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確定申告の時期だから?「税務署からのお知らせ」の偽メールが再び クリックすると簡単入力させる狙いも

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者のもとに届いた偽メール・筆者撮影/修正

毎日のように、詐欺につながる色々な偽メールが届いています。

このところ「警察庁について」と題したメールがよくきますが、「私たちは警視庁です。あなたのお子様は窃盗容疑で逮捕され、被害者に215万円の賠償金を支払う必要があります。至急下記口座にお振込下さい」という内容で、振り込み先の銀行口座が記されています。

しかしこのメールでは、警察庁と警視庁をごっちゃにして送ってきているので、これが詐欺につながる偽メールということがすぐにわかります。

確定申告の時期 「国税庁」をかたったメールには要注意

特に、この時期に気をつけたいのが「国税庁」をかたったメールです。先日も女性から「国税庁」の偽メールに、だまされかけたという報告がありました。
どんな内容の偽サイトだったのか。残念なことにスクリーンショットを撮っていなかったので、どのようなパターンで情報をだましとろうとしているのかわからず、がっかりとしていると、翌日、私のところにも「国税庁」のメールがきました。

このメールアドレスには、本物の国税庁からのお知らせも届きますし、ちょうど確定申告を行った時期で、若干ですが還付金もある予定なので、つい中身を読んでしまいました。

時期的にも絶妙で、私のように内容を読んでしまった方はいると思います。

注意喚起のために、どのような形で私たちの個人情報をとろうとするのかを、クリックして調べてみました。これまでの国税庁の偽サイトのパターンに比べて、簡単に入力させるなど、巧妙にできている点もみえてきました。

【宛名の登録確認及び秘密の質問等の登録に関するお知らせ】

筆者のところにきたのは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)からで、本物の国税庁からのメールと比べてみると、差出人の名称は同じですが、メールアドレスがまったく違いますので、偽物であることはわかります。

タイトルは「税務署からのお知らせ【宛名の登録確認及び秘密の質問等の登録に関するお知らせ】」となっています。

「国税還付金の電子発行を開始しました。e-Taxをご利用いただきありがとうございます。令和6年度の税制改正等のうち、以下の申告手続について、追加及び修正を行い。税制改正に伴い、税金の状況をわかりやすくするため。E-Tax の個人納税アカウントを持つことを全員に義務付けています。このメール受信後24時間以内に下記の専用リンクからE-taxアカウントをご登録ください」という内容になっています。

さらに注意事項もあり「以下のリンクから案内に従ってE-tax個人アカウントの登録を行ってください。・案内メールの有効期限は令和6年03月11日 21:25となりますので、有効期限内に確認を行ってください」とすぐに手続きを行うようにとの文言が続きます。

本物との違いは?

本物の国税庁からのメールには私の名前が書かれており、偽メールには書かれていません。

また本物のメールには「e-Taxをご利用いただきありがとうございます。ご提出された還付申告の処理状況について、ご連絡します。詳細については、還付金処理状況をご確認ください」となっています。

ただし、「e-Taxの利用可能時間は、e-Taxホームページでご確認してください。 ⇒ https://w*********** ※本メールアドレスは送信専用のため、返信を受け付けておりません。ご了承ください。発行元:国税庁 Copyright (C) NATIONAL TAX AGENCY ALL Rights Reserved.」となっており、この部分は、リンク先が違うだけで、かなり似た文面になっていますので、本物のメールと思ってアクセスする方はいるかと思います。

偽サイトにアクセスすると・・・

偽メールのリンクをクリックしてみます。

すると「e-Tax(個人の方用) 新規」「ご利用になる前に」というタイトルが出てきて「こちらは、e-Tax を初めて利用される方が、利用者識別番号を取得するための手続きです。 下記の同意するボタンをクリックして手続きを始めてください」となっています。
しかも「注意事項」として「既にe-Tax をご利用の方で、利用者識別番号や暗証番号が分からない場合は、変更等届出の手続きとなります。 該当する方は『変更等届出へ』を押してください」とあります。確定申告をした人もまだしていない人もだまそうしていることがうかがえます。

筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正
筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正

それでは、「同意」のボタンを押してみます。

次の画面では「e-Tax(個人の方用) 新規」とあり、氏名や住所等の入力をするように促します。郵便番号から自動で都道府県、市区町村が入力できるようになっていて、簡単に個人情報を詐取しやすくする作りになっています。

すべての個人情報を入力して「次へ」のボタンを押してみます。

出てきたのは「暗証番号等の入力」の画面です。暗証番号を使い回している方が多いので、それを狙って情報を得ようとしていると思われます。

筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正
筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正

秘密の質問をクリックすると

非常に興味深いのは暗証番号を忘れた時の再設定のためと称して「秘密の質問と答え」の入力項目が「必須」になっている点です。

筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正
筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正

秘密の質問をクリックすると、「ペットの名前」や「親の旧姓」などの質問の選択画面が出てきます。正規サイトで、こうした画面に入力したことがあるかと思いますが、事細かに、私たちの個人情報を収集しようとしていることが分かります。

筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正
筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正

そこで、「ペットの名前」に「tanuki」といれて、「次へ」のボタンを押しました。

すると「e-Taxで納付情報登録 入力」という画面が出てきて、「クレジットカード納付の手続」をするように促します。

筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正
筆者がアクセスした偽サイト・筆者撮影/修正

「クレジットカード納付とは、インターネット上でのクレジットカード支払の機能を利用して、 国税を納める手続きの一種です」などと、丁寧に説明文までついています。やはりこれまでの偽サイトと同じように、私たちのクレジットカード情報を入手することが目的と考えられます。

それにしても、ワンタッチで住所が出るようにしたり、秘密の質問も自動的に出てきて入力させるなど、偽サイトは時短で操作できる便利な機能を使って私たちを罠にはめようとしていることがわかります。

政治の世界の裏金問題も影響?

うがった見方をすれば、今、政治の世界では裏金問題があり、そのお金を受け取っていた議員らが納税しないならば「確定申告をボイコットする」という書き込みも、SNS上で拡散しているといいますが、今、納税に関しては多くの人が関心をもっているところも狙われているかもしれません。

そもそも詐欺は時流にのってだまそうとするものですので、充分に考えられます。確定申告をした人たちも、これからしようとしている人、さらには確定申告のボイコットを心に決めている人たちも、間隙をついてやってくる、詐欺の魔の手には注意する必要があります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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