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奇跡の投手?ソフトバンク川原弘之「痛みも迷いもなくなった」

田尻耕太郎スポーツライター
投球練習をする川原(筆者撮影)

150キロ超も復活か

 気持ちよさそうに今年初めて打者に向かって投げ込んだ。

 ソフトバンクの川原弘之投手が7日、打撃投手に登板した。「自分の感覚では130キロ台前半だと思っていた」というが、実際は140キロを超えていた。もともと防球ネットがあると投げづらい体のタイプ。さらに午前中に過酷なランニングメニューを行っていたことを考慮すれば、さらに仕上がっていけば150キロ超をマークする可能性はかなり高そうだ。取材に応じる表情も笑顔が多い。

 今年、プロ10年目になる。現在の背番号は122だが、もともとは今宮健太に次ぐドラフト2位で入団した選手だった。とにかく滅法球が速く、3年目の12年には最速158キロをマークした。二軍戦だったために参考記録扱いだが、今年メジャーに戦いの場を移した菊池雄星と並ぶ日本人左腕最速記録である。

通算3試合、5年間1軍なしでも10年目

今年1月は2年連続で「鴻江スポーツアカデミー」の合宿に参加。東浜(一番左)や千賀(左から3人目)らと高め合った(筆者撮影)
今年1月は2年連続で「鴻江スポーツアカデミー」の合宿に参加。東浜(一番左)や千賀(左から3人目)らと高め合った(筆者撮影)

 同年に一軍デビューも飾った。しかし、昨年まで9年間のプロ野球生活で、一軍通算登板は3試合しかない。‘13年を最後に、丸5シーズンも一軍に上がっていない。その間に左肩にも左肘にもメスを入れた。‘15年オフから育成選手契約に移行もされた。

 しかし、球団は川原と毎年契約を更新してきた。

 5年間も一軍から遠ざかり、通算でも3試合しか投げていないのに、だ。

 奇跡の投手といっても過言ではない。

 昨年は2軍公式戦でチーム最多の34試合に登板した。しかも3勝2敗5セーブ、防御率1.75の好成績だ。支配下枠が埋まっていたこともあり、悲願の“復帰”はならなかったが、じつは2軍公式戦で投げたのも昨年が4シーズンぶりだった。

残り5枠に入り込め

 奇跡的な上昇曲線を描き始めている。

 今年、笑顔が多い川原。昨年の今頃は「肩の痛みがあったり、投球フォームに迷いがあった」。しかし、今年は全く問題ない。

「打撃投手ではボールのなり方が課題でした。全部同じ。手先で投げた球が引っ掛かる。でも、それ以外は良かったと思います」

 その後“復習”のために向かったブルペンでは、抜群のボールを投げ込んでいた。

「自分が求めるものは何か、分かっている。再現性を高めていかないといけない」

 コメントの内容も昨年とは全く違う。充実度が溢れている。

 現在、ソフトバンクの支配下選手は65名。残り5枠も空いている。

「キャンプ中にA組の紅白戦に呼んでもらえるよう、いいアピールをしたい」

 川原が迎える10年目のシーズン。今あるのは溢れんばかりの期待感のみだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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