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鶴瓶さんがゲストの「徹子の部屋」まで悪用 Meta社の声明後も、著名人をかたる詐欺広告は止まらない

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

毎日のように、私のもとには有名人になりすまして投資詐欺に誘導する広告がフェイスブックに出てきますが、先日は鶴瓶さんをゲストに迎えて、黒柳徹子さんと対談する「徹子の部屋」(テレビ朝日)を悪用するものまで登場しています。

前澤友作氏らが、著名人になりすます広告による投資詐欺被害が多発する状況のなか、SNSのプラットフォーム側の広告規制を訴えているのに、いまだに充分な対策がなされずに、悪質な広告が横行している状況です。
この状況が長く続いているために、新たに東京都内の70代男性と、栃木県の60代女性の1億円以上の被害も4月16日に報道されています。
「SNS型投資詐欺」1億円超の被害相次ぐ(ABEMA TIMES)
どれだけの被害が起こり続ければ、投資詐欺サイトに誘導する広告はなくなるのでしょうか。今や、著名人だけでなく、新聞社、テレビ局の画像も悪用されています。

鶴瓶さんと読売新聞をかたる広告

先日、フェイスブック上に出てきた鶴瓶さんになりすました広告は、一見するとニュースなのかと思ってしまうものでした。

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タイトルは「笑福亭鶴瓶の悲劇の結末!今朝のニュースは日本人全員に衝撃を与えました!数千人がATMに群がる」となっています。「詳しくはこちら」をクリックすると、読売新聞に似せた作りのページに飛びます。

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サイトにアクセスすると、日銀が鶴瓶さんを提訴?

「笑福亭鶴瓶選手の生放送での発言で日銀が提訴」との表題で続く文章は長いので、かいつまんで読んでみます。

「放送中に衝撃的な事実が明らかになり、笑福亭鶴瓶はそれを後悔しました。しかし、それは手遅れだった。笑福亭鶴瓶が今週の『徹子の部屋』の生放送中に誤って秘密を暴露したことでスキャンダルが勃発した。笑福亭鶴瓶選手の "うっかり"発言は、大勢の視聴者の注目を集め、多くのメッセージが寄せられ始めました。その結果、日銀から直ちに番組の中断を要求される事態となりました」とあり、「徹子の部屋」のディレクターに協力を依頼して番組の録画データを入手したと続きます。

原文のまま記載しましたが、ここで詐欺につながる広告と気づけるポイントがあります。それは日本語のおかしさです。

すでに気づいた方もいたかもしれませんが、「笑福亭鶴瓶選手」となっています。なぜスポーツ選手でもない鶴瓶さんが「選手」なのかはわかりませんが、その後の文章にもたびたび、この言葉が出てきます。気づきにくいところかもしれませんが、こうした日本語のおかしさが出てくれば、詐欺に遭うかもしれないと警戒してください。

「徹子の部屋」まで悪用する

このサイトでは、国民的な長寿番組である「徹子の部屋」まで悪用しています。

2人が番組でかわしたという(架空の)やりとりが詳細に載っています。

「笑福亭鶴瓶:一つ言わせてもらいますが、お金持ちになるために働く必要はないんです。それさえ分かれば、きっと裕福になれますよ。黒柳徹子:もし良かったら、その方法を教えてくれませんか?」

そして、鶴瓶さんは自身のスマホを取り出し、アプリを開いて、それを黒柳さんに渡します。

「笑福亭鶴瓶::凄くないですか?たった36600円かけただけなのに、このプログラムは1日に何万円も稼いでくれるし、しかも寝ている間にも動いてくれるんです。」

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「黒柳徹子:生放送なので、もう隠しても無駄です。むしろ一般的な日本人に知ってもらったほうが良いのかも知れませんね。笑福亭鶴瓶:そうですね、もう僕の手に負えません。まぁ、僕がこのプラットフォームを使い始めてからもう3年になります。皆さんがすることは、このリンクを使って登録して、プラットフォームマネージャからの呼び出しを待ち、36600円の入金をすることだけです」などと続きます。

この後は、鶴瓶さんが(投資をするために)スマホを操作して、20分ほどがたって黒柳さんが残高を確認すると「信じられない!5870円稼いで、残高が41870円になりました!」などと叫ぶ会話が続きます。

2人のやりとりは、うまく投資への興味を引くような話の流れになっており、AIを駆使して文章の添削などをしていることがうかがわれます。最後は、番組終了後に「日銀から電話があり、生放送を中止するよう要求されました」という話で締めくくられています。

LINEを使わず、直接に投資サイトに登録させる手口

この先には何がまっているのでしょうか。
サイトには「今すぐあなたの人生を変えましょう!」とあり、ここをクリックすると、名前とメールアドレス、電話番号を入れるようになっていました。これを入力すれば投資サイトに登録できるようになっています。

つまり、この広告からはなりすました著名人とLINEで友達になって、投資グループに誘導されるのではなく、直接に投資サイトに登録させる形になっています。様々な詐欺のバージョンがあることがわかります。

しばらくすると、私のメールアドレスに「もう少しで完了です。ここからサインアップを完了してください」が届きます。というのも、メールアドレスだけ入れて、電話番号を入れなかったので、こうしたものが届いたようです。

メールのURLにアクセスしてみると、「BitS******」などというサイトが出てきて、サインアップを完了するように促します。

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この投資サイトでの出資は、最低36000円からできるとあり、登録後は専属の個人マネージャーがついて、手伝ってくれるとあります。
「BitS******」を利用した人物のレビューもあり「取引などの経験もなかったし初めて取引をし始めた際はすごく不安だった。だけど必要なことは基本を理解し1日平均15分程度アカウントへ時間を費やすだけで利益がうまれた」などと書かれています。

しかし、著名人の写真や番組を悪用して、架空の話を出して投資サイトに誘導していますので、詐欺につながることはほぼ間違いありません。何より、この投資サイトの運営会社がどこで、どの国の住所にあり、電話番号などの連絡先の記載もありません。国内の人たちに向けて勧誘する場合には、海外の企業であっても金融庁への登録が必要ですが、運営会社名やその住所、連絡先がわからないのでは、同庁への確認もできません。何より金銭的トラブルになった時に、相手方の所在が不明では返金交渉のしようもありません。こうしたサイトへは、絶対に個人情報を入力せず、投資は行わないようにしてください。

Meta社の声明発表後も詐欺に誘導する著名人のなりすまし広告は止まらない

4月16日に、フェイスブックやインスタグラムを運営するMeta社は著名人になりすます投資詐欺につながる広告についての声明を出していますが、今日も鶴瓶さんと新聞社をかたる広告は表示されていますし、その他の著名人になりすました広告もたくさん出ています。

この状況をMeta社は本当に深刻にとらえているのでしょうか。すでに日本では社会問題となるほどの詐欺被害が出て、今も誰かが金銭的被害を受ける可能性があるわけです。一刻も早くこの状況をなくすための実効的な取り組みをしなければなりません。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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