Yahoo!ニュース

解散命令請求への宗教2世、被害者家族の受け止め 「1分でも1秒でも長く時間を過ごして」との2世の思い

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

10月2日に行われた立憲民主党を中心とする国対ヒアリングでは、元統一教会2世信者や被害者家族から話がありました。

両親が50年の信者で、元統一教会2世のもるすこさん(仮名)は「解散命令請求の報道がなされるところまできて、何十年にもわたって国や政治家が(旧統一教会問題を)放置し、お墨付きを与えたことで広がった問題に、ようやく風穴があきました。日本が抱える『宗教と政治の問題』が解決される方向に進むことを願っています」と話します。

「解散命令だけでは、統一教会問題は解決しない」との指摘

もるすこさんは、Vチューバーとして活動していますが、ご自身もSNSを通じて誹謗中傷を受け続けています。

「私以外にも、被害の声をあげる元1世や元2世の人たちが心ない執拗な攻撃を1年以上も受け続けて、多くの方が疲れ果ててしまっています。もともと統一教会の被害で複雑性PTSDを患っている人も少なくないこともあって、これ以上、解散命令請求が長引いてしまった場合、被害者が持ちこたえられない可能性があります」と話し「解散命令請求と(裁判所による)解散命令を確実に出してほしい」と訴えます。

さらに「解散命令請求は、問題解決のスタートラインであって、これだけでは統一教会問題は解決しない」とも話します。

「統一教会だけを悪として、切り捨てるだけでは問題解決はしないし、再発防止にもなりません。統一教会だけが悪とされて『解散命令が出た=おしまい』では、数十年後に同じような被害者が加害者となっていく宗教団体が出たとしたら、同じ被害が繰り返される恐れがある」と指摘します。

そこで、被害者救済のために「財産保全のための特別措置法の性急な整備」「児童虐待防止法の改正」「反セクト法の検討」「不当寄附勧誘防止法(救済法)の改正も議論」「救済法の附帯決議に記載された事項を『具体的な救済策・手当・補助』として具体化させる」の5つを要望しています。

2世が泣き寝入りをしなければならない状況を危惧

宗教2世ネットワークの元統一教会2世の山本サエコさん(仮名)から、X(旧Twitter)で「宗教2世が、直接に(旧統一教会にお金の)請求をする人が少ない理由は何ですか?」のアンケートを取ったことへの話がありました。

「回答として『親の献金、自分には返金請求する権利はない』といわれたものがありました。統一教会の実態をみますと貧困の親を養ってきて、経済的損失を補填してきたのは、2世です。経済的損失を被った2世にも、支援の拡充をお願いしたい」と訴えます。

「一番多かった回答は『統一教会と直接関わり合いをもちたくない』という理由でした。ご存じのように統一教会は非常に好戦的です。そのような統一教会に対して、自分の権利を行使することに対して、非常に怖い思いを持っている人が多いのです。泣き寝入りをしなければならない状況ですので、2世が支援、救済される方法を一緒に考えて頂ければと思います」(山本サエコさん)

「マインドコントロールが解けた親と1分でも1秒でも長く時間を過ごしてほしい」との元2世の思い

山本さんは、全国霊感商法対策弁護士連絡会の集会(9月30日)でも、ご自身の宗教2世としての体験を話しており、その時「マインドコントロールが解けた母と私の日常の取り戻し方」について、出席された方から多く寄せられた質問の一つだったといいます。

彼女は大学卒業とともに、母を連れて信者である父親のもとから逃げます。

「父親は現役信者ですが、17歳の時に入信した私の母はマインドコントロールが解けまして、その後の親子関係は非常に良好なものでした。私と母が過ごした親子関係の日常は、愛にあふれたものでしたが、他の2世の方にも、1分でも1秒でも長く(そのような)時間を過ごしてほしいと思っています。母はもう亡くなっていますが、父は今もバリバリの信者です。しかし高齢で老後破綻している状況です。その父との関係回復をどうしていくのか。それが課題です。解散命令が確定した後の現役信者のフォローも今後、考えていかなければなりません」としています。

解散命令請求が出されれば、これまで教団が行ってきた霊感商法・高額献金などの行為に、疑念を深める1世信者も出てくることと思います。そして旧統一教会の思想から脱した時に、それまで失ってきた本当の親子の対話の時間を少しでも長く共有してほしい。元2世信者の切実な思いが伝わってきます。

「主人もこの解散命令の日を待っていたかと思います」との被害者家族の思い

信者である元妻が1億円以上の献金をして、そのもとで暮らしていた長男が自殺されるという辛い経験をしている橋田達夫さんから「今年、被害者の会を設立しまして、そこに相談にこられた80歳代A子さんからお話があります」と紹介がありました。

「私の娘は40年前に統一教会に入りました。最初には何もわからずに苦しみましたが、安倍元総理の銃撃事件によって(統一教会による被害の実態を)知りました。こんな悪質なことを許した日本の政府、政治が悪い。今は、本当に橋田さんには助けられています。娘が合同結婚式に参加してからも苦しみました。40年は長すぎました。3年前に、娘を思いつつ主人は亡くなりました。主人もこの解散命令の日を待っていたかと思います。どうぞ助けてください。(旧統一教会の)解散をお願いします」(A子さん)

立憲民主党の山井和則議員は「解散請求が出たら、娘さんの姿勢が少しは変わる可能性はありますか?」と尋ねます。

A子さんは「はい。解散請求命令がでたら、娘とも話をしたいと思います。私の娘がこのようになったのは、自分の人生にとって本当に苦しい毎日です。親子としての会話もなければ(親子関係も)遮断しておりました。辛い、辛い毎日でしたが、ようやく明るい道をみえてきました」と答えます。

旧統一教会の教えでは、文鮮明夫妻が真の父母であり、自分を生んでくれた両親(肉の親)はサタン側の父母だと教えられます。私自身も約10年間の信者時代を送ってきましたが「親の情(人情)に流されてはいけない」とアベル(教団の上司)からいわれて、両親や家族とは心からの話は何もしてきませんでした。

その期間、どれほど家族の心を傷つけただろうかと思います。ぜひとも、40年の信者である娘さんにも、親が感じてきた辛い気持ちに、解散命令請求を通じて気がついてもらえればと願うばかりです。

日本がカルトに脅かされない良い社会にするために考えるべきこと

最後に、もるすこさんは「立法府、行政府の方には、統一教会問題を解決して、日本がカルトに脅かされない良い社会していけるように国を変えていって頂きたいと思います」と訴えます。

それを受けて、同党の長妻昭議員は「もるすこさんに書いて頂いたもの(親が統一教会に入ったきっかけなどの資料)は本当に考えさせられることです。ご両親が統一教会に入ったのは、死がものすごく怖くて『なぜ生きるか』をずっと悩んでしまったことがきっかけだそうです。そこに非常に簡単な答えが飛び込んできて、それを(両親は)求めてしまった。これは今の日本に突き付けられた大きな問題でしょう」と話します。

さらに「『生きることや死ぬことについて考える機会が減ってしまったことも、人がカルトに入ってしまった原因であり、カルト的な団体がはびこっている理由かもしれない』としている点については同感です。『死ぬってどういうことか、生きるってどういうことか』を考えざるを得ないのですが、実感もなく、経験のないままだと答えはでないはず。そこに、それっぽい答えを与えてくれる宗教が拡大してきた要因もあるのではないでしょうか』とありますが、確かに我々は生活の問題を話し合いますが、人生の問題を話し合う機会がほとんどない。そういったところにスーッと(カルトが)入ってくる。そういったものを議論するという基盤というものがないところに深い原因があるのだろう」と話します。

人生には「悩み」はつきものです。しかしそれを簡単に解決できるといって、カルト思想を持つ団体は近づいてきます。旧統一教会問題のような被害が引き起こされた原因や本質は、もるすこさん、山本サエコさんのように、その身を教団に投じてきた者でしかわからないことだと思います。

宗教2世や被害家族の言葉は、二度と日本の社会でカルト的思想を持つ団体による被害を出さないためにも、耳を傾けるべき大事なものだといえます。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

多田文明の最近の記事