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テラハ木村花さんの悲劇をうまない、SNSで誹謗中傷・いじめに心が負けない方法と周囲ができること

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
木村花さんのTwitterより。木村さんはSNS推進部部長も務めていた

リアリティ番組「テラスハウス2019-2020」(Netflix及びフジテレビ系)に出演中だったプロレスラー木村花さんが、ネット上の誹謗中傷により自殺してしまった。

SNSでは匿名で安全圏から攻撃できるため、不特定多数の人がうっぷんを晴らす目的で他人を攻撃する傾向にある。少しでも非難すべきと感じる点があったら、正義感と大義名分で情け容赦なく攻撃されてしまう。受け手側からすれば、世界から自分の存在すべてが否定されている気持ちになり、追い詰められてしまうことになる。

実は、これはネットいじめで追い詰められる構造と同じなのだ。SNSで誹謗中傷やいじめにあったときに追い詰められないコツと、周囲ができることについて解説したい。

SNSから距離を取り、逃げよう

SNSでの匿名の誹謗中傷は、受け手を傷つける。建設的な意見なら見るべきところもあるだろうが、誹謗中傷中心の場合は、スマホの電源を切り、SNSから距離を取る時間も大切だ。

本当は、自分を否定する意見ばかりでは絶対にない。しかし、SNSばかり見ていると、世界全てに存在が否定されているような錯覚を覚えてしまうものだ。好意的な意見はあえて送られてこないことも多いが、否定的な意見は執拗に送られてくるからだ。

スマホは置いて、自分の味方をしてくれる人と話したり、肯定してくれる意見に積極的に触れていこう。自尊心を取り戻し、愛してくれる人や大切に思ってくれる人がたくさんいることを強く感じよう。

でも、それだけでは受けた傷は簡単には癒えないかもしれない。その場合は、いじめる集団や誹謗中傷から逃げよう。学校や会社でされているなら休んだり距離をおいたりしよう。

なお、SNSの場合は、他人への名誉毀損や嫌がらせは禁止事項となるので、運営会社へ通報しよう。

身近な人や相談機関に相談する

味方となってくれる家族や友人などに、悩みやおかれている状況などを相談するのもおすすめだ。まず問題から距離を起き、安心できる状況を作ること、追い詰められないことが一番大切なのだ。

しかし残念ながら、子どもたちが家族にもいじめや誹謗中傷の相談できないことは多い。そこで、普段からSNSなどの利用状況について会話する習慣を持ち、子どもの変化に気づけたり、相談される関係性を築いておくことが大切だろう。

身近な人に相談しづらい場合は、相談機関という選択肢を用意しておくことも機能する。警察のサイバー犯罪相談窓口に相談する他、SNSで相談に乗ってくれるアカウントに相談したりしてもいいだろう。このような相談機関の存在は、問題が起きる前にあらかじめ伝えておいたり、SNSで友だち追加させておくと安心だ。

コロナ禍でプロレス興行がなかったこと、撮影もストップしていたことから、発散する機会もなく不安とストレスだけがたまり、相談できる相手も近くにいなかったこと。所属事務所のSNS推進部部長を担当していたため、SNSに向き合い続けねばならなかったことが、木村さんの悲劇を生んでしまったのが、とても悲しい。

今回は誹謗中傷やいじめに負けないことにフォーカスしたが、匿名での誹謗中傷は許すべきではなく、できることがある。詳しくはこちらの記事を参考にしてほしい。子どもに誹謗中傷をさせないための指導方法についても解説している。

TwitterやFacebook、LINEなどのSNS運営会社が設立した「ソーシャルメディア利用環境整備機構」は、他人への嫌がらせや個人に対する名誉毀損といった禁止事項を利用規約などに記載、啓発活動を実施。違反行為を把握した場合、サービスの利用停止など適切な措置を徹底し、被害者への必要な支援も検討する旨、声明を発表しているので、こちらも期待したい。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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