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テラハ木村花さんの悲劇を繰り返さない、SNSで誹謗中傷されたらできる対策と子どもへの指導方法

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
木村花さんはInstagramに「ごめんね」「さようなら」と投稿していた

リアリティ番組「テラスハウス2019-2020」(Netflix及びフジテレビ系)に出演中だったプロレスラー木村花さんが、22歳の若さで一日100件を超える誹謗中傷により自殺していたことが社会問題となっている。

若者たちの恋愛模様が台本が一切ない状態で見られると人気の番組であり、木村花さんは、2019年9月から同番組に出演していた。木村さんのSNSには多数の匿名による誹謗中傷が寄せられており、これが自殺を招いたと言われている。

若くして亡くなってしまった木村さんの件は、心が傷む。もうこのような悲しい事件を二兎度起こさないためにも、「自分や子どもが誹謗中傷されたらどうすればいいか」「子どもに対して誹謗中傷をしないように教えるにはどうすればいいか」を考えていきたい。

匿名アカウントに対して情報開示請求を行おう

この事件の大きな要因の一つは、言うまでもなく、インターネットでは匿名での誹謗中傷が可能なことだ。特定の人物を悪しく取り上げる番組の演出が、SNSの誹謗中傷増加に影響した可能性があると言われており、こちらも考える必要はあるだろうが、今回は触れない。

SNSでの匿名の誹謗中傷を減らしていく取り組みは大切だ。今回、木村さんが亡くなった後に誹謗中傷していたユーザーはアカウントを消して逃亡した。

しかしインターネット上での書き込みは、匿名でも発信者情報開示請求により個人を特定することは可能だ。今回のケースでは、誹謗中傷したアカウントは削除されていたが、そのようなケースでも諦める必要はない。

情報開示請求をするためには、プロバイダに対して該当するURL、掲載された情報、人権侵害になる理由などをまとめて連絡する必要がある。

つまり、誹謗中傷された証拠を残すためには、削除に備えてキャプチャを取ったり、印刷しておいたりすることが大切だ。アカウントなどが削除されていてもアクセスログが残っていた場合は、情報開示請求ができる。Twitterの場合は一ヶ月間アクセスログが残っているので、なるべく早く行動してほしい。

また、木村さんは、SNS内で何度もSOSと見える投稿を繰り返していた。ずばり「死にたい」などと書くと相談機関が表示されたりする仕組みはあるが、もっと積極的に助けることはできなかったのか悔やまれる。

「誹謗中傷してはいけない」の教え方

小学生がLINEなどのSNSを使い始めたばかりのときは、「友達と仲が悪くなった」「いじめにつながった」などの問題がたくさん起きる。

悪口をそのまま送ってしまう例もあるが、悪口を送ったわけではないのにトラブルになることも少なくない。悪口を送ってしまう子どもに対しては、「自分が言われて嫌なことは書いたり送ったりしてはだめだよね」という従来の指導でいいだろう。しかし、悪口を送ったつもりはない子どもに対してはどう指導すればいいか。

SNSでは文章中心でコミュニケーションするが、子どもたちは文章力も読解力も乏しい。しかも、表情や声色などが見えたり聞こえたりしないので、自分の本心を伝える手段は文章しかない。その上、受け取った相手がどのような感情を抱いたかもリアルタイムにはわからないため、トラブルにつながるのだ。

多くの子どもは話しているのと同じつもりでLINEを送っている。しかし、それでは相手が傷ついたり悲しんだり怒ったりすることにつながりかねないので、まずは家庭内でやりとりの練習をしてほしい。そこで、「文章だけだと気持ちが伝えづらい」「文章だけだと思ったよりきつく感じる」などの経験をすることが大切だ。

政府は今回の問題を受け、憲法が保障する表現の自由に配慮しつつ、SNSを提供する企業に一定の責任を課す方法や、誹謗中傷した人への罰則を設けるなど法整備も含めて検討するとしている。匿名の発信者の特定を容易にする制度改正も検討するようだ。

また、インターネットで他人を傷つけるような書き込みをしないよう啓発活動も重要視するとの発言もあるので、今後に期待していきたい。

子どもがこのようなトラブルに巻き込まれないためには、普段から子どもがどのようなサービスを使っているか、誰とどのような交流をしているのか、様子がおかしいことはないか見守ることが大切だ。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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