驚異の成績、ホークス柳田悠岐に夢を見る「打率4割」ともう一つの「プロ野球記録」

ファンに夢を見させる活躍。それもスターの証(筆者撮影・今年2月)

 7月のギータはすごかった。

 柳田悠岐らしい豪快なフルスイングから放たれた10日楽天戦の今年最初の有観客試合でのサヨナラ弾や18日オリックス戦の京セラドームの屋根直撃弾も印象深かったが、数字で振り返るとインパクトはさらに強烈になる。

 今季ここまでの成績は全37試合に出場して打率.379はパ・リーグ断トツ首位打者、10本塁打(4位)と26打点(5位)もリーグ上位だ。令和最初の三冠王も射程圏内だと言っていい。

 スタートは決して良くなかった。月間別で見れば、6月は打率.235(10試合で34打数8安打)と低調だった。

 しかし、7月になると急激な上昇曲線を描いた。90打数39安打、月間打率は.433をマークして今季成績を一気に突き上げた。出場した27試合で無安打は5試合のみ。とにかく安定していた。

120試合制で夢ふくらむ打率4割

 となれば、夢見たくなるのが「打率4割」だ。

 プロ野球の長い歴史を紐解いてもその大台をクリアした選手はいない。歴代最高打率は1986年に阪神のランディ・バースが樹立した打率.389だ。あのイチローは2位(2000年、打率.387)と3位(1994年、打率.385)に名を連ねるが、やはり届かなかった。

 積み重ねる成績と違い、「率」の場合は試合数が少ない方が飛びぬけた数字を残せる可能性が高くなる。奇しくも今季は新型コロナウイルスの影響で、本来の143試合制から120試合制の短縮シーズンとなっている。

 また、打率に加えてもう一つ、驚異的な成績を残しているのが出塁率だ。

 7月終了時点のここまで今季.506をマークしている。7月は月間27試合の中で、出塁できなかったのは9日の楽天戦の1試合のみだった。たとえヒットの出ない試合でもフォアボールを選んでいる。四球数は今季37試合で33個(ほかに死球が1つ)だ。

プロ野球史上初の出塁率5割超えへ

 出塁率が現行の計算方式になった1985年以降で、じつはシーズン5割超を達成した選手はいない。歴代最高出塁率は1986年の落合博満が記録した.487となっている。この年は150安打を放ち、104の四死球を得た。

 今年の柳田にとって、プロ野球史上初の出塁率5割超えはあり得ない数字ではない。

 では、柳田本人は現状をどのように見つめているのか。

――好調の要因は?

「集中して打席に立てているのが一番ですかね。でも、まだ30試合を超えたところ。これからシーズンは長いので、また一戦一戦を怪我のないようにやっていくことしか考えていないです」

 ここ数年そうだったが、特に今年の柳田は決まって「自分のスイングをするだけ」という言葉を強調する。何を訊かれても、ほぼ答えは変わらない。

冷静に、集中して

 穏やかな心で――。

 そんな言葉で自分の打撃を表現したのが2017年だった。この年の4月、月間27四球(ほかに死球が2つ)とことごとく勝負を避けられたことで、柳田は打撃の調子を崩したことがあった。それを克服していく中で、この境地に達した。打席では心を乱すことなく、自分のベストスイングをすることだけに集中すればいい。だから、この2020年、柳田は執拗に内角を攻められても、次の外角球をいとも簡単に左翼スタンドに本塁打にしてしまう。

「フォアボールはヒットと一緒だと思ってます。昔は打ちたい、打ちたいと思っていたけど、今の方が冷静にスイングできている。冷静に、集中してやってます。今年はより、それが出来ているかなという感じですかね」

 そんなセリフを聞いてしまえば、夢の打率4割、出塁率5割超への期待が膨らむ一方だ。

「無理っしょ。そんな甘ないです、プロ野球は。怪我をしないことが大事。毎日毎日グラウンドに立って、チームのためになるようにプレーをしたい」

 野暮ったい質問を冷たくあしらうわけではなく、柳田は誠実に応えてくれた。まさに穏やかな心。8月戦線に突入したプロ野球だが、今年の終幕は11月だ。どんな結末が待っているのか、楽しみに秋を待ちたい。