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ホークス渡邉陸はなぜ「バケモノ」を目指すのか。大谷翔平の動画もチェック

田尻耕太郎スポーツライター
福岡ソフトバンクホークス・渡邉陸

 雪が降る寒さをしのぐ厚着でも、ホークス・渡邉陸の肉体の変化は一目で分かるほどだった。

「秋のキャンプが終わってから体重が7、8キロ増えました。今はちょうど100キロあります」

 23日に福岡市内で行っている自主トレを公開。昨年に引き続きチームの先輩の中村晃に弟子入りし、プロ6年目を迎える今季に向けて充実の日々を送っている。

 この自主トレのテーマを問われた渡邉陸は迷わず「バケモノになる」と答えた。

「フィジカル的なところもそうですし、技術的なところでも上を目指す、そういった意味です」

猛打の捕手、期待の若鷹

 身長187センチの大型捕手。育成ドラフト入団も3年目に支配下登録されると、4年目だった2022年には1軍デビューを果たした。そしてプロ初スタメンだった広島戦の第1打席で森下暢仁からプロ入り初安打となる3ラン本塁打を放つと、続く打席でも左翼方向へ2打席連続本塁打をマークする離れ業をやってのけた。その衝撃的な活躍で「猛打の捕手」として期待が高まったが、昨年は一転して1軍出場なしと悔しいシーズンとなっていた。

「(昨年のことは)終わったことなので先を見てという思いもありますが、その中でも去年の経験を無駄にしないように、今年はやっていきたいと思ってます。また、(この日の)雪に負けないぐらい激しいトレーニングをしてきましたし、今までの野球人生の中で一番頑張ったというか、常に野球のことを考えて過ごしたオフでした」

 その一端が肉体改造だった。

この日の自主トレは雪の中行われた。左は中村晃
この日の自主トレは雪の中行われた。左は中村晃

 トレーニングはもちろん、食事や睡眠まで意識を配った。食事は1日7回。睡眠では「仰向けになると回復が遅くなる。人間の一番リラックスする方法があると本で読んだ」とそれを実践していると言った。わずか2か月足らずで一気に体重を増やすことに成功し、「走ったり打ったり投げたり、今まで以上にパワーアップしてるなっていうのは実感してます。それが化け物に近づく第一歩かなと」とたしかな手応えを感じている。

あと1週間でさらに2キロ増!?

 バケモノ化のきっかけは昨年12月、米国シアトルのトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」を訪れたことだった。それまでも「フィジカル強化がパフォーマンス向上につながる」と考えていたが、人生で初めてという米国を訪れて衝撃を受けたという。チーム内の若手では規格外の肉体を持つリチャードが「全然大きくないというか全然目立たないっていうか、普通みたいな感じだった」。同施設には年下のアマチュアの米国人選手も多く訪れていたが、力強い肉体に圧倒されたという。

「やっぱりそのぐらいのレベルにならないと、戦えないかなと思った」

 キャンプインまで残り1週間ほどだが、「体重はあと2キロ増やして102キロで臨みたい」と鼻息荒かった。

「今、バッティングをやるとセンターから逆方向も飛びますし、ちょっと(コンタクトの感触が)薄いかなと思った時でも結構飛んでいる。打球速度自体は測ってはないけど、飛んでいるということは打球速度も上がってる証拠だと思う。自分は捕手なので守備も大事ですが、やっぱりバッティングが好きなのでそこを生かしながら。いろんな海外の選手や日本のトッププレーヤーの打撃動画を見てモチベーション上げるというか、ここを目指そうと思いながらやってます。特に見ているのは大谷翔平選手です」

 自主トレの“師匠”の中村晃からも「体も大きくなっているし、試合に出て、打撃の持ち味が出れば。2桁本塁打は打てると思います」と太鼓判を押された。

 プロ野球は“突き抜けた何か”を持つ選手こそ華がある。バケモノになるという明確な目標は、ファンを楽しませる良い心得だ。今季の渡邉陸は注目すべき存在となりそうだ。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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