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堀江貴文氏はなぜ心中複雑? 自身創設球団から初のドラフト選手誕生、大江海透がオリックス育成2位

田尻耕太郎スポーツライター
指名直後に西岡剛選手兼任監督(右)の音頭で記念撮影。中央が大江海透

 球団創設2年目で、初のドラフト指名選手が誕生した。

 プロ野球独立リーグ「ヤマエグループ九州アジアリーグ」の北九州下関フェニックスの大江海透投手が10月26日に行われたプロ野球ドラフト会議でオリックスバファローズから育成2位指名を受けた。

 北九州市内の球団合宿所で会見は設定され、大江は西岡剛選手兼任監督、竹森広樹球団代表取締役と並んでドラフトの様子を見守っていた。

涙の指名会見

 19時50分、名前が呼ばれた瞬間は驚いた表情を見せながら比較的冷静な様子だった。しかし、会見開始まで少し間が空くと、様々な思いが頭の中を巡ったのか涙が溢れて止まらなくなった。「正直不安の方が大きかった。実感が後からわいてきた」と話し、取材の最中も「高校時代から、悔しい思いをしてきたので、やっぱりそれが……。プロになれて、家族のみんなにも伝えたいと思います」と涙を流しながら答えた。もし、再び指名漏れしたら今季限りで野球選手人生にピリオドを打つつもりだったという。

 大江は佐賀県出身で神埼清明高校から久留米工業大学へ。大学4年生時にプロ志望届を提出したが指名漏れし、北九州下関フェニックスに入団していた。2年目となる今シーズンは44試合、78回を投げて90奪三振、防御率2.31を記録。先発と中継ぎにフル回転し規定投球回をクリアして、最優秀防御率のタイトルを手にした。

チームの決めポーズ「フェニックスポーズ」もばっちり決めてくれた
チームの決めポーズ「フェニックスポーズ」もばっちり決めてくれた

 持ち味は最速153キロをマークするストレート。「オリックスは投手がすごく豊富。その中でもがいて、這い上がっていきたい」といかにもハングリー精神たっぷりな意気込みを口にした。

西岡監督「まだおめでとうは言わない」

 西岡選手兼任監督はあえて教え子を厳しく突き放した。「その世界(NPB)で戦った人間として、(育成入団は)スタートラインに立てていない。プロと同じユニフォームを着ているだけ。1、2段上がらないと。思っている以上に厳しい現実が待っている。まだおめでとうは言わない。支配下になったときにとっておく」と話した。

 それを聞いた大江は「監督はいつも厳しい。やさしい言葉をかけられたら、逆にたいしたことない選手ということ。嬉しく思います」と口元を引き締めていた。

堀江氏の″本音”と″本気”

 ところで、北九州下関フェニックスは2021年5月、ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が新球団設立を発表したところから歴史がスタートした。

 創設わずか2シーズンでNPBドラフト指名選手を送り出したのは快挙ともいえる。

だが、X(旧ツイッター)で喜びの声を求めたところ、以下のようなコメントが返ってきた。

「正直もちろんですが、敗北感しかないですね。リーグと球団を盛り上げて逆にNPBから選手を根こそぎ獲得できるようになりたいです!」

 堀江氏にすれば、独立リーグがNPBより“下”などという概念はない。堀江氏はフェニックス球団設立を表明したころから、そういった通例の枠組みを打破して、もう1つの野球リーグが日本国内の中でも発展できる可能性があると本気で考えている。だからこそ、フェニックスを創設したのだ。

 また、堀江氏は今年9月に北九州市に本社を置くFMラジオ局「CROSS FM」の経営権を引き継ぎ会長職に就いた。来季は、球団とメディア連携など新たな施策が幅広く行われるのではなかろうか。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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