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阻止に向けて住民が立ち上がる 「霊連世協会」旧統一教会系の分派が教会建設中!?行ってみると驚くことが

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

東京都多摩市に旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が昨年4月に6300平米もの大規模な土地購入をしていたことが明らかになり、先月29日には旧統一教会の撤退を目指した「統一教会はNO!多摩市民連絡会」による集会が行われました。

「市民の声を結集して、大きな声にしていかなければならない」との呼びかけもあり、署名活動などを本格的にスタートさせていくとのことでした。

府中市では「霊連世協会」が教会建設に向けて動いている

実は隣接する府中市でも、昨年より「霊連世協会」という旧統一教会系の分派と思われる団体の教会建設がなされています。

今年2月4日には、90人以上の住民らが立ち上がり、「わが町・府中に”統一協会系”カルト集団はいらない!市民実行委員会」が主催しての教会建設工事反対に向けての市民パレードも行われました。

今回の多摩市民連絡会の集会でも、この時の様子や府中市の教会建設の状況についての報告もありました。

建設中の教会に行ってみると

筆者も、府中市の現地に行ってみました。

近所の人たちに聞き込みをすると「知っていますよ。でも、工事は基礎のコンクリート部分まではできているようだけれど、ここ数か月、途中で止まっている感じですね」との話でした。

さらに、その教会は大学の隣に建てられる予定だといいます。

「そんなとこころに教会が建ったとしたら、学生さんたちが心配だわね」の声も聞かれました。

まさにその通りで、カルト思想を持つ団体は、大学に入ってまもない、友達の少ない人たちを狙って声をかける傾向があります。そして心にある不安などを聞き出されて、勧誘されます。何より問題なのが、その時に「楽しいイベントやセミナーがあるよ」などと教団名を隠されて誘われることです。

正体を隠されて、教団に誘われる

筆者自身も大学4年生だった1987年に旧統一教会の信者になりましたが、入信のきっかけは、友人に誘われて参加したバレーボール大会でした。この大会にいたのは、ほぼ全員が信者でしたが、参加した当時、このイベントが旧統一教会の主催であるなどとは聞かされていませんでした。

そしてバレーボール大会をきっかけに信者らとの人間関係が構築されて、旧統一教会の関連施設であるビデオセンターに連れて行かれます。この時も「ここは自己啓発の勉強をするところ」とはいわれていましたが、教義を教え込む場とは伝えられていません。ここでも教団の正体を隠されたわけです。

ビデオセンターに通い続けるなかで、教義を植え付けられていき、旧統一教会という正体を告げられた時には、霊の恐怖などに心が支配されており、もはや信者になるしか道はありませんでした。

こうしただまし打ちするような勧誘を行うのが、カルト思想を持つ団体の特徴の一つです。

建築現場には「近隣の皆様へ」の張り紙

建築中の現場は、家一軒建つくらいの敷地でした。これが現在の旧統一教会の建物であれば、信者数は多いので、もっと大規模なものを建設することでしょうから、規模からみて、やはり分派活動している団体としてみてよいのかもしれません。確かに住民の方のいうように、コンクリートの基礎部分はできていますが、その先は進んでいないようでした。

建築現場には「近隣の皆様へ」の張り紙がありました。

そこには「旧統一教会やその関連団体の建物ではありません」とあるものの、団体名の記載はありません。そこには「教会信徒一同」とあり、連絡先があるので、話を聞こうと電話をしました。

しかし何度かけても「電源を切っている」とのアナウンスが流れるだけで、まったくつながりません。以前に「RRS教会」という名前が工事の表示板に記されていたとのことですが、今はその団体名はなく、女性の名前が載っているだけです。これでは、ここが何という団体で、どのような思想を持つところなのかもわからず、住民の方の不安はますます募ると思います。

霊連世協会に対しての公開質問状

市民パレードに先立ち、府中労働組合総連合(府中労連)は、霊連世協会に対して公開質問状を出しています。

「工事現場に掲示されている建築確認通知表示板には、建物名称は「RRS教会」となっています。(中略)又この建物ではどのような活動が行なわれるのですか」などの質問です。

府中労連の議長である甲田直己さんによると「そもそものきっかけは、私が建築士であることから、近隣の方より『大学の隣のRRS教会という工事現場が、統一教会ではないかという噂が出ているが調べられないか』と電話で聞かれたことでした」といいます。

そして甲田さんが、市役所で「計画概要書」や土地の登記情報を確認すると「霊連世協会会長」の名前が記されており、そこで初めて、この団体名を知ります。「もう少し事実関係に近づきたい」と思い、霊連世協会をネットで調べると、2009年に旧統一教会の文鮮明教祖が宣布した言葉とわかります。

「『霊連世協会』という名称が、旧統一協会の教えの中にある名称だったので関係性は強いのだろうと思いました」(甲田さん)

そこで公開質問状を出して「霊連世協会は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と、どのような関係ですか」と尋ねました。

旧統一教会から異端者として除名される

同協会からは、過去に同協会の会長が「文鮮明先生の愛の精神と教えと、その教えの根本に帰ろう」と教団の改革を求めたが「10年前に旧統一教会から異端者として除名された」としています。

そして「当団体、団体役員そしてすべての信徒は、旧統一教会とは一切関わりがございません」との言葉もあります。しかし、同じ旧統一教会の教えでつながっているわけですから「一切、関わりがない」とはいえないはずです。

「霊連世協会」とは文鮮明教祖の言葉

それに「霊連世協会」の言葉は、文鮮明教祖の発言を集めた「天聖経」の中にもみられます。

教団では人間は、霊人体(心)と肉体(体)に分かれており、亡くなれば霊界に行くと教えられています。その霊界にいる人たち(霊人)との交流を文教祖夫妻(真の父母)のもと「霊肉界(霊界と地上世界)と自由に交流して、通じ合いながら暮らすことのできる『霊連世協会』時代が宣布された」とする文鮮明の教祖言葉があり、それをもとに、同協会は名付けています。

同協会からの回答にも「この名称にこめられた(文鮮明教祖の)精神や理念が私たちの設立目的に合致していますので」といっています。

筆者が同協会の信者に直撃して尋ねたところ「原理講論と文鮮明教祖の御言葉(みことば)に忠実に従って信仰をしていく」との話をしていますので、旧統一教会の教えをしっかりと継承している団体とみて良いでしょう。

正体隠しての近づきと思われても仕方のない行動

それにしても、なぜ「霊連世協会」が旧統一教会の教えの流れをくんだ団体であることを、建設前にしっかりと住民に話さないのでしょうか。住民の代表の一人として甲田氏がここまで調べなければ、その事実がわからないようになっています。

当初は、建築現場の看板にはRRS教会とあったとのことで、おそらく「霊(R)連(R)世(S)」のアルファベットの頭文字を取ったものと思われます。しかし実際には「霊連世協会」だったわけであり、これは正体を隠しているといわれても仕方のない行動です。

これらの行為は、旧統一教会が信者で組織した数多くの関連団体、ダミー団体を作り、正体を隠しながら、市民社会や政治の世界などに入り込もうした手法と何ら変わりないといえます。

「霊連世協会」の代表者は10年前に、旧統一教会から異端者として除名されていますので、ここに集っているのは、過去に正体を隠しての勧誘を行ってきた信者たちであることは容易に想像できます。

正体隠し勧誘の手法はしっかりと身についてるはずです。多くの金銭的、精神的被害を生み出してきた旧統一教会の流れを組む団体が、大学の横にできたら、住民が不安になるのは、当然といえます。

偶然なのか?22年の教会建設開始と、同年の旧統一教会の土地購入

偶然なのか、そうでないのかはわかりませんが、驚いたことがあります。多摩市に大規模の土地を購入したのが、2022年の4月です。

府中市に霊連世協会が教会建設予定の土地にある建築基準法による確認済とする表示板には「確認年月日番号令和4年5月24日」とあります。

これは、旧統一教会が多摩市に大規模な土地を購入したとされる翌月のことです。時期が、あまりにも一致しているのです。

除名された人たちの団体といいながら、どうにも旧統一教会の大規模土地購入に連動した動きとも、勘繰りたくもなります。

多摩、府中の市民でないから、関係ないと思わない方がいい理由

いずれにしても、一般論として教会などの建物が建てられると、当然その周りには、信者らが多く移り住んできます。府中市の場合も、建設予定の教会近くには、信者らが寝泊まりするホームもあります。

今回のことを通じて、教団の施設が建設されれば、教団本体の信者はもちろんのこと、その教えの流れを組んだ様々な人たちも近くにやってくる可能性もあり、その地域一帯が、旧統一教会系団体の一大拠点となる恐れがあります。

そうしたことを考えると、今回の問題は多摩市、府中市だけのものでなく、隣接する稲城市、町田市、川崎市麻生区にも、教団の関係者、関連団体がやってきて、布教、経済活動を行うことが十分に考えられます。そうなれば、高額献金などの被害が起きないとも限りません。

他市に住む方々も、多摩、府中の市民でないから関係ないと他人ごとにしない方がよい理由です。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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