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期限は今月末。育成54名の大所帯。支配下復帰へ、執念の「0」封を続けるホークス奥村政稔30歳

田尻耕太郎スポーツライター
支配下復帰を目指す奥村

 7月6日、ウエスタン・リーグ公式戦で福岡ソフトバンクホークスはタマホームスタジアム筑後で阪神タイガースと対戦した。

【7月6日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 1,007人】

阪神     `000000100 1

ソフトバンク `04000023× 9

<バッテリー>

【T】●森木(2勝4敗)、鈴木、佐藤蓮、岩田、小林――榮枝、藤田

【H】○奥村(1勝0敗)、アルメンタ、泉――谷川原、海野

<本塁打>

【T】野口1号

<スタメン>

【T】4遠藤 5山本 9板山 D野口 3片山 2榮枝 7井上 8井坪 6高寺

【H】6ガルビス 2谷川原 5リチャード 7生海 9増田 3アストゥディーヨ Dホーキンス 8水谷 4西尾

<得点経過>

2回裏【H】ガルビスが三塁線破る先制タイムリー。リチャードの打席で森木が暴投し三走生還。生海が満塁から2点タイムリー。(H4-0D)

7回表【T】4番・野口が左越えソロ。九産大出身の育成ルーキー(H4-1T)

7回裏【H】仲田が押し出し四球を選ぶ。谷川原の打席で捕逸があり、三走が生還(H6-1T)

8回裏【H】野村大の中前適時打、西尾の2点右二塁打(H9-1T)

<トピックス>

・先制打のガルビスは3打数2安打1打点

・ホーキンスも2安打

・アルメンタが2軍公式戦では初の回またぎ、2回1安打3奪三振無失点

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支配下復帰へ、奥村が2戦連続0封投球

 気迫はこれでもかと伝わってきた。

 先発した奥村が5回2安打無失点と好投。前回登板から2試合で、9イニング続けて「0」を並べている。

 持ち味の低めにボールを集めてゴロを打たせる投球も光った。4回表の三者凡退はすべて内野ゴロ。5回表は先頭打者にヒットを許したが、次の打者を三ゴロ併殺打に仕留めた。

「前々回のロッテ戦が“ちゃかんちゃかん”やったん。防御率もそうだけど、見た目も悪い。そういうところもやっぱり大事になるんで」

 6月17日のロッテ戦は中継ぎで3回6失点だった。その後2戦連続0封を続けている。

「0を並べていかんといけない。それはだいぶ意識をしています」

昨年は1軍で防御率0.90

 奥村は昨年まで背番号61をつけていた。プロ入り前、大学を中退し社会人野球でプレーをしたが、なかなかドラフトで名前が呼ばれなかった。26歳でようやくドラフト7位で指名があった。悲願のプロ入りを果たすもなかなか日の目を見る活躍をできなかったが、昨年1軍4試合登板ながらプロ初先発を含む2度の先発で好投。プロ1勝はお預けになったが、PayPayドームのお立ち台には上がり、防御率0.90という好成績を残した。

 しかし、これからという時期に右肘を故障して9月末の手術。それに伴って支配下契約が解除となり、背番号126の育成選手として今季は再出発していた。

 現在30歳。今季は過去最多の育成54人を抱えるソフトバンクの中でも、年齢も1軍実績も周りの選手とは一線を画す立ち位置にいる。

 このところ、育成選手の姿勢や目の色などに苦言を呈すことの多い小久保裕紀2軍監督も「実績もある選手。そこに返り咲くために必死でやっている姿はしっかり伝わってくる。自分の置かれている立場もわかっている」と頷く。

小久保2軍監督が出した異例の指示

 だからこそ、異例の指示も出した。

 1回表の守備だ。1アウト二、三塁で内野に前進守備を敷かせた。通常ならば「1点は仕方ない」と通常の守備位置で着実に1つのアウトを取りに行く場面だ。

「失点をさせたくなかった。そこをしっかり三振とセカンドゴロで切り抜けたからね」

 奥村もマウンドで、小久保2軍監督の考えを感じ取っていた。

「小久保2軍監督もそうだし、3軍のときも森山3軍監督から同じようなケースでどうする?と訊かれたことがありました。チームの戦術には従わないといけないですが、僕は前進守備がありがたいと話したことがありました」

 ソフトバンクの支配下選手は68名。空いているのは2枠だ。7月末の今季期限までに、誰かに朗報は届くのか。奥村は「登録されて終わりじゃない。だから、そこに向けてというのは違う」とあくまで1軍でチームに貢献して恩返しすることを思い描いて、次回以降も「0」を並べにマウンドに上がる。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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