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【ソフトバンク】開幕後の野手昇格は1人だけ。好調でも一軍に上がれないファーム打者に必要なこと

田尻耕太郎スポーツライター
ファーム2冠王のリチャード内野手でも一軍昇格はまだ(筆者撮影)

 ソフトバンクの二軍が4月に入ってから好調だ。特に今月3日以降の13試合に限れば、10勝3敗で勝率.769の成績になる。

 状況が一変した。開幕からしばらくの若鷹は低空飛行で3月は2勝6敗。昨シーズンまで2連覇したウエスタン・リーグで最下位に沈むスタートとなっていた。

 好成績に転じた要因として挙げられるのは打線の好調だ。3月は8試合で計19得点。1試合平均で2.4点しか取れなかったのが、前述した4月3日以降の13試合は計67得点で1試合平均にして5.2点と倍以上に増えた。

リチャードら好調で、前月から得点力が倍以上に

 得点力アップの象徴として活躍しているのが大砲候補のリチャードだ。4月6日のバファローズ戦(京セラドーム)でようやく今季ウエスタン2号本塁打を放つと、そこから一気に量産態勢に入った。翌日も2試合連続の一発を京セラドームの5階席へと運んでみせた。

 さらに4月10日、11日の広島戦(いずれもタマスタ筑後)でも2試合連発。21日の阪神戦(鳴尾浜)では6号アーチを架けた。この日は3打数3安打1打点3四死球の活躍。ここまでの6本塁打、17打点はウエスタン・リーグの2冠王だ。

 しかし、この日受けた死球の影響で翌22日は欠場し、今日23日のオリックス戦(タマスタ筑後)も欠場する見通しだ。

藤本二軍監督は好調でも厳しい言葉

 藤本博史二軍監督は打線の好調を認めつつも、なぜか笑顔はなかった。

「若い選手たちはまだまだ野球勘が足りていない」というのが不満の原因だった。

「最近の二軍の試合では、五回までは原則ノーサインでやらせるようにしています。制限のない中でしっかり振ってほしいというのもありますが、自分たちで状況を考えながらバッティングをしてほしいという狙いもあります。たとえば、高谷はさすがで、右打ちが必要な場面では狙いに行っているのが分かる。たとえゲッツーになったとしても、意図というものは伝わってくるんです。若い選手たちは打てば嬉しい、三振したら悔しいというところで終わってしまっている」

 そのように話したうえで「今後は逆に初回からずっとサインを出すという試合を作るのも一つの方法かなと考えたりもしています」とした。

 ソフトバンクの一軍も開幕直後の打線はやや低調だったが、このところは上昇気配にあって、それに伴ってチームも浮上していった。パ・リーグの首位をがっちりキープしている。

ノーサインから一転「全部サインデー」も

 まもなく開幕から1カ月。一、二軍の入れ替えを見ると、投手は7人がシーズン途中に出場選手登録(開幕ローテ要員も含みますが)されているが、野手は4月5日に高谷裕亮捕手が抹消されて翌6日に海野隆司捕手が昇格したのみ。わずか1度の入れ替えしかない。これは極端に少ない。

「一軍に上がれば、どんな選手でもサインプレーやチームバッティングが要求される。若い選手たちはそこをもっと磨いていかないといけない」と藤本二軍監督。

 常勝ソフトバンクにおいて、勝つ野球を身につけておかなければ一軍出場どころかベンチに入ることも叶わない。野球の質を高めるべく、若鷹たちはキュッとさらに気を引き締め直して23日からのオリックス3連戦(すべてタマスタ筑後)に臨む。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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