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ポスト嘉弥真に大前進のアピール投!ソフトバンク育成・渡邊佑樹「楽天時代よりもいい」

田尻耕太郎スポーツライター

 ポスト嘉弥真へ急浮上だ。福岡ソフトバンクホークス・渡邊佑樹投手が12日、宮崎春季キャンプA組のシート打撃に登板して打者6人を完ぺきに封じた。渡邊佑はいわゆる二軍に相当するB組メンバーからこの日唯一の参加で最高のアピールを果たした。

「ストライク先行でいけましたし、ゾーン内でしっかりバッターと対戦できたのでよかったです」

 渡邊佑は横手投げの変則左腕。「左右関係なく抑えるのを意識している」と話すが、左打者キラーとしての期待が大きいのが当然だ。もちろん本人も自覚をしている。

打者6人をぴしゃり

 その中でこの日は周東佑京と川瀬晃を三ゴロ、栗原陵矢を中飛、牧原大成からは空振り三振を奪った。「とらえられた打球も少なかったのでよかった」と自信を深めた様子だった。

 特に牧原大の打席ではチェンジアップを有効に使って追い込み、決め球も同じ球種で空振りさせた。「左打者へのチェンジアップは入っていく軌道になるので難しいけど、しっかり投げられた」。左対左を抑えるのも外一辺倒では苦しくなる。非常に内容のある1打席勝負だった。

嘉弥真が後押しした新スライダー

 また、改良したスライダーが有効だったという。

「曲がりの小さいスライダーを練習している。タイミングが合っていないようだったので、この冬、取り組んできたことを発揮できてよかった。去年から取り組んだんですけど、あまり試合で試す機会がなく、オフにしっかり練習しました」

 もともとスライダーは不得意な球種だったという。ヒントをくれたのは昨年はチームメイトで、同じ変則左腕として敬意を表す嘉弥真新也だった。

「嘉弥真さんが昨年は筑後でリハビリをする期間があったので、話をさせてもらいました。スライダーの話もしたし、嘉弥真さんもシュートを投げるのでその話をして、いろいろ教わったりしました。そこでイメージをつくってキャッチボールをして試して、それを自分の中で落とし込んで消化して、という感じで今のスライダーができあがりました」

 2017年から6年連続で50試合以上登板した左腕は昨季限りで自由契約となり東京ヤクルトスワローズへと移籍した。昨季のソフトバンクは田浦文丸が中継ぎ左腕では最多の45試合に登板している。だが、田浦は左肩コンディション不良で宮崎キャンプに参加できておらず、現時点では筑後リハビリ組での調整と出遅れている。

 一方で昨季途中に加入したダーウィンゾン・ヘルナンデスの開幕一軍抜てきを小久保裕紀監督が示唆したり、チームは昨年末の現役ドラフトで中継ぎ左腕の長谷川威展を北海道日本ハムファイターズから獲得したりと「穴」埋めにも動いている。

楽天時代は一軍で防御率2点台も

 渡邊佑はとにかくアピールし続けるしかない。現在は育成選手という立場だが、東北楽天ゴールデンイーグルスでプレーしていた2022年には一軍で13試合に登板して防御率2.13をマークした実績もある。当時よりも現在の方が引き出しも増え、「楽天時代より、状態的には今が一番いいと思っています」と自信を見せる。

「しっかり競争して、僕も負けないように。1日でも早く支配下に上がらないといけない。去年はあんまり状態も良くなくて、正直(支配下の残り)枠というより実力的に上がれていなかった。今年は枠に余裕がありますが、あんまり考えず。(残る)枠が多い少ないではなくて、自分のできることをしっかりやるのが一番だと思う」

 今季は強力打線が期待されるソフトバンクにおいて投手陣強化が重要課題。その中でもアキレス腱の1つである中継ぎ左腕の部分がしっかり固まれば、4年ぶりのリーグ優勝と日本一という大目標に一歩近づくことができるだろう。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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