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元米ドラフト1位の鷹・スチュワート。初一軍で収穫の154キロ、課題の5四球

田尻耕太郎スポーツライター
PayPayドームで初登板「筑後より好きなマウンド」(筆者撮影)

松田、本塁打でやっぱり「熱男~!」

 プロ野球は新型コロナウイルス感染拡大の影響のために開幕が延期。本来の開幕日だった3月20日からシーズン開幕を迎えるまで間は、各球団が当初組まれていた日程に原則基づいて(一部変更)、無観客の練習試合で調整していくことになった。

 3月20日、福岡ソフトバンクホークスは千葉ロッテマリーンズを福岡PayPayドームに迎えた。この日から3連戦がすべてデーゲームで行われる。

【3月20日 練習試合 PayPayドーム 無観客】

ロッテ    000100010 2

ソフトバンク 02000200× 4

<投手リレー>

【M】古谷、中村稔、小野、東條、石崎

【H】スチュワートJr.、古谷、渡邉雄、森

<本塁打>

【H】松田 【M】レアード

<スタメン>

【M】8福田秀 D角中 3福田光 4中村 5レアード 9菅野 6藤岡 2佐藤 7岡

【H】4牧原 8佐藤 7中村晃 5松田宣 D長谷川 9上林 3栗原 2甲斐 6高田

無観客のプロ野球はやはり寂しい
無観客のプロ野球はやはり寂しい

<戦評>

 ソフトバンクが“幻の開幕戦”で昨季8勝17敗と苦手にしたロッテに快勝した。

 二回、松田の左越えソロで先制すると、なおも1死二塁とチャンスを作り栗原が適時打を放って追加点を挙げた。六回には上林に2点適時三塁打が飛び出した。一発を放った松田は本塁生還後、ベンチ横で恒例の「熱男~!」を披露した。今月12日に、日本野球機構(NPB)とJリーグが開いた第3回コロナウイルス対策連絡会議において感染症対策として出された意見書に、応援方法のリスク評価が提示され、この「熱男パフォーマンス」についても「感染リスクの高い行為」とされた。それを受けて自粛を表明していたが、この日は無観客の試合で、地元福岡では地上波テレビ局でも生中継をされており、ファンへ元気と野球の楽しさを届けるべく“一時解禁”したようだ。

 先発は来日2年目で“一軍デビュー”となったスチュワートJr,。初回に3四球で満塁のピンチを背負うも無失点で乗り切ると、その後は立ち直った。走者を背負っても落ち着いた投球。失点はレアードに許したソロ本塁打のみだった。

 また、育成枠の渡邉雄も初めて一軍戦で投げた。緊張からか、無死一、二塁とするも3人目の打者をダブルプレーに打ち取った。続く打者に適時打を浴びたが、1回1失点でどうにかまとめてみせた。(了)

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スチュワートがついに一軍登板

 米大リーグがドラフト1位で指名した右腕が一軍マウンドでベールを脱いだ。

 来日2年目を迎えたカーター・スチュワートJr.投手が初めて福岡PayPayドームで登板した。5回3安打1失点。5つの三振を奪った。

 しかし、登板を終えた右腕は渋い表情だった。開口一番「フォアボールが5つあったので」と反省の弁。特に立ち上がりは苦しんだ。3四球で満塁のピンチを背負った。しかし、6番・菅野をこの日最速の154キロで空振り三振を奪い無失点で切り抜けると、その後はまずまず立ち直った。

「初回は緊張していたし、興奮もしていた。でも初回をゼロで乗り切ったことで勢いに乗って、2回、3回と抑えることができたと思います」

 収穫については「良い球を投げられれば、一軍の打者もしっかりアウトに取れることが分かった」と口にしていたが、3四球で満塁のピンチを背負いながら無失点で乗り切った初回の投球にしても、本人は不満げだったが十分な収穫だった。

昨年から確かな成長

 昨年の三軍戦では走者を背負うとナーバスになり、盗塁を決められてはイライラして自滅するシーンが目立った。8月には亜細亜大学を相手に4回6失点でKOされ、9月の巨人3軍戦では5回途中11失点と大炎上した。

 ただ、この日は先頭の福田秀に四球を与え、その後二盗、さらには暴投でピンチを広げた挙句に四球を重ねる立ち上がりだったが、しっかりと本塁生還を許さなかったのだ。

「去年は三軍でまず日本の野球を勉強しました。それをオフやキャンプの練習でもやってきました」

 マウンドさばきは明らかに落ち着き、表情も逞しくなったように映る。

コツコツと、まずは二軍でエースに

 一軍で活躍するには外国人枠の問題があるが、キューバ勢の調整が遅れ気味なところを見れば、スチュワートにチャンスが巡ってくる可能性もゼロとは言い切れない。

「もちろん今年は一軍のマウンドで投げることを目標にしている。だけど、まずは二軍で一番の投手になること。そうすれば一軍に呼んでもらえる」

 コツコツと着実に力をつけた先の未来を見据えた。

 ただ、本人も自覚するように課題は制球力だ。グラブを持つ左手を高く上げる傾向にあるために、全体的にボールが高めに浮いてしまう。投球フォームを調整すれば低めに球を集めやすくなるはずだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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