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高級腕時計店の強盗事件の犯行は10分ではなく約2分 お見事!犯罪グループの想定を上回る警察の動き!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

5月8日、人目のつく、銀座の高級腕時計店に少年らが押し入り、高級腕時計を奪っていきました。しかし少年らはすぐに逮捕されて、その後、車の内外から、70点の商品が見つかります。

当初は100点ほどが奪われたといわれていましたが、その後、約70点ということがわかりましたので、そのほぼすべてが回収されたことになります。

ここから見えてくるのは、組織的犯罪グループの「ミス」の可能性です。

面識のない4人の少年の犯行だったということで、組織的犯罪グループが、闇バイトの募集で集めた少年らに強盗をさせていたことが強く疑われますので、おそらく逃走ルートも決めて、どこかの場所で別な人物に商品を渡す段取りもつけていたと思います。

しかし警察のスピーディーな逮捕により、回収役に商品を渡す暇を与えませんでした。

この手の組織犯罪の対策において重要なことは、次の人物に商品を渡すといった、グループの思惑通りにことを進めさせないことです。犯罪グループを利することをさせなかった警察の動きは見事であり、本当に素晴らしかったと思います。

当初、なぜ、犯行時間が10分もかかったのか、疑問も!?

最初にこのニュースを聞いて、もしこの強盗が組織的犯罪グループの仕業であったら「おかしい」と思っていた点がありました。それは、当初「犯行時間が10分もかかっていた」といわれていたことでした。

お店の人と何か「金庫を開けろ」とか、話をしていたのか?

あるいは、手こずる状況があったのか?

10分とは、犯行をするうえでかなり長い時間です。しかし銀座のお店で犯行をしている様子の動画をみる限り、実にテキパキと行動しているようにもみえますので、なぜそんなに時間がかかったのか、疑問に思っていました。

過去の組織的犯罪グループによる強盗事件を見ても、ものの数分で犯行を終えており、「時間を厳守するはずの犯罪グループが、なぜ?」の思いが消えませんでした。

もしかすると、「10分の犯行時間」が事実とすれば、犯罪グループの「指示ミス」の可能性もあるかもしれないと考えていました。

というのも、犯罪グループは組織の様々な人が行うゆえに、どこかでミスが起きてしまうものだからです。過去にも、詐欺グループの人間が、コンビニエンスストアーで詐欺マニュアルをコピーして、それをコピー機に置き忘れて、逮捕された事件もありました。

その後、犯行時間は約2分とわかり、手順通り。しかしなぜ逮捕されたのか

事件の精査をしたところ、今回の強盗では、犯行時間は約2分ということが判明したということです。

「あと30秒はいける」というグループの一人が、店内で指示していたということですので、いかにテキパキと時計を睨みながら、犯行をしていたのかがわかります。実際には、犯行は緻密に手順通りに行われていたわけです。

しかし彼らは逮捕されました。

これはどういうことしょうか。

「指示ミス」ではなく「計画ミス」の可能性

それは、当初、筆者が考えていた「指示ミス」ではなく、「計画ミス」だったからではないかと思います。

2分で犯行を行うところまでは、犯罪グループの思惑通りだったと思います。しかし警察は犯罪グループの想定を上回る、見事なまでの逮捕までの動きをしました。まさに、犯罪グループの計画ミスを誘ったものこそが、警察の動きだったと考えています。

確かに実行犯は逮捕される存在です。しかし高級腕時計を回収できなかったうえに、実行犯も逮捕される。もし今後、その上の指示役にまでに逮捕がいたるとすれば、計画を立てた犯罪グループにとっては、大きな痛手になるはずです。

失敗を教訓とする、知能犯グループの次の一手には気をつける

ただし、気をつけなくてはならない点もあります。組織的犯罪グループは失敗を教訓にして、さらなる次の手を打ってくることです。

フィリピンから指示を出していた、ルフィを名乗る強盗団もそうですが、もとは詐欺グループが強盗に変貌しています。もとは知能犯の集まりですので、次にどんな手でやってくるのか、わからないのです。

詐欺の世界では、一度、被害に遭った人は、二度、三度と狙われます。

今回の首謀者が詐欺グループから変貌した強盗グループとすれば、被害に遭った店が二度、三度と狙われることもありますので、より防犯体制をしっかりさせる必要があります。

今、高級腕時計は高値で転売されています。犯罪グループはお金にしやすい商品がある店を今後も狙ってくると思いますので、注意が必要です。

口コミ闇バイト募集にも注意!

その時、闇バイトの募集などで、今後も社会経験が少ない若い世代を誘って実行させることは充分に考えらます。

今回の強盗事件では、横浜に住むメンバーらが集められたと考えられますので、もしかすると、知人、友人などの口コミを通じて「稼げる仕事があるよ」と直接に声をかけて、闇バイトに誘われたことも考えられます。

闇バイトの募集は、ネットのSNSを通じて集められることもありますが、今は警察が厳しい目をもって対応していますので、先輩、後輩の関係や、悪い仲間からの誘いを通じて、呼び集められることもあるかと思います。

闇バイトの募集を地域一丸となって防ぐことも必要

今回のような強盗事件を起こさないためには、犯罪に誘う入口をいかに閉ざすかが重要です。

ネット上の闇バイト募集が厳しくなれば、今後、口コミを通じて「稼げる仕事があるよ」と声をかけてくる方にシフトしてくるかもしれません。となれば、全国、どの地域の少年らに声をかけて実行役が集められるかわかりません。

今回の強盗では、横浜に住むメンバーが、東京のお店を狙いました。ネットでは比較的遠くの人を呼び寄せて、犯行を行わせますが、口コミで集められた人たちが、声をかけられた地域の比較的近くの場所で犯行を行うことも考えられますので、いつ私たちの身近で強盗という犯罪が起こるのかわかりません。

もはや闇バイト募集は身近に潜む危険といえます。地域一丸となって防止のための啓発をする必要があります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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