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マルチ・ネットワークビジネスの悪質勧誘者・逮捕の衝撃!目的を隠しての勧誘は絶対にダメ!なぜ逮捕?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

違法な勧誘をすれば、逮捕されることもある。

マルチ商法の勧誘する者たちは、悪質な誘い方をすれば、自分の身にも起こり得ることだと、肝に銘じる必要があります。

マルチ商法の勧誘であることを隠して、20代女性を勧誘したとして男女が逮捕されました。今回は、アムウェイへの入会・勧誘であり、ここは古参のマルチ商法業者として知られています。過去に筆者も、度々勧誘を受けてきています。

アムウェイに違法勧誘 容疑で京都府教育庁職員ら逮捕(産經新聞)

勧誘の目的を隠して「食事をしよう」「仕事の紹介をする」「儲け話がある」とだけ告げて誘う方法は、この業者に限らず、他のマルチ・ネットワークビジネス業者でもよく見られます。

本来、こうした連鎖販売取引においては、事前に勧誘の目的を告げなければならず、この誘い方は、特定商取引法にて禁じられています。

しかしながら、これまでマルチ商法業者への行政処分はあったものの、勧誘者への逮捕がなかったために、野放しの状況になってきました。今回の逮捕により、その違法性にメスが入ったといえます。

このタイミングは絶妙といえます。

来年4月には、成人年齢が18歳に引き下げられます。そうなれば、目的を隠して近づいて勧誘するマルチ商法の毒牙にかかる人が増える恐れがありました。

そこで筆者も記事などを通じて、この種の手口を使った勧誘被害に遭わないようにとの注意を訴えてきましたが、これは、あくまで勧誘される側に対してのことです。

それに対して、今回の逮捕は、勧誘をする者への強いメッセージにもなっています。その点からも、今後のマルチ商法の勧誘における、ターニングポイントとなる事例と考えています。

それにしても逮捕された一人が、教育庁の職員とのことで、事務方とはいえ、教育に携わる者の事件に、少なからず衝撃を受けています。

なぜ、今回、逮捕されたのでしょうか?

なんといっても、悪質性の高い勧誘だったからだと考えます。

まず、結婚相手を求める人が集まるマッチングアプリを使って、勧誘のワナを仕掛けており、悪質極まりないといえます。

これまでもマッチングアプリを通じて、マンション販売などの勧誘を受けた方の聞き取りを行い、アプリが営業ツールに使われている実態を明らかにしてきました。

【実録】悪徳マンション販売勧誘員は、婚活アプリからこうしてやってきた!AI婚活、コロナ禍ゆえの危険性 (ヤフーニュース)

このケースを見てもわかりますが、相手に恋愛感情を抱かせるために数回デートを重ねます。そして自分に心を許して結婚を意識させたところで、突然に商品の説明役である第三者を連れてきて、マンションの勧誘を始めています。

結婚を意識させて、断り切れない状況をつくりだして、だまし打ちの誘いをするわけです。

おそらく、今回のマルチ商法の勧誘でも、同様な女性の心を弄ぶようなデート商法の手口が行われたと考えています。

公務員の肩書は魅力的にうつる

それに府の職員としての肩書も大きかったと思います。結婚を真剣に考える者ほど、相手の職業や年収を気にするものです。

おそらく事前のメッセージなどで、自分の職業を伝えていたと思いますが、コロナ禍で安定収入の公務員は魅力的に映り、そこに惹かれた女性も多かったでしょう。その気持ちを利用して、アプリを通じて誘因したと考えられ、被害者が20人以上との報道です。これまで取材してきたなかでも、数も多く、逮捕にまでに至った背景には、悪質性が高い勧誘と判断されたことがあると思われます。

アプリ業者と、警察との緊密な連携が、違法勧誘を防ぐカギとなる

マルチ商法の勧誘者がアプリを利用した背景には、やはり人と出会えず、多くの人を誘えない事情もあったことでしょう。

勧誘するグループによっては、高い商品購入や新規勧誘者のノルマが設定されており、それが達成できないと稼げません。これまでもノルマを果たすために、自分自身で商品を買い込み、借金を背負う人も見てきていますが、何としても儲けを出そうとして、マッチングアプリが利用されてしまう側面があります。

被害を受けた方、受けそうになった方は、アプリの運営者側への苦情、通報をしていると思います。こうした勧誘者たちを排除するためには、運営者側からの、被害の声を受けての積極的な警察への通報や、捜査協力が欠かせません。

出会いの場が、悪質業者の格好の狩り場とならないために、今後も、警察による違法勧誘者の摘発と、不正利用者に対するアプリ運営者側の積極的な警察対応が必要になってきます。これこそが、安心安全な出会いの場を提供できる第一歩となると考えます。

今も、恋心を抱かせられた手口での勧誘が、アプリを通じて行われていることでしょう。そうしたなかで、投資に関するマルチ商法も増えてきています。

なかには、「お金がない」と断る相手に「自分も借金をしてから始めて儲けた」などと嘘をついて、消費者金融やクレジットカードでお金を借りさせて誘うこともあります。

もし悪質な勧誘被害を受けたら、アプリ運営者と、警察への通報、及び「188」(消費者ホットライン)への相談をお願いします。

それとともに勧誘者の側も、今、行っている誘い方が法律に抵触しないのか、常に顧みて行動する必要があります。

今回の逮捕報道は、明日は我が身と心得てください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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