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旧統一教会の養子縁組問題で解散請求命令へのカウントダウン?もはや逃げ道なしか。根底に教祖の教えも存在

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
統一教会国対ヒアリング 筆者撮影作成

16日、立憲民主党など野党による、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)における国対ヒアリングが行われました。

最初に、旧統一教会の祝福2世だった、20代女性・武田さん、30代女性・佐藤さん(いずれも仮名)から、信者である親が教団に高額献金をしたために、幼い頃からお金のない生活を強いられてきた苦悩の道のりの告白がありました。

武田さんは「成人になっても、身ぐるみはがされて、両親の経済の補填を強いられた」と話し「1世(信者)の財布になってしまった2世はたくさんいる」と危機感を訴えます。

佐藤さんも親が非常に厳しい献金ノルマから、消費者金融からの借り入れを行い「母は自己破産し、両親は未だ献金による借金を返済中」とのことで、佐藤さん自身も「高校大学で借りた数百万円の奨学金を返済中」と、今も厳しい経済状況におかれていることを話します。一刻も早い宗教2世を守るための法整備の必要性が求められます。

養子縁組の赤裸々な告白も

小川さゆりさん(活動名)からは、自らの身に起こった養子縁組の赤裸々な実態報告がありました。

下の兄弟3人が養子に出されましたが、次女である妹は、養子先の家庭が統一教会から分派をしてしまったために、1年もたたないうちに家に戻ってきたといいます。

しかし後に、その事実を知り「お母さん、何で私は養子に出されたの?」と妹が涙を流していた姿を見て心を痛めたといいます。養子に出す前提で子供を作ることが推奨される実態について「これは人権侵害である」と強く訴えます。

さらに養子に出されて自殺未遂をした2世の「いきるのつらいよ。いきたくないよ。かなしいよ。つらい。生まれてきたくなかったよ。死にたいよ。つらい。悲しい。消えたい。この世から存在を消したいよ」という深刻なメッセージもあることも、山井和則議員から紹介されました。

旧統一教会の養子縁組問題や被害救済に取り組む、全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士からは「統一教会の養子縁組は、信仰、神様が優先されており、子供の福祉の観点が欠落して、人権の意識が無視されている」と指摘します。

配布資料からみえる教団関与の養子縁組の実態

配布された2014年に光言社から発行された書籍からの資料には、教団が養子縁組に組織的に関与していた実態も浮かび上がってきます。

「養子の約束を交わすのは、捧げる前の妊娠前が最も望ましく、遅くとも出産前には決定し」とあり「両家で合意がなされたら、必ず家庭教育局に報告が必要です」とあります。

先日のNHKの番組にて、すばやく教団側が「745人の養子縁組が行われた」と回答できたのも、こうした背景があったからでしょう。

さらに「両家だけ、あるいは教区、教会だけで話を進めてしまったり、養子縁組式をすませたあとに報告してはいけません」「両家の合意がなされたら、『養子縁組申請書』と家族写真を本部家庭教育局に提出し、会長に承認をいただきます」と続き、教団の承認が必要であることが書かれています。

教団の公式ツイッターにも「養子を3人以上出した信者の家庭」が表彰されたとの内容も投稿されているとのことで、教団内で養子縁組を推奨していることもわかります。

文鮮明教祖の言葉からみえてくる、養子縁組の方針

旧統一教会では、文鮮明教祖の言葉が絶対です。それにより、養子縁組における方針が決められたと考えられます。

資料の1970年代のみ言葉には「統一教会員たちは産児制限をしてはいけません」や「産児制限をしてはいけない。サタン世界はますます産児制限をして、私たちはますますどんどん生んで…(笑い)お母さまもそうです。ざっと十二人は生まなければ」と、文鮮明教祖の言葉が記述されています。

こうした教祖の言葉は神の言葉ですので、信者として一人でもたくさんの子供を産み、子供に恵まれない家庭に子供を養子に出すという方針が打ち出されるのは、当然のことだといえます。

確かに「祝福2世は、神の子である」という言葉は、聞こえのよいものかもしれません。しかし「養子の約束を交わすのは、捧げる前の妊娠前が最も望ましく」という言葉もありますが、裏を返せば、阿部弁護士の話すように「神様を優先するがゆえ、子供の人権への配慮を欠く」結果をもたらすことにつながります。

背景にあるのは、教団内での人権なき信仰生活の影響も?

これまで私自身も1世信者として、献身(出家)の生活をしてきた経験があります。伝道とお金集めの経済活動のために、3~4時間の睡眠という寝る時間を惜しんでの活動や、高熱が出ても「サタンが心に入った結果」として「善行をして取り払え」と街頭での活動を強いられてきました。そこには、人権意識のかけらもない生活実態がありました。

こうした環境下で信仰生活を送った者たちが、生まれた子供を育てあげている。すべての信者とはいいませんが、子供の人権をないがしろにしてしまう実態が多く発生している理由の一つにもなっているのではないかと考えます。

養子縁組あっせん法に違反の可能性

政府は、都道府県の許可を受けずに、養子縁組あっせんを「一定の目的を持って反復継続的に行った場合、養子縁組あっせん法(民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童保護等に関する法律)に違反する」との認識も示しています。厚生労働省は、旧統一教会が組織的な仲介を行い、法令に違反する可能性もあるとして、質問書を送付するとのことです。

同法の罰則規定では、1年以下の懲役または、百万円以下の罰金に処するとなっており、非常に厳しいものになっています。

野党のヒアリングでは、山井議員からの文化庁へ、養子縁組問題に関する質問権行使や旧統一教会への解散命令の請求を行使する根拠になるのかなどの質問もありましたが、文化庁宗務課からは、現時点での明確な回答はありませんでした。

しかし、しだいに教団の逃げ場はなくなってきているように感じています。

一刻も早い解散請求命令が求められています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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