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そのキャッシュレス決済は大丈夫? 還付金詐欺のネットバージョンが出現か 「お金を戻します」詐欺が横行

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

今、ネット通販などでキャッシュレス決済をしようとしている方、ちょっと待ってください。相手の身元の確認はとれていますか?

今や、多くの方がキャッシュレス決済を利用しています。そうしたなかで、詐欺の振り込み先にもネット専用銀行が多く使われています。昔は外国人名義の銀行口座にお金を振り込ませていましたが、最近は日本人名義の口座も目立ちます。

こうしたなか、キャッシュレス詐欺が横行していますが、キーワードは「お金を戻します」です。

狙われる年齢は幅広く、少額から高額までの被害と様々です。

しかも間をあけずに、だまされた人を二度、だまそうとする手口も出てきており、これは還付金詐欺のネットバージョンといえるもので、あらゆる世代が注意する必要があります。

高校生からの被害報告

「お金が戻ってこないのですが、詐欺でしょうか」

9月初めに、川田さん(仮名・10代女性)から連絡がありました。

彼女は「〇〇ペイ」という公式ロゴを使ったアカウントをみているなかで、「〇〇ペイの倍増をしています。100ペイから受け付けております」と書かれた内容に興味をもち、ダイレクトメールを送りました。

相手からの「倍増しますか?」の問いかけに、川田さんは「詐欺ではないなら」と応じます。

「詐欺ではありません。(キャッシュレス決済の)実績を増やしたいだけなので、手伝ってほしい」といわれます。そして振り込み先のアドレスが示されます。

川田さんは、その言葉を信じて700円ほどを送ります。しかし一向に相手から連絡がなく、被害にあったと気づきますが、すぐにアカウントは消えてしまいます。

少額をだまし取る 塵も積れば山となる 現代のネット詐欺ならでは手口

この詐欺の巧妙な点は「お金を倍にして戻します」といい、わずか2、3通のメールのやりとりだけで、約700円を手にしているところです。少額ゆえに、警察への相談はもちろんのこと、周りの誰にもいえずに終わる傾向があります。後に、被害女性は高校生だったとわかりましたが、やはり親にもいえない状況です。

彼女は、他にも被害に遭っている人がいるかもしれないと思い、被害の声を寄せてくれました。これは大事なことです。おそらく、この少額詐欺は氷山の一角と考えられ、すでに相当数、横行しているのではないかと思います。

詐欺犯は、多数の正規のロゴを利用してのアカウントを作っているでしょうから、この手口にだまされた人が1000人いれば、70万円の稼ぎとなります。1万人いれば、700万円となります。

少額、短時間で稼ぐ。塵も積もれば山となるの手法で、現代のネット詐欺ならでは手口といえるのです。

「○○ペイで返金します」の新手の詐欺も登場

国民生活センターからも「○○ペイで返金します」という、新手の詐欺への注意を呼びかけられています。こちらも「お金を戻します」の手口です。

今年9月、50代男性は、ネット通販で約7000円のアクセサリーの注文をして、銀行にお金を振込みます。その後、業者から「在庫が欠品しているため、注文をキャンセルします」というメールが届き、お金の払い戻しは「○○ペイで行う」といわれます。

手続きは、LINEで行うとして、友達登録をするようにいわれます。そしてビデオ通話で指示をされる通りに、○○ペイに数字を言われて入力しました。相手からは「(手続きに)失敗している」と何度も言われ、男性が複数回、操作した結果、約10万円を送金していることが分かったということです。

別の事例では、外国人と思われる男性からの電話連絡があったとのことで、相手は外国人で、LINEに誘導してお金をだまし取るところから、海外の詐欺グループの存在が浮かび上がってきます。

LINEに誘導、カスタマー、サポートセンターとのつながりに注意

今、ロマンス詐欺、偽投資詐欺を仕掛けてくる、東南アジアを拠点にした詐欺グループは多くあり、組織だっての詐欺を行っています。その時、使われるのは、LINEで友達登録したサポートセンターやカスタマーセンターにつながらせて、その人物とのやりとりで、お金をだましとろうとしてきます。

今回の返金を装う詐欺も、こうしたカスタマーセンターやサポートセンターを名乗る人物のやりとりになると考えられます。被害に遭った場合、相手が海外組織ということもあり、お金を取り戻すのは極めて難しいので、こうした手口を知り、被害に遭わないことが何より大事になってきます。

還付金詐欺のネット詐欺バージョンといえる手口

返金してもらうつもりが、逆に送金させられてしまっています。

これは、払い過ぎた保険料を戻してもらうという嘘の電話を受けて、その手続きのために訪れたATMで、相手(詐欺犯)のいうままにタッチパネルを操作して逆にお金を送金させられてしまう「還付金詐欺」のネット詐欺バージョンといえるものです。

還付金詐欺では高齢者が被害に遭いがちですが、この返金詐欺ではあらゆる年代が被害に遭う可能性があります。

だまされた人は、二度だまされる

この詐欺のきっかけには、アクセサリーだけでなく、美容商品やパソコン関連商品などを購入した後に、被害に遭うこともあります。

最初に、商品を送らない詐欺にひっかかった時の被害が1万円に満たないものであっても、二度目の詐欺の手口に遭うと、何度も繰り返して送金の操作を行わされてしまうために、数十倍(数十万円)の被害に遭うこともあります。

「だまされた人は、二度だまされる」のは、詐欺の世界での常識ですので、充分な警戒が必要です。

いずれにしても、最初の高校生の被害は「倍増してお金を戻す」であり、国民生活センターの50代の被害事例では「購入したお金を戻す」です。

ネットを使うあらゆる世代が、「お金を戻す」の手口で、詐欺グループに狙われています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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