭を付け、エジプトなどが後に続いた。イスラエルとキプロス、ギリシャは、欧州に天然ガスを輸出する海底パイプラインを計画した。

これに対し、乗り遅れたトルコは、リビア暫定政権と組んで地中海に排他的経済水域(EEZ)を設定した。これがトルコのリビア内戦への介入を強める大きな要因ともなった。

北アフリカのリビアは東西に分裂して内戦状態が続き、混乱している。トルコがリビア西部の首都トリポリを拠点とする暫定政権を軍事支援しているのに対し、リビア隣国のエジプトはこれに対立するリビア東部の軍事組織を支援している。

エジプト議会は7月20日、リビアへの軍の派遣を全会一致で承認した。エジプトが今後、リビアへの軍の派遣に踏み切れば、暫定政府を軍事支援するトルコとの間で直接的な軍事衝突が起きる恐れも出ている。

エジプト、ギリシャ両政府は8月6日、東地中海にある両国のEEZの画定に関する合意文書に署名した。東地中海のガス田開発やリビア内戦に介入するトルコをけん制する狙いがあるとみられる。地域の火種が絡み合い、緊張がさらに一段と高まることが懸念されている。