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奪三振率16.20! ホークス20歳笠谷が、杉内フォーム&和田の指導で覚醒だ

田尻耕太郎スポーツライター
奪三振ショーを演じるソフトバンクの笠谷

7月28日、ソフトバンクはウエスタン・リーグで広島と対戦した。

【7月28日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 2,325人】

広島     130000000 4

ソフトバンク 01002200× 5

<バッテリー>

【C】高橋樹、●藤井(1勝1敗)、江草、ブレイシア――船越

【H】大隣、小澤、○島袋(1勝1敗)、笠谷、S寺原(3セーブ)――斐紹

<本塁打>

【C】堂林6号

<戦評>

首位広島を追いかけるソフトバンクが逆転勝ち。初回に大隣が堂林にソロを浴び、2回にも土生、船越の下位打線に痛打された。大隣は4回4失点だった。

試合前のゲーム差は3。敗れれば6連覇危機となるソフトバンクは中盤に打線が奮起した。2回に川瀬のタイムリーで1点を返すと、5回には本多と吉村の連続タイムリーで3対4に。そして6回、塚田の同点タイムリーと三森の内野安打の間の相手ミスで逆転に成功した。

ソフトバンクはリリーフ陣が無失点リレー。抑えの寺原は150キロ級の剛速球を連発した。ソフトバンクと広島のゲーム差はこれで「2」となった。(了)

ホークス笠谷、極上の直球で奪三振ショー

圧巻の奪三振ショーだった。

ソフトバンクの4番手で登板した笠谷俊介のピッチングが、あまりに見事だった。

7回からマウンドに上がり、最初の打者は広島のベテラン小窪。臆することなく直球を投げ込む真っ向勝負を演じて、決め球は146キロをズドン。見逃し三振でスタートを切ると、ペーニャを143キロで空振り三振、高橋大をスライダーで空振り三振に斬って三者連続三振でイニングを終えた。

続く8回は先頭に変化球を安打されるも、その走者を牽制でアウト。その後船越を143キロで見逃し三振、庄司からは146キロで空振り三振を奪ってみせた。

前回マウンドで自己最速149キロ

堂々たるマウンドさばき。「緊張していましたよ」という言葉が嘘のようだ。

フレッシュ球宴明けの後半戦はこれが3度目の登板。7月19日のオリックス戦は1回2奪三振、7月23日の阪神戦は1回3奪三振。今季ここまで2軍公式戦はまだ8試合しか登板していないが、8回1/3を投げて計15奪三振をマークしている。1試合に完投した場合に何個三振を奪うかを表す指標である奪三振率で換算すれば「16.20」という驚異的な数値をたたき出す。

「甲子園で投げた阪神戦で149キロをマークしました。これが自己最速です」

杉内を真似て、今年1月からは和田を師事

無駄のないきれいなフォームで投げる。入団当初はノーワインドアップで投げていたが、1年目夏から走者がいない場面でもセットポジションで投げるようになった。「杉内(俊哉=巨人)さんのマネです」。投球前に左手を高く上げて脱力させるのも、杉内を参考にしたという。

昨年は左肘の故障で1年を棒に振った。3年目に向けて、今年1月は和田毅に志願して筑後で自主トレを一緒に行った。「ウォーミングアップだけで吐きそうになった」というハードなメニュー。さらに和田は自身の理論を惜しみなく笠谷に伝えた。股関節の動かし方など、笠谷は真似しようにもなかなか出来なかった。和田は「すぐには出来ないですよ」と笑いつつ、「でも、この若さでこういうことを知って、取り組もうとするのは大切なこと」と優しく目を細めた。

「いいフォームになったから球も良くなった。間違いなく和田さんのおかげです」

140キロ台中盤をコンスタントに叩きだす直球は、低めがグンと伸びる。一軍でもなかなかお目にかかれない上等の球質だ。

今季も春先は肘を痛めてリハビリ組に回るなどしたが、さらに体を鍛えて、故障にしくい投球フォームを身につけていけば、将来はとんでもない投手に変貌する可能性は十分にある。まだ20歳。楽しみな逸材だ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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