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宗教法人法の不備が浮上 旧統一教会に、詐欺・悪質業者が行うような財産の散逸・隠匿をさせてはならない

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

6月21日、立憲民主党を中心とする第48回「統一教会」国対ヒアリングが開かれて、阿部克臣弁護士、木村壮弁護士、鈴木エイト氏らが参加しました。そのなかで、宗教法人法における財産保全の法的不備が指摘されました。今後に向けての大きな課題といえます。

解散命令の確定まで相当の期間を要する

現在、文化庁は旧統一教会への解散命令請求に向けて、6回目の質問権を行使して粛々と、その動きを進めているように感じています。しかしながら、実際に裁判となって、解散命令が確定するまでには、かなりの時間がかかるといわれています。

過去に解散命令を受けた明覚寺の事例をみても、1999年12月に解散命令の要請がなされて地方裁判所での判決が出たのが02年1月であり、最終的に最高裁で明覚寺の特別抗告が棄却されるまでの約3年を要しています。

全国霊感商法対策弁護士連合会は「(解散命令)確定まで相当の期間を要する可能性があるにもかかわらず、宗教法人法には、この間の財産の散逸・隠匿を回避するための財産保全の規定が置かれていません。まさに、法の不備が存在する状態にある」「旧統一教会には国内外に、多数の関連組織や個人が存在しており、その財産を移動・隠匿させることは容易であり、一度散逸させてしまえば、その十全な回復は困難」と指摘します。

解散命令請求は被害抑止だけでなく、被害救済のための手続きとなる

阿部克臣弁護士は「一番大事なことは解散請求と財産保全」としたうえで「解散命令請求が出されたあと、地方裁判所で審理されて解散命令が出されても、統一教会は不服申し立てをすると思われます。その後、高裁(高等裁判所)の判決が出た時点で確定して効力が発せられますが、その時点で、統一教会に財産が残っているかが大事になる」といいます。

「解散命令が確定した時点で、清算人による財産管理ということになります。財産の管理権が統一教会から清算人(裁判所が選任した第三者である弁護士)に移ります。清算手続きに移行した時に、被害者の立場で損害賠償請求権をもっているとすると、債権者にあたりうるので、清算人に話をして配当を受けられる。つまり、救済を受けられることになります。解散命令請求は、単に被害を抑止するだけでなく、被害救済のための手続きでもある」(阿部弁護士)

解散命令が確定されることは、被害救済への道を大きく開くことになります。一人でも多くの方が諦めずに被害の声をあげて、教団から奪われた財産の回復をしてほしいところです。しかしここには、問題もあるようです。

宗教法人法の不備

「しかしながら、宗教法人法には、財産保全の規定がありません」と阿部弁護士は話を続けます。

「これは立法上の不備であると考えます。他の会社法ですとか、一般社団法人法という、法人を解散させる規定のある法律には、財産保全の規定があります。宗教法人法にはその規定がないので、急いで、財産保全のための特別措置法を作る必要があります

木村壮弁護士も「会社法などの解散命令に関しても、保全処分の条項がある」といい「なぜ、その条項があるのかといえば、債権者を保護するだけではなく、解散命令がされて、財産が散逸する恐れが高まっている状況があるからです。ステークホルダー(利害関係者)を守り、清算手続きが適切に行われるために、財産保全の条項があるわけです」と話します。

両弁護士とも「特定宗教法人の財産保全に関する特別措置法」の成立の必要性を強く訴えます。

過去、類をみない手法で、多額のお金を集めていた旧統一教会

会社法などにあって、宗教法人法には、その条項がない。これは明らかに法的不備と思われますが、宗教団体がこれほどの悪質な金集めをするという想定自体が、当初なかったのは致し方ない面もあるかもしれません。

過去、旧統一教会は誰もが想定しないような、そして類をみないような手法で多額のお金を集めてきました。しかも長年、悪質な高額献金や霊感商法が規制されてこなかったのは、これまでも報道されてきたように、政治家の権力を使って立ち振る舞っていたことが考えられています。

ジャーナリストの鈴木エイト氏は「統一教会は過去に数百億円を韓国とアメリカに送ってきていることが、判明しています。こうしたことから考えて、解散命令の確定が近づいて、法人のなかに財産を残すという可能性はほとんどありませんので、財産保全の立法が必要になります。また、政治家へ渡ったお金の調査がまったくなされていません」とも指摘します。

「日本から海外に流出したお金には、何百億円の政治家に還流されているお金もある。トランプ前大統領には1億、2億、安倍元首相にはその半額という確度の高い情報もある」(鈴木エイト氏)

これら一連の話を受けて、立憲民主党の柚木道義議員も「解散命令が裁判所から出されても、被害者の方々に、返金しようとしても金庫がからっぽですよと、なっても意味がない」と懸念を示します。

まさにその通りで、解散命令が確定するまでには、時間がかかりますが、その間に、統一教会が海外に資産を移したり、国内の信者や関連団体に教団の財産を隠すなど、様々な手段を講じることは、これまでのお金集めと海外送金の実態から充分に考えられることです。

過去、犯罪グループが行ってきたような財産の散逸・隠匿をさせてはならない

これまで詐欺・悪質商法のジャーナリストとして、数々の詐欺事件をみてきて、詐欺などを行う犯罪グループが不正に得たお金を海外に送金をしたり、暗号資産に換える。人から人へとお金を渡して、足がつかないようにする資産隠しの手法を目のあたりにしてきました。その結果、多くの被害者はだましとられたお金を取り戻せずにいます。

詐欺グループは、どこに存在しているのかわからず、違法行為をする犯罪組織ですが、旧統一教会はれっきとした文化庁の認証を受けた宗教法人です。同じような手法で財産の隠匿、散逸などをさせることだけは絶対に許してはなりません。

もし一件でも、信者個人や関連団体に教団が得た財産を移し、隠匿、不正な送金をしていたとすれば、もはやそれは詐欺グループ・悪質業者と同類とみなされても仕方のない行為であり、そもそも国から認可を受けた宗教法人がすべきことではありません。

その点、鈴木エイト氏も「解散命令請求に関しても(旧統一教会は)法令遵守(コンプラアインス)が必要な公益法人として存在していることがおかしいし、税制の優遇をうけていることもおかしいので、ただの任意団体という、あるべき姿に戻してもらいたい」と話します。

解散命令が確定した後についての議論も必要

木村弁護士は「今、解散命令にむけての調査をして頂いている。不当寄付勧誘防止法もできて対策室もできた。この団体のなかで何が行われているのか。児童虐待であるとか、精神的にコントロールされることによる寄付が続くなどの問題を、包括的に分析をして、今後につなげていかなければならない。解散命令が出たとしても、信徒は残り続けますし、団体ではない形で活動することで、問題が温存されてしまうこともある。それについても考えて頂きたい」と話します。

阿部弁護士は「日本社会で違法に集められたお金で、本来、被害者に戻るべきお金です。それが韓国や海外に流れていくとすれば、これは日本の国益を損なう行為になります。そうしたことを包括的な立法で阻止して、日本の被害者に戻るようにしなければなりません」と話します。

一刻も早い「特定宗教法人の財産保全に関する特別措置法」にむけた議論が必要とされています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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