Yahoo!ニュース

工藤監督56歳誕生日も勝った!5戦全勝に華を添えた周東佑京の驚異の足

田尻耕太郎スポーツライター
撮影は誕生日当日ではないが、バースデー勝利後は同様に笑顔だった(筆者撮影)

恒例の”お立ち台ライブ”

 ソフトバンクの工藤公康監督が5日、56歳の誕生日を迎えた。チームは3連勝で首位固めに入ってきた。最高のタイミングでたくさんの祝福を受け、もうニコニコが止まらない。

 報道陣からは似顔絵と今季スローガンの「奪Sh!」のロゴが大きく書かれたバースデーケーキが贈られた。ロウソクを吹き消して一口頬張った工藤監督は「皆さんの愛情がこもっていて、非常に美味しかったです」と大喜びだった。

 この5月5日は、監督就任以降4戦4勝と好相性だ。

「昨年は武田くんがお立ち台で素晴らしい歌(バースデーソング)を歌ってくれた。柳田くんのサヨナラ本塁打(15年)もありましたね。今日も素晴らしい結果を期待しています」

 その言葉通りの試合展開となった。

 三回、2死走者なしから周東佑京が三塁打を放ち一転してチャンスを作ると、続く今宮健太がタイムリーを放ち1点を奪った。相手に大きなダメージを与える得点だ。四回にはその勢いの差がそのまま出たのか、相手ミスが続出したところをソフトバンク打線が見逃さずに3点を追加。その後も得点を重ね、七回には周東が立て続けに二盗、三盗を成功させて松田宣浩のタイムリーを呼びこんだ。

 工藤監督のバースデーは、就任以来これで5戦5勝となった。戦績と試合内容は以下のとおりだ。

5戦全勝の軌跡――柳田サヨナラ弾、9回逆転も

◆2015年5月5日 ソフトバンク4×―3ロッテ(ヤフオクドーム)

 でっかい夢や希望のようなもの凄い打球が、ライトスタンドの最上段に突き刺さった。柳田悠岐の超特大のサヨナラホームランだ。

 3対3で迎えた延長十一回裏1アウト。「(試合を)決める…、決められたらいいなと思って打席に入りました」。2球目、真ん中から少し内角高め寄りのストレートを持ち前の力一杯のフルスイング「楽勝で入ったと思った。途中で(ポールを)巻くなと思ったので、走らなくてもいいと思った」と打席でじっと白球を見つめたまま。ホームランを確認すると、雄叫びを上げながら悠然とベースを一周した。また、勝ち投手は二保旭。プロ初勝利から2日後に2勝目を手にした。

◆2016年5月5日 ソフトバンク2―1日本ハム(札幌ドーム)

 投手戦の均衡を破ったのは五回表だ。四球で出塁した長谷川勇也を一塁に置いて松田宣浩が先制の2ラン本塁打を放った。

 先発した東浜巨は七回に大谷にソロを浴びたものの、3安打1失点で投げきった。その後はスアレスとサファテが盤石の無安打リレーを見せて逃げ切り勝ちした。

◆2017年5月5日 ソフトバンク3-2ロッテ(ZOZOマリン)

 見事な逆転勝ちだった。0対2で迎えた九回表、先頭の4番内川聖一が四球を選んで出塁すると、5番デスパイネが同点ホームラン。さらに当時売出し中だった8番上林誠知がソロ本塁打を放って土壇場で試合をひっくり返した。

 先発して8回2失点と粘った中田賢一も嬉しい白星で報われた。

◆2018年5月5日 ソフトバンク3-0ロッテ(ヤフオクドーム)

 武田翔太が見事な1安打ピッチングで、シーズン1勝目を完封勝利で飾った。「調整の中で、投げ方を一カ所だけ修正して臨みました」。それは右腕の使い方だった。本来は外旋させて投げる投手が多い中、この日の武田投手はあえて内側に巻き込むように腕を振り抜いた。「投げミスになった時、前の投げ方だとボールが抜けてしまう。だけど今日の投げ方ならば低めに引っ掻いて叩きつけるようなボールになる。とにかく低めに投げようと心掛けていた」。スライダーが切れ味を増し、ストレートは最速151キロをマークした。

「ようやく今シーズンが始まりましたね」。工藤公康監督の誕生日ということで、お立ち台ではハッピーバースデーを美声で歌い上げ、「面白かったです」と笑顔を見せた。

◆2019年5月5日 ソフトバンク7―2オリックス(ヤフオクドーム)

 自慢の俊足で勝利に貢献した周東は盗塁成功率ここまで10割だ。19試合出場で早くも8個のハイペース。しかし、オープン戦では3盗塁死で成功はゼロで180度の改善だ。「今は余裕がある。走ったらセーフだろみたいな。あとは本多コーチと話もする。投手の特徴や配球などを聞いている」。本多雄一コーチもまた「積極的に走っている」とその姿勢を高く評価した。

 また、後ろを打つ3番打者の今宮の存在も大きいという。「今宮さんが好調だから、僕が走者でも直球一辺倒になりづらいし、バッテリーの気持ちも打者に向いてくれる」。工藤監督からの信頼も日に日に高まっており、故障者続出でも首位を快走する強いソフトバンクの象徴的存在になっている。

現役時代は苦い思い出も、今は幸せなバースデー

 現役時代は工藤監督いわく「1度だけ藤井寺の近鉄戦で投げたけど、ノックアウトされました。誰に打たれたか覚えていないくらい、全員に打たれた」と苦笑いした。

 しかし、今は手塩にかけて育てている若鷹たちがグラウンドで躍動し、毎年白星をプレゼントしてくれる。

 また、本拠地勝利試合のヒーローインタビューではお立ち台に立った選手がバースデーソングを披露するのが自然と通例となった。初お立ち台だった周東にお役が回ってきて、何とか歌い上げたが「メチャクチャ緊張しました」と顔を真っ赤にしていた。

初出の記事に加筆修正。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

田尻耕太郎の最近の記事