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旧統一教会の反論会見により、財産保全の必要性が裏付けられたとの弁護士の見解 与野党で財産保全の流れに

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影

10月17日、立憲民主党を中心とする国対ヒアリングが開かれました。

同党の山井和則議員からは「立憲民主党としては、10月20日に財産保全の特別措置法案を提出して与野党の協議を呼び掛けたいと思います」と話します。

16日に行われた、解散命令請求を受けての旧統一教会の反論会見について、弁護士、被害者らから見解が話されました。

旧統一教会の反論会見により、財産保全の必要性が裏付けられたとの見解

全国統一教会被害対策弁護団の阿部克臣弁護士は「従前通り、被害者への謝罪や反省の言葉はなく、教団の正当性を主張する場でした。(教団側の)弁護士なりの解釈を展開するということで、統一教会は被害者に真摯に向き合って、反省や謝罪していくことがないということがわかりました」と話します。

さらに財産保全の必要性を強く感じたといいます、

「会見では、海外宣教援助費が出てきました。宗教活動でお金を使うことは、目的の範囲内ということをいっておりました。そういう名目で(今後)海外に送金していくつもりなんだと、改めてわかりました。解散命令請求をすみやかに進めて頂くとともに、財産保全の必要があることが、昨日の会見からも裏付けられたと思います」

元妻が1億円以上の献金をしたことで被害にあっている橋田達夫さんも「憤りそのものでしかありません。まったく謝罪の意思がない。自分たちの意見を聞いてくださいばっかりでした。被害の起きている現場をみてほしい」と訴えます。

「正直、びっくりしませんでした」と元2世信者

母親が現役の信者である、Vチューバーのデビルさん(旧統一教会の元2世信者)は、旧統一教会の記者会見をみて「正直、びっくりしませんでした」といいます。

その理由について「いつも通り過ぎて。うちの母(現信者)もそうですが会話にならない状態が続いている感じでした。これまで信者がやっていることを、国に対してもやっていて、(会見で)マウント(威圧)もしますし、ああいつもの教会だなと、懐かしく感じました」と一歩引いた目線で話します。

今回、初めてヒアリングに参加したB男さん(仮名・40代・元2世信者)は会見について「教団によって生じた被害を『被害』として認めていないように感じる」と話します。そして、これまで2世信者として置かれた状況を話します。

「私は小学生の時に両親とともに入信をしました。2世信者として信仰教育を受けて、20代には教団活動に従事してきました。教祖の死後、教団による終わらない献金要請などに疑問を持ち、信者が非常に抑圧されて経済的に困窮しているのを目の当たりにして、信仰を捨てるに至りました」

金銭的被害については、両親は1億円以上を献金しており、3000万円の献金をした時に受け取ったという『聖本』をみせます。

筆者撮影
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「これは、3000万円の経典ですが、どれほどの思いで(信者は)献金をしてきたことでしょうか。しかしそれを受け取った教祖や教団幹部は、(その心を)土足で踏みにじり続けています。無理して献金を捧げた信者であればあるほど、家族の離散や自死・経済的困窮など悲惨な状況にあります。統一教会がK(献金)摂理として行ってきたことは、宗教の名を借りた集金事業であると断言します。日本の教団が存在する目的は『世界本部(韓国)へ送金するためにある』といっても過言ではありません。解散命令請求を受けた宗教団体が、逃げ得になったとすればあってはならないこと」と財産保全の特別措置法の制定を強く求めます。

噛み合わない会話、信者を持つ家族の苦悩

デビルさんからは、安倍元首相銃撃事件の発生前に、信者である母親との多額の献金をしたことについての激しい会話のやりとりが流されました。

一部抜粋します。

「(献金額は)幾らだったのか!」と聞く娘に「それはあなたにいうことじゃない」と母は答えません。

「お金を返してくれるの?」と聞くと、母は「裁判すれば返してくれるんじゃない」とあしらうように話します。

「じゃお母さん(裁判)やるのか?」と聞くも「やらないよ」と答えます。

「なんでやらないの!」

「私は間違ったことしてないと思ってる」

「何が間違ってないの」

「それは、自分は今も生きてるし、みんなもだから」とよくわからない答えを返します。娘さんが「それは信仰してない人だって生きてる」と答えると、「そうだね。うん」といいます。

さらに「私たちが生きれなく(生活できなく)なってもいいの。私たちが生きれなくなっても不幸になってもいいわけ。お母さんの犠牲がもとじゃないか」というと「うん。そうだよ」と悪びれることもなく答えます。こうしたやりとりが5分ほど続きました。

デビルさんは「家族が不幸になっている原因について、怒り狂って問いただしても平然としています。父の稼ぎはほぼすべて、母は献金してきました。私が入れていた生活費で暮らしていたんですけれども、記憶にないようです。どんな風に話をしても、音楽でも聴いているように流される反応です。信者の思考が少しでもわかってもらえればと思います」と話します。

これは、デビルさんに限ったことではありません。信者を持つ多くの家族が、聞いた質問に対して、答えを誤魔化されたり、ずらされたり、真摯に相手に向き合わない、信者本人との噛み合わない言葉のやりとりに、多くの家族が怒り、悩み、涙を流していると思います。

教団では「人情より、天情を優先する」ように教えられています。信者らは、サタン側である家族の言葉に心を奪われないように、無意識のうちにこうした言動をしています。今後、信者と話す家族は、心を通じ合わせようとしない状況に対しても粘り強く向き合っていかなければならないのです。

里親制度とは?

またデビルさんは「最近の(世界平和統一)家庭連合(旧統一教会)は、日本の活動を縮小する準備をしていて、国連NGOの(世界平和)女性連合を強化し、日本の資金を使って海外宣教に力を入れていくことを感じています」といいます。

その集金方法として「慈善事業のフリをしたクラウドファンディングで、一般人からお金を募っているのをX(旧Twitter)で見かけました。他にもアフリカの国名の〇〇〇〇ファミリーという名前で、年間4万円で里親になれると寄付を募っていました。うちの母には、別な国名での里親募集で、金額は年間1万円を超えるものがありました。ここには、家庭連合の名前は一切出てきませんので、わかりません。このように、あらゆる事で正体を隠して金を集めては、簡単に海外へ流してしまうのです。先回りして手を打つことが得意な統一教会です。国外への送金をさせないためにも、財産保全の特措法は、急務であると強く感じます」と話します。

ジャーナリストの鈴木エイト氏は、デビルさんの話を補足します。

「里親制度は、昔から世界平和女性連合を通じてやっています。一見いいことをやっているようにみえますが、ギニアビサウの例ですけれども、私立学校を運営して、実は営利事業なんです。高額な学費を取る。そもそも公立の学校は学費が無料なので、里親制度を通じて海外で教団系のNGOが行っている営利事業への支援を募っており、欺瞞性があります」

文化庁としては、独自の制限は難しい実情

同党の柚木道義議員からは「私も会見をみて、海外宣教援助費などと明示して、宗教団体の目的通りに使っているといわれたのは、正当化の一つの理由としていっているのではないかと受け止めました。我々も財産保全法を超党派で成立できるように全力を尽くしますが、その間にどんどん海外宣教援助費といった理由で持ち出されて、金庫がからっぽになり返金できないとなると、これでは意味がない。何とか立法までの期間、旧統一教会の資産隠匿、散逸を防ぐ手立てをお願いできませんか?」との質問をします。

文化庁の担当者は「財産権は憲法上の権利でございまして、行政府の恣意的な運用でお金を抑えるとか、独自の制限をすることは難しい」と答えます。

続けて「戦時中までの国の宗教への弾圧(の歴史)を踏まえて宗教法人を鑑みれば、行政の役割は極めて抑制的、限定的であるべきで、その中で解散命令も出ていないというところで、我々文化庁が制限するのはなかなか難しい。我々は、先日に出した請求にそってすみやかな解散命令にしていくために、万全を期したいと思います。現在、立法府の方で財産保全の検討をしているということですので、我々も注視して、被害者の声も聞きながら何ができるかを考えていきたい」と話します。

行政府としての独自の制限は難しいとの見解で、やはり、早急な財産保全の立法の必要が出てきています。

財産保全の立法は、被害者救済のための新たな戦い

同党の長妻昭議員は「財産が散逸しないようにすることが心配なところです。今日(10月17日)、参議院の自民党幹事長の世耕弘成さんから『財産保全は必要で議論してやっていかなければいけない』との力強いお話がありました。与野党で協議を進める素地ができていくのではないか。我々も与党、文化庁を含めて、きちっと議論をして、実効性のある法案をつくりあげていきたい」と話します。

本日(10月20日)に、臨時国会が始まりました。その後の報道では、自民・公明両党ともに、教団による財産の隠匿や散逸への懸念があるとして財産保全の法案の検討をしていくとのことで、その流れが出てきています。

解散命令に向けての裁判はこれからですが、長年にわたって集めた多額の献金を海外に財産を移すなどして、被害者救済を阻もうとする旧統一教会の思惑との新たな戦いも始まろうとしています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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