「お金を配ります」などの現金プレゼントの書き込みが、Twitterには多く載っています。それを見て、連絡をしたのをきっかけに、キャッシュカードを騙し取られて、詐欺に使われてしまうケースが、今、多く寄せられています。

自分が使う目的以外で、銀行口座を開設して、通帳、キャッシュカードを他人に譲渡することは、犯罪収益移転防止法違反に問われます。もし、それが詐欺に使われたとすれば、名義人も犯罪の片棒を担いだことになってしまうという、深刻な事態に陥ります。それが、私たちの身近に迫ってきています。

「お金を配ります」→「カードを騙し取る」の手口が横行

「まさか、開設した口座が詐欺に使われるとは思いもしませんでした」

複数の20代女性から話を聞きましたが、皆さん、同じ言葉を口にされます。

その一人A子さんのもとには、大手銀行から「貴殿の普通預金取引(口座番号*******)に関して、犯罪による収益移転防止に関する法律に基づく取引確認をさせて頂きたいと思います。万が一、期日までにお電話を頂けない場合は、上記預金を解約させて頂きますので、あらかじめご通知致します」(一部省略)といった文書が届いています。

開設した口座履歴を見せてもらうと、すでに100万円ほどの振り込みが女性の名前であり、すぐにお金は引き出されています。この状況から見て、市役所職員などをかたって「保険料を払います」と電話があり、ATMに呼び出された人が、電話口で操作方法を指示されて、お金を騙し取られてしまう「還付金詐欺」に使われた可能性が高いと考えています。

LINE → テレグラム → レターパックの流れ

彼女らに共通するのは、Twitterの「お金配りをする」という人物のアカウントを訪れていたことです。その書き込みのなかに「資金が調達できる」の内容があり、LINEへのリンクが載っています。

A子さんは借金もあったので、お金配りを行う人物にLINEで連絡を取ると「希望の金額と、お金が必要な理由」を書いて送るように言われます。そこで、20万円ほどの額を記入して送信すると、次に、テレグラムでのやりとりを求められます。アプリをダウンロードして登録すると、男から電話がかかります。

「今回の案件では、お金を振り込む条件として銀行口座を開設して、届いたキャッシュカードを送ってくれれば、一週間後にその口座にお金を入れて、カードを戻します」と言われます。

この時、開設を指示される口座は、皆さん同じ3つの大手銀行です。

「それぞれの口座に40万円を入れて、キャッシュカードを戻しますとの話でした」(A子さん)

トータルで120万円もらえる。こんなにおいしい話はないと思うものですが、なぜ信じてしまったのでしょうか?

「お金配りをしている、お金持ちの人だから、できることなんだと思いました」とも話します。確かに、有名人で高額なお金を配っている人もいます。まさにそうしたところに便乗して、信じさせてきたといえるかもしれません。

A子さんは指示された2つの銀行口座を開設します。しかしもう一つの銀行口座は開設しませんでした。なぜなら、すでに口座を持っていたからです。

一週間ほどすると、銀行からキャッシュカードが届きます。その連絡を男にすると、キャッシュカードなどの写真を撮って送るように言われます。

しかしこの時、彼女は思います。

「すでに持っていた銀行口座には、残高もあり、見ず知らずの人に送って、詐欺に遭っても困るな」

そう思い、写真に撮って送った後、新規に開設した2つの口座のキャッシュカード、通帳、暗証番号を書いた紙をレターパックに入れて郵送します。この時、東京の住所だったそうです。

この辺りが、多くの人が騙されてしまう理由の一つといえるかもしれません。

詐欺では、お金を取られると思いがちです。その逆に、お金のない口座を送れば、詐欺には遭わないと思ってしまいがちです。しかしそうではありません。犯罪グループにとって、銀行口座は詐欺をするための重要なツールのひとつなのです。

この辺りの認識を誤ってしまうと、詐欺に引っ掛かってしまいます。

さらにA子さんは「着金されたら連絡があるので、その時にカードを戻すと言われました」と話します。

何のことかと思い尋ねると、テレグラムで直接に連絡を取った男の他に、あるグループに参加させられていたそうです。そこではお金が入ったら、入金リストに名前が載るそうです。

しかし彼女の名前は最後まで、リストには出てきませんでした。つまり、これはお金が入ったと信じさせるために作られた演出の一つだといえるでしょう。

情報提供者のもとに届いた、着金報告(筆者修正)
情報提供者のもとに届いた、着金報告(筆者修正)

さらなる罠「銀行からのお知らせは、無視してください」

A子さんは「入金されたら、一週間後にキャッシュカードを返送する」との言葉を信じて待っていましたが、一向に戻ってきません。不審に思い、ネットを調べると、お金配りの書き込みをきっかけに、キャッシュカードを騙し取る手口があることを知ります。

「詐欺に遭ったのか!」そう思うなかで、銀行からの文書が届きます。

それが届くのを見越したように、男からメッセージがあります。

「(銀行からの)書類がお客様のご自宅に届くと思います。それは、案件が進んでいる証拠なのでご心配なさらないようにお願い致します。全て無視して大丈夫です!(中略)案件が終わり、お客様のところにキャッシュカードが戻りしだい、(ネットバンクに)触れても大丈夫です」などと、銀行からの文書を無視させるような指示もなされています。

しかしこれは、嘘です。絶対に信じないで下さい。

A子さんの場合、詐欺に口座がすでに使われている疑いが高いので、警察ならびに、文書を送ってきた銀行への連絡は必須となります。それ以上に心配なのが、いまだ連絡のないもう一つの銀行口座です。

こちらにも、50万円近い金額が振り込まれて、すぐに引き出されています。もしかすると、銀行、被害者双方で、不正口座の認識がないために、これからも詐欺に使われてしまう可能性もありますので、すぐに凍結の連絡をするようにお願いしました。夜中ではありましたが、A子さんは口座を止める電話を銀行にしました。

騙されたことに気づいたら、すぐに口座を止めることが大事です。何もしないでいると、その間にも、誰かが被害者になってしまう恐れがあるからです。

還付金詐欺の被害が、広がっているの理由がここに。まさか自分が……。

昨年より全国で、還付金詐欺の被害が広がっています。被害者が詐欺に気づいて、銀行口座を凍結しても、次から次へと新たな口座が生まれてきます。その理由の一つは、ここにあります。

闇バイトなどで、最初から犯罪とわかっていて、銀行口座を売る人の数はおのずと限られます。それでは、詐欺に使うための口座の絶対数が足りません。

そこで犯罪グループは、詐欺に対する知識がなく、お金に困っている人たちに狙いを定めて「お金を配ります」「お金に困っているでしょうから、資金を調達します」などの甘い言葉で、銀行口座などを騙し取ろうとしてきます。

もしかすると「お金を受け取れる」「カードを戻す」の言葉を信じて、すでにカードと暗証番号を送ってしまった人もいるかもしれません。その時は、すぐに銀行に連絡をして口座を凍結し、警察にも事情を話してください。

A子さんは、振り込め詐欺について知っていましたが、「まさか、自分がその詐欺に巻き込まれるとは思ってもみなかった」と話します。

この「まさか……」の油断が危険です。

いまや詐欺は、SNSを使う私たちのすぐそばに忍び寄ってきています。もし相手の言葉に応じてしまうと、被害を受けるだけでなく、加害者として詐欺の片棒を担ぐ恐れがあります。

「必ず戻します」の言葉は、詐欺で使われる常套(とう)句です。それに、着金の報告はブラフで、銀行のお知らせを無視するようにまで巧妙に指示してきています。騙されないようにしてください。

今、全国で「お金配り」「現金プレゼント」の話に見せかけて、キャッシュカードを詐取しようとする手口が広がってきています。