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海上自衛隊の最新鋭掃海艦「えたじま」が進水。日本の技術の結晶

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
12月12日に進水したあわじ型掃海艦3番艦「えたじま」(高橋浩祐撮影)

ジャパン・マリンユナイテッドは12月12日、横浜事業所鶴見工場(横浜市鶴見区)で海上自衛隊向け最新鋭掃海艦(MSO)の進水式を行った。同艦は「えたじま」と命名された。2021年3月に完成し、海自に引き渡される予定だ。

えたじまは2017(平成29)年度計画掃海艦で、艦名は広島県の江田島に由来する。同島は1888(明治21)年に海軍兵学校が東京築地から移転して以来、海軍ゆかりの島として知られる。海軍兵学校の代名詞ともなっている。

えたじまは、掃海艦「あわじ型」の3番艦だ。あわじ型は、もともと海自初の掃海艦で既に退役した世界最大級の木造艦「やえやま型」の性能向上型となっている。えたじまの総工費は約177億円。

12月12日に進水したあわじ型掃海艦3番艦「えたじま」(高橋浩祐撮影)
12月12日に進水したあわじ型掃海艦3番艦「えたじま」(高橋浩祐撮影)

●海自最大のFRP製掃海艦

えたじまは、あわじ型の1番艦「あわじ」と2番艦「ひらど」とともに海自で最大の繊維強化プラスチック(FRP)製掃海艦となる。船体に木材ではなく、FRPを使うことで、やえやま型とほぼ同じ寸法ながら軽量化された。さらにFRPを採用することで、耐衝撃性を確保しつつ、使用年数が大幅に長くなる長寿命化が図られている。海上幕僚監部広報室によると、寿命は木造艦船が約20年に対し、FRP製は30年超になるという。

えたじまは基準排水量690トンで、前級のやえやま型掃海艦より約310トン小型化する一方、えのしま型掃海艇(MSC)よりは約120トン大型化した。全長は67メートルで、全幅11メートル、深さ5.2メートル、喫水2.7メートル、ディーゼル2基2軸、軸馬力2200馬力、最大速力は約14ノット。乗組員は約55人。

えたじまは特に潜水艦をターゲットにする深深度機雷を排除する能力に優れている。広範囲にわたる深度の機雷探知を可能にする深深度掃海装置1式を備える。海面上を漂流する機雷を昼夜を問わず遠距離から探知できる光学式監視装置(レーザー・レーダー)も搭載している。浮上した機雷を処理するための20ミリ機関砲1基も備える。

えたじまは、対機雷装備として、使い捨ての機雷処分具となる三井造船製の自走式機雷処分用弾薬(EMD)、日立製作所製の新型可変深度式探知ソナー(VDS)システムのOQQ-10、水路調査用で自律行動型の無人水中航走体(UUV)など多くの新装備を搭載している。えたじまは、日本の技術の結晶ともいえる。

防衛省・海上自衛隊は8月、2020年度予算に、えたじまに続くあわじ型4番艦の建造費として128億円を概算要求している。

12月12日に進水したあわじ型掃海艦3番艦「えたじま」(高橋浩祐撮影)
12月12日に進水したあわじ型掃海艦3番艦「えたじま」(高橋浩祐撮影)
米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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