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カープ戦力外、独立で1年、そしてホークス育成入団。「純粋に野球を楽しむ」紅白戦150キロ零封でA組へ

田尻耕太郎スポーツライター
A組昇格を手繰り寄せる快投(筆者撮影)

 最初のアピールチャンスで見事な“ホークスデビュー”を飾った。

 背番号157右腕の藤井皓哉投手が16日に行われたA組紅白戦に、B組からの参加という形で出場した。六回から紅組の4番手として登板。この回1アウトから好打者の中村晃をストレートで空振り三振。続く七回はこの日2安打など好調の井上朋也、外野レギュラー候補にも挙がる柳町達から連続三振を奪った。

 最速150キロを計測し、2回無安打無失点、3奪三振と好投。藤井は「結果にとらわれ過ぎずに、この時期にA組に呼ばれたことをプラスに考えた。一軍で活躍している選手と勝負できたのが良かったと思っています。この時期に150キロは今まで出たことがない。正直スピードは気にしていませんでした。ただ、自分の持てる力を出していこうと思っていた」と振り返った。

カープ二軍時代に防御率0.33も

 魅力たっぷりのストレートに藤本博史監督も「投手で目立ったのは藤井やね」と名前を挙げた。さらに「広島で投げてるところを見たことあるし、何でクビになったんかなと思ってた。真っすぐもズドンと来るし、スライダーのキレもいい。元々いいとは聞いていたけど、ここまでいいとは思わなかった」と大絶賛の言葉を並べた。

 藤井は岡山県出身の25歳。おかやま山陽高校から2014年ドラフト4位で広島カープに入団した。2018年にはプロ初勝利をマークし、2019年にはウエスタン・リーグで26試合に登板して防御率0.33という驚異の成績を残した実績がある。

 しかし、2020年は一軍登板なしに終わり同年オフにカープを自由契約となった。NPB再入団での現役続行を目指し、昨年は四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに在籍。公式戦22試合登板、11勝3敗1ホールド、防御率1.12と圧倒的な成績を残した。

 また、昨年5月9日にタマホーム スタジアム筑後で行われたホークス三軍との定期交流戦では10奪三振をマークしたうえでのノーヒットノーランを達成。それらが評価されて、昨年12月にホークスへの育成枠での入団を果たしていた。

「広島カープでプレーしていた時は、結果にこだわりすぎて自分の投球ができなかった。一軍で投げる機会があっても、『悪ければ落とされる』と思っていた。今も結果は大事。だけど、そこにとらわれ過ぎず、純粋に野球を楽しもうと思ってマウンドに上がっています。それは昨年、高知に行って、もう一度野球の楽しさや投げる喜びを知ることができました。技術面のプラスもあったと思うけど、気持ちの部分が大きかった」

藤井と中村亮が昇格。高橋純と奥村はB組へ

ともにA組に昇格する中村亮太投手(筆者撮影)
ともにA組に昇格する中村亮太投手(筆者撮影)

 この日の紅白戦は寒風が強く悪条件だったが、「四国の色んな環境の中でやって来たので」と意に介さなかった。今時の若手選手にはない逞しさが感じられた。

 チーム首脳陣も、藤井の好投にすぐさま反応した。

 16日の紅白戦後に、藤井と中村亮太投手の両育成右腕のA組昇格と、高橋純平投手と奥村政稔投手のB組降格を決めた。今キャンプでの“入れ替え”は初めてだ。藤本ホークスのサバイバルレースにも緊張感が増してきた。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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