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「育成のホークス」に金の卵はまだいるのか。防1点台左腕に、高校通算97HR。登録期限は7月末に迫る

田尻耕太郎スポーツライター
背番号3桁の育成選手。写真は黒瀬

 ソフトバンクは今月2日、育成枠だった中村亮太投手を支配下選手登録したことを発表した。

 育成からの支配下登録をはじめ、トレード、新外国人選手獲得といった新戦力獲得期限が7月31日に迫っている(※注・下記参照)。

 また、ソフトバンクは中村亮の登録で支配下選手は「69名」となった。

支配下枠は残り1つ

 上限は「70名」。つまり、ソフトバンクは「まだ1枠」残しているとも言えるし、「あと1枠」しかないとも考えられる。

 今年、ソフトバンクは三軍拡大に伴って在籍する育成選手の数が大幅に増えた。現時点で36名の3桁背番号たちがしのぎを削っている。

 あと1枠をつかみ取る若鷹は、果たして現れるのか。今回は4人の有力候補に迫ってみた。

同郷同学年の左右2投手がライバル関係

バツグンの成績を残す岡本直也
バツグンの成績を残す岡本直也

 今シーズンここまで育成枠を卒業して支配下登録されたのは藤井皓哉(3月22日移行)、田上奏大(4月7日移行)、中村亮(上記)の3名いずれも投手だったが、今季は育成枠に好投手が多い。「投手はいくら居ても困らない」が球界の定説であり、「あと1枠」を投手がつかむ可能性は十分にある。

 上記3名はいずれも右腕だった。チーム事情を鑑みれば、左腕が足りていると言い難い。サウスポーで好アピールしているのが岡本直也だ。今季が大卒4年目。昨季までの3年間は左肩痛もあり公式戦出場がゼロだったが、今季は故障も癒えて潜在能力をようやく発揮している。今季ウエスタン・リーグでは16試合に登板して4勝0敗、防御率1.26と文句なしの成績。

 5月29日の広島戦(八代)では先発して5回1失点で勝利投手に。リリーフでも好結果を残しており、ロング起用にも対応している点は評価されていいはずだ。

リリーフ適性を示している重田倫明
リリーフ適性を示している重田倫明

 同じ大卒4年目の右腕、重田倫明も一軍で通用しそうな成績を残している。チームで2番目に多い29試合に登板して2勝3敗4セーブ、防御率2.27。先日支配下入りを果たした中村亮が27試合1勝1敗、防御率2.45だったから決して引けを取らない。中村亮は直球とタテの変化で勝負をするタイプな一方で、重田はスライダーとシュートを駆使してヨコの変化で打者と対峙する。今後はシュートをさらに磨いていきたいと意気込みを語っていた。

高校97発大砲と「周東2世」

右の大砲・黒瀬健太
右の大砲・黒瀬健太

 野手では黒瀬健太に注目だ。右の長距離砲で、直近の7月3日のファーム交流戦・日本ハム戦(鎌ヶ谷)でも6号本塁打を放っている。63打数18安打で打率.302をマークし、およそ10打数に1本の割合で本塁打を放っている。今季が高卒7年目。初芝橋本高校(和歌山)時代には通算97発を記録して注目を集めた。

 プロ入りはドラフト5位。しかし、なかなか結果を残せずに育成降格となり現在に至っている。それでも7年目まで契約が継続しているのは、期待の高さの表れだ。そもそも長距離砲の育成には時間がかかると言われる。ついに迎えたこの開花の予感の時を逃すわけにはいかない。

俊足巧打が持ち味の緒方理貢
俊足巧打が持ち味の緒方理貢

 全く別タイプの野手もいる。大卒2年目の緒方理貢だ。俊足巧打の「周東2世」は、ウエスタン・リーグで33試合に出場し打率.301、11盗塁を記録している。春先は小久保裕紀二軍監督が取材の中でたびたび名前を挙げ「イチオシ」と語っていた。5月下旬に故障してリハビリ組となっていたが、7月2日に三軍で実戦復帰。遠回りをしてしまったが、巻き返していけば楽しみな存在になる。

●岡本直也

投手。左投左打。背番号133。

1996年10月30日生まれ、25歳。千葉県出身。千葉経済大附属高校から東農大北海道オホーツクキャンパスを経て、2018年育成ドラフト4位で入団。

●重田倫明

投手。右投右打。背番号138。

1996年5月30日生まれ、26歳。千葉県出身。千葉英和高校から国士舘大学を経て、2018年育成ドラフト3位で入団。

●黒瀬健太

内野手。右投右打。背番号126。

1997年8月12日生まれ、24歳。大阪府出身。初芝橋本高校から2015年ドラフト5位で入団。

●緒方理貢

内野手。右投左打。背番号127。

1998年9月22日生まれ、23歳。宮崎県出身。京都外大西高校から駒澤大学を経て、2020年育成ドラフト5位で入団。

(※注)野球協約第108条(譲渡可能期限)

(原文)選手契約の譲渡が許される期間は、年度連盟選手権試合シーズン終了後の翌日から翌年7月31日までとする。ただし、この協約に基づくウエイバーの請求による選手契約の譲渡に関してはこの限りでない

(写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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