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12日に宗教法人審議会が開催されて、着実に旧統一教会の解散命令請求の足音が聞こえてくる。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影

10月12日に宗教法人審議会が開催されて、旧統一教会の解散請求命令が諮問されると報道されているなか、11日に立憲民主党を中心とする国対ヒアリングが開かれました。

立憲民主党の長妻昭議員からは「非常に心強かったのは、報道で政府が財産保全の法整備の必要性を検討するというものがありました。我々も、今日の会見で、財産保全の法律を提出するということにしております。何より被害者の救済が重要なことですので、その視点を忘れずに、これからも取り組んでまいります」との話がありました。

裁判所で解散命令が出されても、その時に教団に財産が残っていなければ、返金を求めている被害者は救済を受けられないことになります。しかも、現在の宗教法人法には財産保全の規定がないため、旧統一教会が財産を散逸させる恐れがあると指摘されています。それゆえ、臨時国会で財産保全の法律が制定されるかが、重要なカギとなっており、先の報道が事実ならば、大きくその方向に政府が動いたことになります。

旧統一教会の解散命令請求が議題になるのか。文化庁の答え

続いて、山井和則議員は「12日の宗教法人審議会の開催では、統一教会の解散命令請求が議題だろうかと期待しているところですが」との質問をしました。

文化庁の宗務課長は「明日13時から宗教法人審議会が開かれますが、宗教法人法第78条の2に規定する『報告徴収・質問権』が議題でございます。先生方に何をご議論いただくのかについては、宗教法人審議会の冒頭で具体的にお伝えいたします」と話ます。

同議員から「答えにくいことかもしれませんが、明日の冒頭での議題には、解散命令請求の内容が推測されるのですが、排除はしていないという理解でよろしいでしょうか」と、さらに尋ねられて、同課長は「否定も肯定も、差し控えさせて頂きます」との答えでした。

否定しないということからみて、旧統一教会の解散命令請求について、諮問する可能性は極めて高いといえます。

解散命令請求が出た場合の教団、信者の動きは?

全国統一教会被害対策弁護団の阿部克臣弁護士から、まず財産保全の特別措置法の必要性についての話がありました。

「申し上げたいのは、財産を適切に保全できる、実行性のある法律を作って頂きたいということです。法律ができたけれども、それが使えない。裁判所が認めてくれないものですと、被害者救済がはかれないばかりか、逆に、統一教会側に有利になる懸念もあります。適切に財産を保全できる法案をすみやかに本国会で成立していただきたいと思います」

議員らから「解散命令請求が出た場合、教団及び、信者の皆さんはどのような反応になると思いますか?」の問いに対して、同弁護士は「解散命令請求をされた段階で、教団を脱会する方は一定数はいるのではないかと思います。(信者が)入信した経緯として、政府のお墨付きを得ている宗教法人であり、政治家のお墨付きを得ていたから入信した方は多いと思います。ところが、解散命令請求を文化庁がすることで、逆のお墨付きを与えることになり、動揺している信者が脱会することもありえると思います。ただ、教団もそうならないように引き締めを図っていると思いますので、態度を硬化して、教団を守ろうとする信者も多く出てくると思う」としています。

ジャーナリストの鈴木エイト氏は「両極端の動きになると思います。解散命令請求をした段階で、脱会者が増えることは考えられますが、逆に、教団に残るコアな人たちも出てくると思います。また実態の知らない2世たちは『ちゃんとした団体なのに』と悪意なく、自分たちの教団の正当性を主張してくることも考えられます。教団は対外的にスラップ訴訟も乱発しているので、(国などを含めて)新たな訴訟を起こしてくる可能性もあり、今後、教団がどういうリアクションをしてくるのかを注意深くみていきたい」と話します。

元妻が多額の献金をして、被害を受けている橋田達夫さんは「私も解散請求命令を早く出してほしい。それがでない限りは前には進めないという状況です。ぜひ(解散命令請求を)この目で見てみたい」といいます。

山井議員から「解散命令請求が出たら、どう変わると思いますか?」の問いかけに「少しでも信者さんが脱会してくれることに期待をしています。一人でも救ってあげたいという気持ちがあります。そして(信者を持つ家族に)平穏な暮らしをしてもらう状況にまでしてあげたい」と被害者家族ならではの視点で話します。

解散命令請求事件は、非訟事件

「解散命令請求を出した後には、どのような形での発表になるのか?」との議員からの質問に対して、文化庁は「一般論として申し上げますと、解散命令請求事件については非訟事件ですので、非公開の裁判で争われることになります。ただし、関心の高い、重要な事項については、(多くの方が)ご理解いただけるような内容での説明をすることになるかと思います」といいます。

柚木みちよし議員からは、明覚寺(解散命令を受けた宗教法人)の場合、議事録などは公開されているとした上で「これだけ長年にわたって、政治の不作為も指摘されるなかで、被害が拡大してきたわけですから、公開できる部分については、国民に対して明らかにしていただくことは大事なことだと思います。旧統一教会への質問権行使においても、永岡前文科大臣の答弁を通じて内容の話をしていただいていますので、可能な範囲で情報公開をお願いします」と話します。

国民の関心が非常に高い、旧統一教会の問題です。解散命令請求が非訟事件とはいえ、裁判の推移などの情報をできる限り、伝えてもらうことは何より必要です。

いよいよ明日、1980年代から、霊感商法や高額献金で多くの被害を出してきた旧統一教会への解散命令請求の方針が文化庁から出されるのか、非常に注目すべき時を迎えています。

もし解散命令請求が出されれば、信教の自由を盾にしながら、長年、社会常識を逸脱するような方法で信者らに多額のお金を集めさせてきた行為への鉄槌が下されることになります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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